SS速報VIP:憂「あと、30分」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1329921036/1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:30:36.31 ID:IWmwsznt0
今日は、私の誕生日でした。
憂「……ううん、まだあと30分あるよ」
誰に言い訳してるんだろう、私。
夜、11時半。こたつに入って、テレビもつけず、ただ静かに私は壁にかかった時計を見つめていました。
となりには、疲れて寝ているお姉ちゃん。
さっきまでのにぎやかなパーティは夢だったんじゃないかと思えるぐらい、静かな夜。
聞こえてくるのは、私の息の音、お姉ちゃんの寝息、それと秒針の音だけ。
憂「……楽しかったな」
お姉ちゃんに、和ちゃんに、梓ちゃんに、純ちゃんに、軽音部のみなさんに、たくさんの人に祝ってもらいました。
本当に、楽しかった。
お風呂も入ったし、あとはお姉ちゃんを起こして部屋に連れて行って、寝るだけ。
それだけ。
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2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:34:40.64 ID:IWmwsznt0
唯「むにゃ……ケーキ……」
憂「……ふふ、お姉ちゃんったら」
……でも、なぜか寝る気になれません。
早くお姉ちゃんをベッドに連れて行かないと風邪ひいちゃうかもしれない。
早く、寝なきゃ。
……でも、なぜか動こうとする気が起きません。
何かが、心の奥に引っかかってるような。
おかしいな。こんなに楽しい1日を過ごせたんだから、満足なはずなのに。
なんだか、少し物足りないような。何かが、足りないような。
……心の奥にあるもやもやが何なのかは、うすうすわかっていました。
憂「私、欲張りなのかな。こんなにたくさんの人に祝ってもらったのに」
淡い期待。
さみしくなるだけだから、期待なんてしないようにしよう。もう寝なきゃ。
……そう思っても、結局私はその場から動けませんでした。
なんとなくお姉ちゃんの頭をなでながら、静かにその時を待ちます。
期待なんかしなくてよくなる、その時まで。
憂「……あと、20分」
自分の心臓の音が聞こえてきました。
だめ、なんで緊張してるの、私。
唯「……うい~、あいす~……むにゃ」
憂「……もう、さっきたくさんケーキ食べたでしょ?」
このままじっと待っているのがつらくなってきた私は、寝ているお姉ちゃんについつい話しかけてしまいます。
憂「お姉ちゃん、楽しかったね。今日はほんとうにありがとう」
唯「すう……うい~……」
憂「ふふ、お姉ちゃんかわいい。ねえ、おねえちゃ――」
その時でした。
私の声とお姉ちゃんの寝言だけが響く空間に、ブウン……という、低くて、鈍くて、無機質な音が外から聞こえてきます。
憂「――!」
車の音でした。
部屋が静かなおかげで、車がどういう動きをしているか、手に取るように分かります。
車はゆっくりと家に近づいてきて、回り込んで……駐車場に入りました。
憂「……来た!」
心の奥のもやもやは、もうとっくに消えていました。
やっぱり、欲張りなんだな、私。
でも、純粋に嬉しい。自然と笑みがこぼれてしまいます。
憂「……お姉ちゃん、起きて、起きて!」
唯「むにゃ……? 憂……?」
ごめんね、お姉ちゃん。でも大事なイベントだから、起きて!
私はまだ半分寝ているお姉ちゃんを起こすと、手を引いて玄関に向かいます。
途中、車のドアを閉めるバンという音が聞こえました。
よーし、先回り成功。
お姉ちゃんと手をつなぎながら、玄関にて待ち構えます。
唯「うーいー? どうしたの……?」
お姉ちゃんはまだ寝ぼけてて状況をのみ込めていないみたいです。
憂「ほら、耳をすまして」
そうお姉ちゃんに促して私も耳をすませると、玄関の扉の向こうから声が聞こえてきます。
――いやあ、すっかり遅くなっちゃったな。もうさすがに寝てるかな?
――ううん、まだ電気ついてるから、起きてるんじゃない?
唯「あ、帰ってきたんだ!」
憂「うん! 一緒にお出迎えしよう、お姉ちゃん?」
そして、ゆっくりと扉が開いて――
平沢父「……ただい――」
憂唯「「おかえりなさい!!」」
平沢父「うわあっ!? そこにいたのか!!」
平沢母「あら、待っててくれたの? ふふ、ただいま」
唯「待ってたんだよ~」
憂「ふふ、お姉ちゃんは寝てたでしょ」
唯「そうでした! えへへ」
嬉しい、嬉しい。帰ってきてくれた。
私、今満面の笑みなんだろうなあ。
平沢父「ごめんよ憂、遅くなってしまった」
憂「ううん、いいの。むしろ、帰ってきてくれてありがとう」
平沢母「ほら、あなた、さっそく」
平沢父「ああ、そうだね。ほら、唯もこっちにおいで」
そう言ってお父さんはお姉ちゃんを手招きすると、袋から何やらごそごそと取り出そうとしています。
……ふふ。わくわくが、止まりません。
平沢父「あと5分か、ギリギリセーフだったな。よーし行くぞ、せーの――」
父・母・唯「「「お誕生日おめでとう、憂!!!」」」
憂「ありがとう!!!」
――私、幸せ者だよ!!!
おわり
元スレ
唯「むにゃ……ケーキ……」
憂「……ふふ、お姉ちゃんったら」
……でも、なぜか寝る気になれません。
早くお姉ちゃんをベッドに連れて行かないと風邪ひいちゃうかもしれない。
早く、寝なきゃ。
……でも、なぜか動こうとする気が起きません。
何かが、心の奥に引っかかってるような。
おかしいな。こんなに楽しい1日を過ごせたんだから、満足なはずなのに。
なんだか、少し物足りないような。何かが、足りないような。
3: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:37:39.80 ID:IWmwsznt0
……心の奥にあるもやもやが何なのかは、うすうすわかっていました。
憂「私、欲張りなのかな。こんなにたくさんの人に祝ってもらったのに」
淡い期待。
さみしくなるだけだから、期待なんてしないようにしよう。もう寝なきゃ。
……そう思っても、結局私はその場から動けませんでした。
なんとなくお姉ちゃんの頭をなでながら、静かにその時を待ちます。
期待なんかしなくてよくなる、その時まで。
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:40:17.31 ID:IWmwsznt0
憂「……あと、20分」
自分の心臓の音が聞こえてきました。
だめ、なんで緊張してるの、私。
唯「……うい~、あいす~……むにゃ」
憂「……もう、さっきたくさんケーキ食べたでしょ?」
このままじっと待っているのがつらくなってきた私は、寝ているお姉ちゃんについつい話しかけてしまいます。
憂「お姉ちゃん、楽しかったね。今日はほんとうにありがとう」
唯「すう……うい~……」
憂「ふふ、お姉ちゃんかわいい。ねえ、おねえちゃ――」
5: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:43:46.26 ID:IWmwsznt0
その時でした。
私の声とお姉ちゃんの寝言だけが響く空間に、ブウン……という、低くて、鈍くて、無機質な音が外から聞こえてきます。
憂「――!」
車の音でした。
部屋が静かなおかげで、車がどういう動きをしているか、手に取るように分かります。
車はゆっくりと家に近づいてきて、回り込んで……駐車場に入りました。
憂「……来た!」
心の奥のもやもやは、もうとっくに消えていました。
やっぱり、欲張りなんだな、私。
でも、純粋に嬉しい。自然と笑みがこぼれてしまいます。
6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:46:22.99 ID:IWmwsznt0
憂「……お姉ちゃん、起きて、起きて!」
唯「むにゃ……? 憂……?」
ごめんね、お姉ちゃん。でも大事なイベントだから、起きて!
私はまだ半分寝ているお姉ちゃんを起こすと、手を引いて玄関に向かいます。
途中、車のドアを閉めるバンという音が聞こえました。
よーし、先回り成功。
お姉ちゃんと手をつなぎながら、玄関にて待ち構えます。
唯「うーいー? どうしたの……?」
お姉ちゃんはまだ寝ぼけてて状況をのみ込めていないみたいです。
7: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:49:35.40 ID:IWmwsznt0
憂「ほら、耳をすまして」
そうお姉ちゃんに促して私も耳をすませると、玄関の扉の向こうから声が聞こえてきます。
――いやあ、すっかり遅くなっちゃったな。もうさすがに寝てるかな?
――ううん、まだ電気ついてるから、起きてるんじゃない?
唯「あ、帰ってきたんだ!」
憂「うん! 一緒にお出迎えしよう、お姉ちゃん?」
そして、ゆっくりと扉が開いて――
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:52:09.74 ID:IWmwsznt0
平沢父「……ただい――」
憂唯「「おかえりなさい!!」」
平沢父「うわあっ!? そこにいたのか!!」
平沢母「あら、待っててくれたの? ふふ、ただいま」
唯「待ってたんだよ~」
憂「ふふ、お姉ちゃんは寝てたでしょ」
唯「そうでした! えへへ」
嬉しい、嬉しい。帰ってきてくれた。
私、今満面の笑みなんだろうなあ。
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2012/02/22(水) 23:55:10.53 ID:IWmwsznt0
平沢父「ごめんよ憂、遅くなってしまった」
憂「ううん、いいの。むしろ、帰ってきてくれてありがとう」
平沢母「ほら、あなた、さっそく」
平沢父「ああ、そうだね。ほら、唯もこっちにおいで」
そう言ってお父さんはお姉ちゃんを手招きすると、袋から何やらごそごそと取り出そうとしています。
……ふふ。わくわくが、止まりません。
平沢父「あと5分か、ギリギリセーフだったな。よーし行くぞ、せーの――」
父・母・唯「「「お誕生日おめでとう、憂!!!」」」
憂「ありがとう!!!」
――私、幸せ者だよ!!!
おわり
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