172: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:53:37 ID:keCc

【ぷちシリーズ】奏「もしもあなたの笑顔に意味があるとするならば」

笑顔の話をするなら彼女の話も描かなければ。
過去作
卯月「私にぷちがいない理由…?」を未読の人はこちらを読んでからお読みください。更新します。



173: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:53:58 ID:keCc

~事務所・仮眠室~

P「う……うぁ……」ダラダラ…

奏「【転移】」ブン……

卯月「わ、とと……」

奏「…熱は……ないみたいね」ピトッ

卯月「あの、何で私なんですか?それに、ちまちゃんは連れてこないなんて」

奏「あの子じゃ回復技は使えないでしょう?…それに、ユミラウネやぷちみおだと、うっかり口を滑らせてしまう可能性があるもの」



174: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:54:34 ID:keCc

卯月「そんな、こっそりやらなくても大丈夫だと思いますけど……わざわざこんな夜中に」

奏「適任をあなたくらいしか思い浮かばなかったのよ。理由は後で話すから、とりあえず、お願い」

卯月「私の魔法だとちょっとしか癒やすことはできないと思うけど……わかりました、やってみます!」ブォン

卯月「…【エイドスマイル】!」キラァン

P「………」スヤァ…



175: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:54:47 ID:keCc

卯月「……これで、多分……」

奏「ええ、上出来よ。また場所を移すわ、手を」

卯月「は、はいっ」ギュ

奏「……【転移】」シュン!

~~~



176: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:55:02 ID:keCc

~廃ビル屋上~

卯月「こんな所、無断で入っちゃっていいのかな……」

奏「……夜風が気持ちいいわね」

ヒュオオ……

卯月「結構高いですからね、風…吹きますね」

奏「…さて、じゃあ理由を話すけど……でも、あなた、実はもう気付いてるんじゃない?」

卯月「……私の予想が正しいのなら、ですけど……プロデューサーさんは多分、自分に自信が持てなくなってるんだと思います。…さっき初めて見たんです、あんなに弱ったプロデューサーさんの顔…」



177: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:55:16 ID:keCc

奏「仮面を被るのが上手いのは、彼自身が元アイドルだったから、なのかもね…本当のところはわからないけれど」

卯月「奏さんなら、過去を覗いたり、その…色々できちゃうんじゃないですか?」

奏「別に過去を覗いたからあなたが勇者だと知ったわけではないの」

卯月「そう、なんですか」

奏「前にも話をしたけれど、あなたの存在はこの世界における『特異点』。私は霊界で魂の伝承を伝え聞いただけ。まぁ、出逢ってすぐ、それがあなただとわかったけれど…魂に含まれる因子が明らかに他とは違っていたから」



178: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:55:30 ID:keCc

卯月「魂とか因子とか、そういうのはぼんやりとしかわかりませんけど、でも、プロデューサーさんが何に悩んでいるのかは……ちょっと、自分と重ねちゃってて、私…おこがましいですけど」アハハ…

奏「いいのよ、あの人だって自分勝手に背負い込んでああなっているのだから、むしろ卯月のお陰で少し楽になっていたしね」

卯月「……わかっちゃうんです、誰かの想いを背負って、誰かを支えて戦う人の痛み、辛さ…勿論悪いことばっかりじゃありませんでした。『前の私』は……あの世界で、『リンちゃん』と『ミオちゃん』に出逢うことができましたから」

卯月「一人きりで戦う、人から見上げられるだけの勇者じゃなくて……ちゃんと側に、仲間がいてくれて、だから、私も命をかけられたんだと思います」



179: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:55:44 ID:keCc

卯月「きっと、ずっと一人きりで戦っていたら……私、どこかで逃げて、取り返しのつかないことになっていたと思います」

奏「そうね。あなたの判断は正しかった。あの時、ああしてでもウロボロスを倒さなければ、そこで魂の流転は途切れて…そうなればきっとこの世界も今頃、存在できていなかったはずだから」

卯月「でも、私は二人を……死なせてしまいました。二人は今も私のことを友達だって言ってくれますけど……たまにあの時の光景が、よぎる時があって……」ブルブル

奏「卯月…」



180: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:56:02 ID:keCc

卯月「二人の顔越しに、二人が死んでいった頃の映像が視えちゃうんです…この世界にウロボロスはいない……そんな事、ありえないのに…」カタカタ

奏「……ありえない訳ではないわ。人の運命は、生けるものの運命は、いつどんな形で途切れてしまうか、わからない」

卯月「そうですね…私だってそうです、無事に明日も、その次も生きていられるなんて保証、どこにも無くて」

卯月「……でも……凛ちゃんが『魔法を教えて』って言ってくれるんです。未央ちゃんが『ラーメン食べに行こうよ』って……私……こんな私…なのに…」



181: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:56:27 ID:keCc

奏「……そう。でも、嫌ではないのよね」

卯月「はい、凄く、嬉しくて……でも、私は……私は二人を救えなかったから……!」ポロッ…ポロッ……

奏「…そうね…思えばあの日真実を告げてから……それより前からずっと……」

卯月「うっ………うわあああ…うわあああん……!」

奏「……ずっと、笑顔だったのね、あなた」ギュッ



182: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:56:41 ID:keCc

卯月「奏さん……私……怖い……!……凄く……死ぬのが……怖いんです……!」

奏「……私は死神だから、いつかあなたの魂を迎えに来るかもしれないわよ」ポンポン

卯月「でも……ズビッ……迎えに来てくれるなら…奏さんがいいなぁ……」ニコ…

奏「潤んだ目で笑って。残酷なこと背負わせるのね」

ヒュオオ……



183: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:56:59 ID:keCc

奏「きっと、誰もがその瞬間を恐れているけれど……」

奏「いつ訪れるとも知れない最期の瞬間を考えて挫けるより、私は」

奏「今この瞬間を、笑って生きる事に、意味がある……そう、思ってるわ」

卯月「……じゃあ、私は笑わなくちゃ」クスン…チーン!

奏「鼻、真っ赤よ」

卯月「…それも笑い話にしてみせます。私は…笑顔の力を、信じていますから」

奏「やっぱり、あなたにお願いして良かった。…これからも、たまにお願いできる?」

卯月「任せてください!頑張りますよ、私!」



184: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:57:12 ID:keCc

奏(真夏、月灯の下で、泣きはらした目と赤くなった鼻で笑う彼女の笑顔は……)

奏(きっと、この世界をも救えるのではないか、そう、錯覚できてしまえるほどに)

奏(……とても)

ヒュオオ………

つづく。



185: ◆6RLd267PvQ 22/08/03(水) 00:58:00 ID:keCc

強い子だし、弱い子。
前に進むために、彼女の掘り下げをさせていただきました。

お目汚し、失礼をば。



元スレ
ヒロミ「笑顔の練習、頑張らないと」モバP「おう、その意気だ!」
http://wktk.open2ch.net/test/read.cgi/aimasu/1657949582/