2: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:03:49.81 ID:zQjbFq1Y.net
>>1
スレ立てありがとうございます!
本作は下記作の続編となっております。
栞子とせつ菜が恋人関係になっている状態です。
読まなくても大丈夫ですが、お読み頂くとより理解しやすいかもしれません。
栞子「もっとせつ菜さんと触れ合いたい…どうすればよいのでしょう…。そうだ、ライブ中なら自然に…」
【SS】栞子「せつ菜さんとお付き合いすることになりました」
【SS】栞子、湯あみ中にせつ菜を想ふ
【SS】栞子「今日はせつ菜さんやみなさんと、冬の花火大会です」
【SS】栞子「姉さんにせつ菜さんを紹介することになりました」
6: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:05:31.36 ID:zQjbFq1Y.net
○せつ菜の部屋
せつ菜「栞子さん、どういうプレゼントだと喜んでくれるでしょうか……」ウロウロ
せつ菜「アニメ系の物……は興味ないですよね……」ウーン
せつ菜「あっ!!! 紅蓮の剣姫関連のグッズはどうでしょうかっ!! 私達がお付き合いした切っ掛けのひとつでもありますしっ!!」
せつ菜「ちょうど発売したばかりの紅蓮の剣姫&翡翠の巫女ペア特大アクリルスタンドはどうでしょう!! 見栄えも抜群ですし、ちょっと高級感もありますっ!!」
せつ菜「いや……本当に喜んでくれるでしょうか……」
せつ菜「はっ……! そういえば先期のアニメでも俯瞰して考えろって言っていましたっ!!」
せつ菜「俯瞰しろ私っ! 俯瞰して考えろ私っ!!」眼鏡を掛けて片目を瞑って
菜々「……そうですね……紅蓮の剣姫、確かにお付き合いした切っ掛けですけれど」
菜々「どちらかというと、初えっちの記憶の方に紐付いてしまうかもしれません」
菜々「確かにあのアクスタはとても良い物です。素晴らしいです」
菜々「ですが、常にえっちなことを思い出してねという意味で受け取られてしまうのは本意ではありません」
菜々「では……栞子さんが好きそうな扇子や湯呑など、日本的な物が無難でしょうか」
菜々「……いや。彼女のテリトリーの物は迂闊に手が出せません」
菜々「良い物の基準が分かりませんし、既にご自身でそれ以上の良品を保持している可能性が高いです」
菜々「……つまり、私や栞子さんの趣味によるものは除外した方が良いかもしれません」
菜々「少し方向を変えて考えてみましょう」
菜々「その……恥ずかしいですけれど、栞子さんが、私のことを大好き……でいてくれるのは間違いなさそうで……///」
菜々「大好き……ですよね……///」
菜々「……いや、赤くなっている場合ではありません。俯瞰しろ私」
菜々「つまり、私が栞子さんを大好きと想っているくらい、栞子さんも同じだと仮定して……」
菜々「もし私なら……栞子さんがプレゼントしてくれたものを、大事に、でも四六時中身に着けていたいです」
菜々「身に着けることで、常に栞子さんが傍にいてくれるかのように感じられる……そういうものが……」
菜々「身に着けるもの……アクセサリー系、がいいでしょうか……」
せつ菜「それなら指輪っ!! 断然指輪がいいですっ!!!! 栞子さんが嵌めて、微笑んでいる様子、すっごく見たいですっっ!!!!」
菜々「指輪」
せつ菜「指輪っ!」
菜々「指輪」
せつ菜「指輪っ!!」
菜々「指輪」
せつ菜「指輪っ!!!」
菜々「だ、だめっ、俯瞰しないと。うるさい私っ! 落ち着け私っ!」
菜々「……ふぅ。……指輪……どうなんでしょう。重すぎないでしょうか」
イマジナリー栞子『ゆ、指輪、ですか……? 嬉しいですけれど、時期尚早ではないでしょうか……。 私達、まだ高校生ですよ?』
せつ菜「ぐふぅっ……!!!」
菜々「くっ……いくら俯瞰しても、私の範囲外の物は測れません……。情けないですが、やはり女子力の高いあの方の助言に頼るべきでしょう」
……
○学園内
歩夢「栞子ちゃんへのお誕生日プレゼント?」
せつ菜「はい……何が良いか、思考がぐるぐる回ってしまって……」
歩夢「うーん、今のせつ菜ちゃん達のお付き合いを見てると、本当に何をあげても、栞子ちゃん心から喜んでくれると思うよ?」
せつ菜「実は私もそう思わないでもないのですが、その、贈って大丈夫そうか、を判断してもらいたくて」
歩夢「わっ。ふふ、惚気るようにまでなっちゃって。それで、何をあげようと考えてるのかな?」
せつ菜「その……ええと……指輪……とか、どうかな、って」
歩夢「うーん、指輪かあ……。それだけ真剣、ってことなんだね」
せつ菜「はい。……やっぱり、重すぎるでしょうか……?」
歩夢「ううん。お付き合いの度合いによってはやっぱり重くなっちゃうけど、せつ菜ちゃん達なら大丈夫だと思う。お互いすごく真面目だし、きっと、栞子ちゃん喜ぶと思うな」
せつ菜「……そ、そうでしょうかっ!!」パァァと笑顔になって
歩夢「ふふっ、うんうん。でもせつ菜ちゃんと、こういう恋話をするようになるなんて思わなかったな。なんだか、嬉しいな」
せつ菜「私も、歩夢さんがいてくれてすっごく助かっています。いつもありがとうございますっ!!」
歩夢「ふふ、どういたしまして」ニッコリ
せつ菜「それで、どういう指輪がいいと思いますか?」
歩夢「そうだね……指輪にも色々種類があるけど……」スマホをいじって
歩夢「……こういう、『ペアリング』なんてどうかな?」画面を見せて
歩夢「お互いが身に着けることで恋人感が増すし、お互いがお互いを所有する証……ってちょっと重たいけど、私だったらすごく嬉しいし。なにより、悪い虫が寄ってこない!」
せつ菜「わ……。いいですねっ! 私も、栞子さんと常に繋がっていたいですしっ!! どういうデザインの物が良いでしょうか……」
歩夢「ストーップ。私が一緒に考えてあげられるのはここまでだよ。実際にどれを選ぶかは、せつ菜ちゃんの考えだけで選んだ物の方が、栞子ちゃんも喜んでくれると思うな」
せつ菜「そ、そうですねっ! わかりました、どれがいいか、自分で決めてみますっ!」
歩夢「ふふ、その意気その意気。頑張ってね、せつ菜ちゃん」
……
○せつ菜の部屋
せつ菜「うーん、ペアリングと言ってもいろいろありますね……」色々ページを見て
せつ菜「ち、ちなみに、結婚指輪だと……うわっ、流石に値段が一桁以上違いますね……」
せつ菜「あんまり高すぎても栞子さんの負担になっちゃいますし……うーん」
せつ菜「恋人用のもので……わっ、このペアリングが良さそうですっ!! 小さな宝石も嵌められるんですね。ふむふむ……」
せつ菜「これを二人で嵌めて……///」想像してゴロゴロ
せつ菜「そしてお値段は……うっ、それでも結構しますね……」
せつ菜「ううん。でもこれに決めましたっ!!……よーーしっっ!!」
……
○学園からの帰り道
栞子「今日も送って頂いて、申し訳ありません」
せつ菜「ふふっ、私が一緒に居たいから、来ているだけですよっ(それに指輪の大きさも、調べませんとね)」繋いだ手を調べるように触って
栞子「……/// (私の左手を異様にさわさわしてきます。もしかして……その……そういう合図でしょうか……?)」
せつ菜「……(なるほど、指まわりはこのくらいですね)」サワサワ
栞子「……んっ……/// (く、くすぐったい……お応えすべき……ですよね)」自分も指を絡めるようにして
せつ菜「……(なるほどなるほど……)」サワサワサワサワ
栞子「(せつ菜さん、すごく、積極的で……)……ふぁ……あっ……///」ジュク
せつ菜「あっ……栞子さんのお家、見えてきましたね!(よし! だいたいわかりました!)」調べるのを止めて
栞子「あぁ……ざ、残念です……///」名残惜しそうに指を絡めて
栞子「……え、えっと、せつ菜さん、今度のお休み、空いていますか? よかったら、一緒にお出かけしたいな、と思うのですが……」
せつ菜「うっ……ごめんなさいっ! その日はどうしても抜けられない用事があって……」
栞子「あっ……そうですか。……ざ、残念ですけれど、仕方ありませんね。アニメ関連の催し物でしょうか?」
せつ菜「い、いえ、そういうわけでもないんですが……ごめんなさいっ。今度、その分も一緒にお出かけしましょうねっ!」
栞子「わ、わかりました」
栞子「(お断りされたの、地味に初めてですね……そういう日もあるはずなのに、なんだかショックです……。いけない、これが独占欲というものでしょうか……)」
栞子「……じゃ、じゃあ……おやすみのキス、たくさんしてください、なんて……」
せつ菜「(わ……きゅんときました! かわいい……)ええ、栞子さんが望むなら、たくさんたくさん、してあげますから……」チュッ
……
○別の日 R3BIRTH練習日
栞子・ランジュ・ミア「「「ドキドキ Bubble over~」」」
栞子「誰かに取られちゃうなんて ヤダ!!ヤダ!!ヤダ!!!!」
ミア「……Stop、Stop!」
ランジュ「ふふ、栞子、いくらなんでも感情乗せすぎよ」
ミア「そうそう。ここはもっとpopに歌わないと。Japanese Enkaじゃないんだから」
栞子「ご、ごめんなさい。もう一回お願いします!」
ランジュ「うーん、ちょうどいいから少し休憩にしましょう?」
ミア「LoveSongを作って欲しいなんて言うから新曲作ったけど、この中で実際に恋愛しているのは栞子だけだからね。表現バランスが難しいね」
ランジュ「栞子、この曲に関してポジティブな部分で活き活きとしていたのに、今日はネガティブな部分が強かったわよね」
ランジュ「んー。もしかしてだけど……せつ菜と喧嘩でもしたのかしら?」
栞子「(流石に曲のことになるとランジュ鋭いですね……)い、いえ。喧嘩……では全然無いのですが……」
ランジュ「なになに? 私に相談してみなさいよ!」身を乗り出して
ミア「……やれやれ」ココアを飲んで様子を見る姿勢
栞子「実は……」カクカクシカジカ
……
栞子「予定が合わなかっただけ……なんですが、もしかして、その……ほんの、本当にほんの少しだけだけなんですが……」
栞子「私、もうすぐ誕生日なのに。もしかして他にいい人が……とか……心がぐるぐるしてしまって……」シュン
ランジュ&ミア「……」顔を見合わせ
栞子「ずっと考えている内に、もしせつ菜さんを誰かに取られたらどうしよう、って……離れないでほしい、って……」目を潤ませて
ランジュ「待って! 待ちなさい、栞子! 100%! 100%無いわ! このランジュが断言してあげる! せつ菜は栞子にぞっこんなのよ!!」
ミア「栞子……。言いにくいんだけど。付き合い始めてから、せつ菜が予定を断ったのはこの一回だけなのかい?」
栞子「はい……」
ランジュ「それ以外は合わせてくれているんでしょう? それに普通予定が合わないなんて、いくらでもあるものよ。ランジュなんてみんなに何回断られてると思っているの!?」
ミア「ランジュの場合は本当に急に思い立って言うからでしょ……。まあ、一回くらい予定が合わないだけで、っていくらなんでも早とちりすぎ。せつ菜を信じていないのかい?」
栞子「わ、私も、理性では当然そう思っています。ただ感情の方が、全然私の言うことを聞いてくれなくて……」
ミア「……Emotionね。組む前は感情の薄い奴だと思っていたけど。組んだ今では、穏やかな水面の下が結構激しく動いてるってのは、まあ理解できているよ」
ランジュ「もう、仕方ないわねえ。でも栞子にもそういう弱い面があるって打ち明けてくれたのは、ちょっと……いいえ、すっごく嬉しいわ! 協力してあげるから、安心しなさい!」
栞子「ありがとう……。協力……ですか?」
……
○その休日
ランジュ「せつ菜が何をしているのか直接見れば、不安なんて吹き飛ぶでしょ。きゃあっ! 尾行なんて、まるで探偵よね!」
栞子「その……これって所謂ストーキングなんじゃ……。恋人関係であっても、駄目だったような……」
ミア「繰り返し行う場合は、みたいだよ。これ一回きりなら大丈夫じゃないかな」
栞子「ミアさんまでお付き合い頂いて申し訳ありません……」
ミア「新曲を作ったからには、perfectに仕上げたいのさ。解決して、しっかり仕上げてもらうからね」
栞子「はい……わかりました!」
ランジュ「……あっ、せつ菜、マンションから出てきたわよ!」
栞子「ど、どこへ行くんでしょうか……」
……
隠密ランジュ「なんだか閑散としたところまで来たわね」コソコソ
隠密栞子「……」コソコソソワソワ
隠密ミア「んん……?」
せつ菜「……あっ、先輩!! おはようございますっ!!!!」
先輩「ういっす~! 中川さん今日も早いねっ。早起きは三文の徳、とってもいいことだよ!」
せつ菜「はいっ!! それじゃ着替えてきますねっ!!!」
隠れ栞子「き、綺麗な人……そんな……」
隠密ランジュ「待って、よく見なさい栞子。あの人の格好、ヘルメットに作業着よ。それでデートも何もないわ!」
せつ菜「先輩、準備できましたっっ!!!」
先輩「おっ、早いね~。それに大きな声はここでは重要だからね。とってもいいよ~!」
先輩「……さっ、それじゃそろそろ始めようか。みんな、いつものいくよ!」
先輩「ヘルメットの着用はよいか!」
せつ菜達「ヘルメットの着用ヨシ!!!」
先輩「本日も事故、災害、ゼロで行こう!」
せつ菜達「ゼロで行こう!!!」
先輩「ご安全に!」
せつ菜達「ご安全に!!!」
隠れ栞子「???」
せつ菜「車一台通りまーーーーすっっっっ!!!!!」
先輩「うぃっす~! 車通るからショベルカーストップー!」
ミア「アルバイトだね」
ランジュ「アルバイトね」
栞子「……な、なるほど……アルバイト、ですね」
栞子「アニメのブルーレイボックス……でしたっけ、そういうのを買うためなのでしょうか……」
ミア「……」ハァ、とため息を吐いて
ランジュ「……栞子。せつ菜の表情よく見て」
栞子「あっ……ものすごく活き活きとしています! あれは大好きに繋がっているときのせつ菜さんの顔ですっ!」
ミア「ま、つまり、このアルバイトはその大好きに繋がってるってことだね」元来た道に歩き始めて
栞子「そうなりますね……?」
ランジュ「はぁ……。愛情是盲目的……栞子ですらこうなっちゃうのね。恋って凄いわね」感心しながらミアと歩きはじめ
ランジュ「栞子。アニメの可能性も勿論あるでしょうけれど。今のタイミングなら、違うんじゃないかしら」
栞子「???」後をついていって
ランジュ「この鐘嵐珠が断言するわ。来週にはもう栞子の悩みは解決している。安心していいわ!」
ミア「そうだね。……やれやれ。今日は栞子のおごりでhamburgerだね」
栞子「ええ!?」
……
○その日の夜 栞子の部屋
栞子「二人におごって、おこずかいが吹き飛んでしまいました……」
栞子「でもとりあえず浮気とかでなくて良かったです」
栞子「いえ、せつ菜さんを信じていましたから、もちろん、全く一切1mmも心配はしていませんでしたけれど」
栞子「それでも安心できました……」ホッとして
栞子「せつ菜さんがアルバイト……ちょっと意外でしたね」
栞子「しばらく忙しいのでしょうか……でももうすぐ私の誕生日ですし、忙しくても、そこは空けてもらえるでしょうか……」
栞子「……まさか、私が、自分の誕生日を意識するようになるなんて、思いもしませんでしたけれど」
栞子「電話……してみましょうか」
栞子「……なんて言うんです? 私の誕生日、一緒にいてくれませんか、って。……何かこう、押しつけがましいような……」
栞子「いけない、この思考は泥沼です。こういう時、誕生日自体を忘れて、その時お誘いが来たらびっくりするのが最大級に嬉しいはずです」
栞子「はっ……そもそも私、誕生日をせつ菜さんに伝えたでしょうか……」
栞子「……う、うーん……うぅ……」ゴロゴロ
栞子電話『走り抜けた想いが 心を染めてまっかっか』
栞子「あっ! せつ菜さんから電話っ!!」ババッ
栞子「こっ、こんばんは。いえ、大丈夫です。あ……いいえ。謝らないでください。急でしたし、今日は私もランジュやミアさんにお付き合い頂いたので」
栞子「はい。はい……えっ!? 十月五日ですか!? ……はい、いえ、予定は何も。……はい、学園帰りに、はい。もちろん大丈夫です!」
……
栞子「ふふ、はい、楽しみにしていますね」ピッ
栞子「……やった、やりました! よかった~!」ウキウキとクルクルと回って
○10月5日 栞子の誕生日 学園帰り
せつ菜「きょ、今日はその……行きたいところがあるんです。一緒についてきてもらえますかっ」カチコチ 手を差し出し
栞子「は、はい! もちろんです。ど、どこに行くのでしょうか。た、楽しみです」カチコチ 手を繋ぎ
せつ菜「(何か言ってしまうと、プレゼントのことに触れてしまいそうで難しいですね……)」繋いだ手をギュッと握って
栞子「(誕生日……間違いなく誕生日だからですよね。あまりそっちの話題に触れないように……)」ギュッと握り返して
せつ菜「きょ、今日は、晴れてくれてよかったですねっ!」
栞子「え、ええ。気候も穏やかになってきましたし、過ごしやすいですしね」
せつ菜「……(ダメです、流石に緊張します。王様エンジンのように鼓動が聞こえてしまっていないでしょうかっ……!)」
栞子「……(せつ菜さんの様子なら……期待、してもいいのでしょうか……落ち着いて、落ち着いて)」
せつ菜「お待たせしましたっ! 到着ですっ!!」夕日の見える海浜公園まで来て
栞子「あっ……。ここは……告白の時の……」
せつ菜「はい、やっぱり、ここがいいかな、って」照れながら
栞子「……よかった……」
せつ菜「ふふ、流石にバレてしまいますよね。ちょっとベタだったでしょうか」
栞子「……」フルフルと首を振って
せつ菜「……栞子さん、お誕生日、おめでとうございますっ!!!」
栞子「……はい。ありがとうございます」ニッコリ笑って
せつ菜「その……プレゼント、すごく迷ったのですけれど」小さな箱を取り出して、そっと捧げて
栞子「わっ……嬉しい。一体なんでしょうか」
せつ菜「えっと、その……もしかしたら、その、重たいかな、とも思うんですが///」耳まで真っ赤になりながら、箱を上下にパカッと開ける
栞子「えっ……あっ……?」
栞子「……(急に思考回路が鈍化してしまったみたいに。目の前のものを上手く処理できません)」
せつ菜「その……お、お誕生日、おめでとうございますっっ!!!!」真っ赤なまま
栞子「指輪が、ふたつ……え?」思考より先に、涙が溢れてきて
栞子「あっ……うぅ……おかしいですね、あれ……」次から次に涙がこぼれて
せつ菜「あっ、栞子さんっ!?」箱を持ったまま、オロオロして
栞子「……」頑張って、指輪を見る。
せつ菜さんが好きそうな、流線形のデザインの指輪に、小さな小さな宝石がそれぞれの指輪に埋め込まれている。
翡翠と、スカーレット・レッド。
間違えようもなく。
私と、せつ菜さんの色だ。
息を吸って、吐いて。
せっかく、せつ菜さんが全力で用意してくれたのだ。
しっかりと、受け取らないと。
―――こわばる左手を、そっと差し出す。
……こちらの手で、良かったでしょうか……
栞子「……嵌めて、頂けるでしょうか」
せつ菜「……はい!」
せつ菜さんが、震える指で、指輪を取って。
赤い方の指輪が、ゆっくり、私の薬指に嵌められる。
栞子「……これで、もし離れていても、せつ菜さんが、いつも傍にいてくれる……ですよね?」
涙を拭って。強張っているかもしれないけれど、笑顔を作って。
せつ菜「はいっ!!」真っ赤なまま、嬉しそうに。太陽のように笑って。
そして、翡翠の指輪を受け取って。
せつ菜さんの左手の薬指に、ゆっくりと嵌める。
いつでも一緒にいると、想いを込めて。
せつ菜「……これで、栞子さんが、いつも傍にいてくれますっ!」
たまらず、せつ菜さんを、ぎゅっと抱きしめた。
栞子「嬉しい……嬉しいです……!! 最高の、誕生日プレゼントです!!」
せつ菜「うん……うん……ふふっ、よかった……」強く強く抱きしめ返して
栞子「大好き、大好きです、せつ菜さん!!」
せつ菜「私もっ!!大好きで、大好きで、大好きですっっ!!!」
そっと、唇を重ねて―――
ベンチに座って、海に沈む夕日を、二人で寄り添い、ずっと眺めて。
指に嵌ったせつ菜さんの炎の指輪を、じっくり眺める。
栞子「……ふふっ」
思わず、笑顔がこぼれてしまう。
せつ菜「よかったです、喜んでもらえて……」
栞子「こんなに素敵な物を頂いて、喜ばないわけがないです」
大切な左手を、胸に当てて。
せつ菜「ふふっ」ニコニコ
栞子「……」
アルバイトしていたことを言うのは、無粋な気がした。
その結実が、この小さくて、何よりも大切な、宝石なのだから。
栞子「せつ菜さん」
せつ菜「なんですか、栞子さん」
栞子「……大好きです!!」
だからキスに、精一杯想いをこめた。
おしまい。
日付切替のタイミングも上手くいって一安心です。
栞子ちゃん、お誕生日おめでとうございます!
そしてたくさんのご支援、本当にありがとうございました!!
元スレ
○せつ菜の部屋
せつ菜「栞子さん、どういうプレゼントだと喜んでくれるでしょうか……」ウロウロ
せつ菜「アニメ系の物……は興味ないですよね……」ウーン
せつ菜「あっ!!! 紅蓮の剣姫関連のグッズはどうでしょうかっ!! 私達がお付き合いした切っ掛けのひとつでもありますしっ!!」
せつ菜「ちょうど発売したばかりの紅蓮の剣姫&翡翠の巫女ペア特大アクリルスタンドはどうでしょう!! 見栄えも抜群ですし、ちょっと高級感もありますっ!!」
せつ菜「いや……本当に喜んでくれるでしょうか……」
せつ菜「はっ……! そういえば先期のアニメでも俯瞰して考えろって言っていましたっ!!」
せつ菜「俯瞰しろ私っ! 俯瞰して考えろ私っ!!」眼鏡を掛けて片目を瞑って
8: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:07:02.84 ID:zQjbFq1Y.net
菜々「……そうですね……紅蓮の剣姫、確かにお付き合いした切っ掛けですけれど」
菜々「どちらかというと、初えっちの記憶の方に紐付いてしまうかもしれません」
菜々「確かにあのアクスタはとても良い物です。素晴らしいです」
菜々「ですが、常にえっちなことを思い出してねという意味で受け取られてしまうのは本意ではありません」
菜々「では……栞子さんが好きそうな扇子や湯呑など、日本的な物が無難でしょうか」
菜々「……いや。彼女のテリトリーの物は迂闊に手が出せません」
菜々「良い物の基準が分かりませんし、既にご自身でそれ以上の良品を保持している可能性が高いです」
菜々「……つまり、私や栞子さんの趣味によるものは除外した方が良いかもしれません」
10: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:09:12.51 ID:zQjbFq1Y.net
菜々「少し方向を変えて考えてみましょう」
菜々「その……恥ずかしいですけれど、栞子さんが、私のことを大好き……でいてくれるのは間違いなさそうで……///」
菜々「大好き……ですよね……///」
菜々「……いや、赤くなっている場合ではありません。俯瞰しろ私」
菜々「つまり、私が栞子さんを大好きと想っているくらい、栞子さんも同じだと仮定して……」
菜々「もし私なら……栞子さんがプレゼントしてくれたものを、大事に、でも四六時中身に着けていたいです」
菜々「身に着けることで、常に栞子さんが傍にいてくれるかのように感じられる……そういうものが……」
11: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:11:40.59 ID:zQjbFq1Y.net
菜々「身に着けるもの……アクセサリー系、がいいでしょうか……」
せつ菜「それなら指輪っ!! 断然指輪がいいですっ!!!! 栞子さんが嵌めて、微笑んでいる様子、すっごく見たいですっっ!!!!」
菜々「指輪」
せつ菜「指輪っ!」
菜々「指輪」
せつ菜「指輪っ!!」
菜々「指輪」
せつ菜「指輪っ!!!」
菜々「だ、だめっ、俯瞰しないと。うるさい私っ! 落ち着け私っ!」
菜々「……ふぅ。……指輪……どうなんでしょう。重すぎないでしょうか」
イマジナリー栞子『ゆ、指輪、ですか……? 嬉しいですけれど、時期尚早ではないでしょうか……。 私達、まだ高校生ですよ?』
せつ菜「ぐふぅっ……!!!」
菜々「くっ……いくら俯瞰しても、私の範囲外の物は測れません……。情けないですが、やはり女子力の高いあの方の助言に頼るべきでしょう」
……
12: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:15:42.97 ID:zQjbFq1Y.net
○学園内
歩夢「栞子ちゃんへのお誕生日プレゼント?」
せつ菜「はい……何が良いか、思考がぐるぐる回ってしまって……」
歩夢「うーん、今のせつ菜ちゃん達のお付き合いを見てると、本当に何をあげても、栞子ちゃん心から喜んでくれると思うよ?」
せつ菜「実は私もそう思わないでもないのですが、その、贈って大丈夫そうか、を判断してもらいたくて」
歩夢「わっ。ふふ、惚気るようにまでなっちゃって。それで、何をあげようと考えてるのかな?」
せつ菜「その……ええと……指輪……とか、どうかな、って」
歩夢「うーん、指輪かあ……。それだけ真剣、ってことなんだね」
13: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:18:21.96 ID:zQjbFq1Y.net
せつ菜「はい。……やっぱり、重すぎるでしょうか……?」
歩夢「ううん。お付き合いの度合いによってはやっぱり重くなっちゃうけど、せつ菜ちゃん達なら大丈夫だと思う。お互いすごく真面目だし、きっと、栞子ちゃん喜ぶと思うな」
せつ菜「……そ、そうでしょうかっ!!」パァァと笑顔になって
歩夢「ふふっ、うんうん。でもせつ菜ちゃんと、こういう恋話をするようになるなんて思わなかったな。なんだか、嬉しいな」
せつ菜「私も、歩夢さんがいてくれてすっごく助かっています。いつもありがとうございますっ!!」
歩夢「ふふ、どういたしまして」ニッコリ
14: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:20:36.32 ID:zQjbFq1Y.net
せつ菜「それで、どういう指輪がいいと思いますか?」
歩夢「そうだね……指輪にも色々種類があるけど……」スマホをいじって
歩夢「……こういう、『ペアリング』なんてどうかな?」画面を見せて
歩夢「お互いが身に着けることで恋人感が増すし、お互いがお互いを所有する証……ってちょっと重たいけど、私だったらすごく嬉しいし。なにより、悪い虫が寄ってこない!」
せつ菜「わ……。いいですねっ! 私も、栞子さんと常に繋がっていたいですしっ!! どういうデザインの物が良いでしょうか……」
歩夢「ストーップ。私が一緒に考えてあげられるのはここまでだよ。実際にどれを選ぶかは、せつ菜ちゃんの考えだけで選んだ物の方が、栞子ちゃんも喜んでくれると思うな」
せつ菜「そ、そうですねっ! わかりました、どれがいいか、自分で決めてみますっ!」
歩夢「ふふ、その意気その意気。頑張ってね、せつ菜ちゃん」
……
15: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:23:28.05 ID:zQjbFq1Y.net
○せつ菜の部屋
せつ菜「うーん、ペアリングと言ってもいろいろありますね……」色々ページを見て
せつ菜「ち、ちなみに、結婚指輪だと……うわっ、流石に値段が一桁以上違いますね……」
せつ菜「あんまり高すぎても栞子さんの負担になっちゃいますし……うーん」
せつ菜「恋人用のもので……わっ、このペアリングが良さそうですっ!! 小さな宝石も嵌められるんですね。ふむふむ……」
せつ菜「これを二人で嵌めて……///」想像してゴロゴロ
せつ菜「そしてお値段は……うっ、それでも結構しますね……」
せつ菜「ううん。でもこれに決めましたっ!!……よーーしっっ!!」
……
16: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:28:10.59 ID:zQjbFq1Y.net
○学園からの帰り道
栞子「今日も送って頂いて、申し訳ありません」
せつ菜「ふふっ、私が一緒に居たいから、来ているだけですよっ(それに指輪の大きさも、調べませんとね)」繋いだ手を調べるように触って
栞子「……/// (私の左手を異様にさわさわしてきます。もしかして……その……そういう合図でしょうか……?)」
せつ菜「……(なるほど、指まわりはこのくらいですね)」サワサワ
栞子「……んっ……/// (く、くすぐったい……お応えすべき……ですよね)」自分も指を絡めるようにして
せつ菜「……(なるほどなるほど……)」サワサワサワサワ
栞子「(せつ菜さん、すごく、積極的で……)……ふぁ……あっ……///」ジュク
せつ菜「あっ……栞子さんのお家、見えてきましたね!(よし! だいたいわかりました!)」調べるのを止めて
栞子「あぁ……ざ、残念です……///」名残惜しそうに指を絡めて
17: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:30:21.28 ID:zQjbFq1Y.net
栞子「……え、えっと、せつ菜さん、今度のお休み、空いていますか? よかったら、一緒にお出かけしたいな、と思うのですが……」
せつ菜「うっ……ごめんなさいっ! その日はどうしても抜けられない用事があって……」
栞子「あっ……そうですか。……ざ、残念ですけれど、仕方ありませんね。アニメ関連の催し物でしょうか?」
せつ菜「い、いえ、そういうわけでもないんですが……ごめんなさいっ。今度、その分も一緒にお出かけしましょうねっ!」
栞子「わ、わかりました」
栞子「(お断りされたの、地味に初めてですね……そういう日もあるはずなのに、なんだかショックです……。いけない、これが独占欲というものでしょうか……)」
栞子「……じゃ、じゃあ……おやすみのキス、たくさんしてください、なんて……」
せつ菜「(わ……きゅんときました! かわいい……)ええ、栞子さんが望むなら、たくさんたくさん、してあげますから……」チュッ
……
18: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:32:47.57 ID:zQjbFq1Y.net
○別の日 R3BIRTH練習日
栞子・ランジュ・ミア「「「ドキドキ Bubble over~」」」
栞子「誰かに取られちゃうなんて ヤダ!!ヤダ!!ヤダ!!!!」
ミア「……Stop、Stop!」
ランジュ「ふふ、栞子、いくらなんでも感情乗せすぎよ」
ミア「そうそう。ここはもっとpopに歌わないと。Japanese Enkaじゃないんだから」
栞子「ご、ごめんなさい。もう一回お願いします!」
ランジュ「うーん、ちょうどいいから少し休憩にしましょう?」
19: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:36:08.76 ID:zQjbFq1Y.net
ミア「LoveSongを作って欲しいなんて言うから新曲作ったけど、この中で実際に恋愛しているのは栞子だけだからね。表現バランスが難しいね」
ランジュ「栞子、この曲に関してポジティブな部分で活き活きとしていたのに、今日はネガティブな部分が強かったわよね」
ランジュ「んー。もしかしてだけど……せつ菜と喧嘩でもしたのかしら?」
栞子「(流石に曲のことになるとランジュ鋭いですね……)い、いえ。喧嘩……では全然無いのですが……」
ランジュ「なになに? 私に相談してみなさいよ!」身を乗り出して
ミア「……やれやれ」ココアを飲んで様子を見る姿勢
栞子「実は……」カクカクシカジカ
……
20: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:39:10.56 ID:zQjbFq1Y.net
栞子「予定が合わなかっただけ……なんですが、もしかして、その……ほんの、本当にほんの少しだけだけなんですが……」
栞子「私、もうすぐ誕生日なのに。もしかして他にいい人が……とか……心がぐるぐるしてしまって……」シュン
ランジュ&ミア「……」顔を見合わせ
栞子「ずっと考えている内に、もしせつ菜さんを誰かに取られたらどうしよう、って……離れないでほしい、って……」目を潤ませて
ランジュ「待って! 待ちなさい、栞子! 100%! 100%無いわ! このランジュが断言してあげる! せつ菜は栞子にぞっこんなのよ!!」
ミア「栞子……。言いにくいんだけど。付き合い始めてから、せつ菜が予定を断ったのはこの一回だけなのかい?」
栞子「はい……」
ランジュ「それ以外は合わせてくれているんでしょう? それに普通予定が合わないなんて、いくらでもあるものよ。ランジュなんてみんなに何回断られてると思っているの!?」
ミア「ランジュの場合は本当に急に思い立って言うからでしょ……。まあ、一回くらい予定が合わないだけで、っていくらなんでも早とちりすぎ。せつ菜を信じていないのかい?」
栞子「わ、私も、理性では当然そう思っています。ただ感情の方が、全然私の言うことを聞いてくれなくて……」
ミア「……Emotionね。組む前は感情の薄い奴だと思っていたけど。組んだ今では、穏やかな水面の下が結構激しく動いてるってのは、まあ理解できているよ」
ランジュ「もう、仕方ないわねえ。でも栞子にもそういう弱い面があるって打ち明けてくれたのは、ちょっと……いいえ、すっごく嬉しいわ! 協力してあげるから、安心しなさい!」
栞子「ありがとう……。協力……ですか?」
……
22: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:42:28.77 ID:zQjbFq1Y.net
○その休日
ランジュ「せつ菜が何をしているのか直接見れば、不安なんて吹き飛ぶでしょ。きゃあっ! 尾行なんて、まるで探偵よね!」
栞子「その……これって所謂ストーキングなんじゃ……。恋人関係であっても、駄目だったような……」
ミア「繰り返し行う場合は、みたいだよ。これ一回きりなら大丈夫じゃないかな」
栞子「ミアさんまでお付き合い頂いて申し訳ありません……」
ミア「新曲を作ったからには、perfectに仕上げたいのさ。解決して、しっかり仕上げてもらうからね」
栞子「はい……わかりました!」
ランジュ「……あっ、せつ菜、マンションから出てきたわよ!」
栞子「ど、どこへ行くんでしょうか……」
……
24: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:46:01.38 ID:zQjbFq1Y.net
隠密ランジュ「なんだか閑散としたところまで来たわね」コソコソ
隠密栞子「……」コソコソソワソワ
隠密ミア「んん……?」
せつ菜「……あっ、先輩!! おはようございますっ!!!!」
先輩「ういっす~! 中川さん今日も早いねっ。早起きは三文の徳、とってもいいことだよ!」
せつ菜「はいっ!! それじゃ着替えてきますねっ!!!」
隠れ栞子「き、綺麗な人……そんな……」
隠密ランジュ「待って、よく見なさい栞子。あの人の格好、ヘルメットに作業着よ。それでデートも何もないわ!」
25: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:48:07.74 ID:zQjbFq1Y.net
せつ菜「先輩、準備できましたっっ!!!」
先輩「おっ、早いね~。それに大きな声はここでは重要だからね。とってもいいよ~!」
先輩「……さっ、それじゃそろそろ始めようか。みんな、いつものいくよ!」
先輩「ヘルメットの着用はよいか!」
せつ菜達「ヘルメットの着用ヨシ!!!」
先輩「本日も事故、災害、ゼロで行こう!」
せつ菜達「ゼロで行こう!!!」
先輩「ご安全に!」
せつ菜達「ご安全に!!!」
隠れ栞子「???」
26: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:51:10.55 ID:zQjbFq1Y.net
せつ菜「車一台通りまーーーーすっっっっ!!!!!」
先輩「うぃっす~! 車通るからショベルカーストップー!」
ミア「アルバイトだね」
ランジュ「アルバイトね」
栞子「……な、なるほど……アルバイト、ですね」
栞子「アニメのブルーレイボックス……でしたっけ、そういうのを買うためなのでしょうか……」
ミア「……」ハァ、とため息を吐いて
ランジュ「……栞子。せつ菜の表情よく見て」
栞子「あっ……ものすごく活き活きとしています! あれは大好きに繋がっているときのせつ菜さんの顔ですっ!」
28: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:53:19.66 ID:zQjbFq1Y.net
ミア「ま、つまり、このアルバイトはその大好きに繋がってるってことだね」元来た道に歩き始めて
栞子「そうなりますね……?」
ランジュ「はぁ……。愛情是盲目的……栞子ですらこうなっちゃうのね。恋って凄いわね」感心しながらミアと歩きはじめ
ランジュ「栞子。アニメの可能性も勿論あるでしょうけれど。今のタイミングなら、違うんじゃないかしら」
栞子「???」後をついていって
ランジュ「この鐘嵐珠が断言するわ。来週にはもう栞子の悩みは解決している。安心していいわ!」
ミア「そうだね。……やれやれ。今日は栞子のおごりでhamburgerだね」
栞子「ええ!?」
……
29: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:55:27.44 ID:zQjbFq1Y.net
○その日の夜 栞子の部屋
栞子「二人におごって、おこずかいが吹き飛んでしまいました……」
栞子「でもとりあえず浮気とかでなくて良かったです」
栞子「いえ、せつ菜さんを信じていましたから、もちろん、全く一切1mmも心配はしていませんでしたけれど」
栞子「それでも安心できました……」ホッとして
栞子「せつ菜さんがアルバイト……ちょっと意外でしたね」
栞子「しばらく忙しいのでしょうか……でももうすぐ私の誕生日ですし、忙しくても、そこは空けてもらえるでしょうか……」
栞子「……まさか、私が、自分の誕生日を意識するようになるなんて、思いもしませんでしたけれど」
栞子「電話……してみましょうか」
栞子「……なんて言うんです? 私の誕生日、一緒にいてくれませんか、って。……何かこう、押しつけがましいような……」
30: 名無しで叶える物語 2022/10/04(火) 23:57:40.84 ID:zQjbFq1Y.net
栞子「いけない、この思考は泥沼です。こういう時、誕生日自体を忘れて、その時お誘いが来たらびっくりするのが最大級に嬉しいはずです」
栞子「はっ……そもそも私、誕生日をせつ菜さんに伝えたでしょうか……」
栞子「……う、うーん……うぅ……」ゴロゴロ
栞子電話『走り抜けた想いが 心を染めてまっかっか』
栞子「あっ! せつ菜さんから電話っ!!」ババッ
栞子「こっ、こんばんは。いえ、大丈夫です。あ……いいえ。謝らないでください。急でしたし、今日は私もランジュやミアさんにお付き合い頂いたので」
栞子「はい。はい……えっ!? 十月五日ですか!? ……はい、いえ、予定は何も。……はい、学園帰りに、はい。もちろん大丈夫です!」
……
栞子「ふふ、はい、楽しみにしていますね」ピッ
栞子「……やった、やりました! よかった~!」ウキウキとクルクルと回って
31: 名無しで叶える物語 2022/10/05(水) 00:00:06.60 ID:gq976FSD.net
○10月5日 栞子の誕生日 学園帰り
せつ菜「きょ、今日はその……行きたいところがあるんです。一緒についてきてもらえますかっ」カチコチ 手を差し出し
栞子「は、はい! もちろんです。ど、どこに行くのでしょうか。た、楽しみです」カチコチ 手を繋ぎ
せつ菜「(何か言ってしまうと、プレゼントのことに触れてしまいそうで難しいですね……)」繋いだ手をギュッと握って
栞子「(誕生日……間違いなく誕生日だからですよね。あまりそっちの話題に触れないように……)」ギュッと握り返して
せつ菜「きょ、今日は、晴れてくれてよかったですねっ!」
栞子「え、ええ。気候も穏やかになってきましたし、過ごしやすいですしね」
せつ菜「……(ダメです、流石に緊張します。王様エンジンのように鼓動が聞こえてしまっていないでしょうかっ……!)」
栞子「……(せつ菜さんの様子なら……期待、してもいいのでしょうか……落ち着いて、落ち着いて)」
32: 名無しで叶える物語(らっかせい) [ここ壊れてます] .net
せつ菜「お待たせしましたっ! 到着ですっ!!」夕日の見える海浜公園まで来て
栞子「あっ……。ここは……告白の時の……」
せつ菜「はい、やっぱり、ここがいいかな、って」照れながら
栞子「……よかった……」
せつ菜「ふふ、流石にバレてしまいますよね。ちょっとベタだったでしょうか」
栞子「……」フルフルと首を振って
34: 名無しで叶える物語(らっかせい) [ここ壊れてます] .net
せつ菜「……栞子さん、お誕生日、おめでとうございますっ!!!」
栞子「……はい。ありがとうございます」ニッコリ笑って
せつ菜「その……プレゼント、すごく迷ったのですけれど」小さな箱を取り出して、そっと捧げて
栞子「わっ……嬉しい。一体なんでしょうか」
せつ菜「えっと、その……もしかしたら、その、重たいかな、とも思うんですが///」耳まで真っ赤になりながら、箱を上下にパカッと開ける
35: 名無しで叶える物語(らっかせい) [ここ壊れてます] .net
栞子「えっ……あっ……?」
栞子「……(急に思考回路が鈍化してしまったみたいに。目の前のものを上手く処理できません)」
せつ菜「その……お、お誕生日、おめでとうございますっっ!!!!」真っ赤なまま
栞子「指輪が、ふたつ……え?」思考より先に、涙が溢れてきて
栞子「あっ……うぅ……おかしいですね、あれ……」次から次に涙がこぼれて
せつ菜「あっ、栞子さんっ!?」箱を持ったまま、オロオロして
36: 名無しで叶える物語(らっかせい) [ここ壊れてます] .net
栞子「……」頑張って、指輪を見る。
せつ菜さんが好きそうな、流線形のデザインの指輪に、小さな小さな宝石がそれぞれの指輪に埋め込まれている。
翡翠と、スカーレット・レッド。
間違えようもなく。
私と、せつ菜さんの色だ。
息を吸って、吐いて。
せっかく、せつ菜さんが全力で用意してくれたのだ。
しっかりと、受け取らないと。
―――こわばる左手を、そっと差し出す。
……こちらの手で、良かったでしょうか……
37: 名無しで叶える物語 2022/10/05(水) 00:12:18.41 ID:gq976FSD.net
栞子「……嵌めて、頂けるでしょうか」
せつ菜「……はい!」
せつ菜さんが、震える指で、指輪を取って。
赤い方の指輪が、ゆっくり、私の薬指に嵌められる。
栞子「……これで、もし離れていても、せつ菜さんが、いつも傍にいてくれる……ですよね?」
涙を拭って。強張っているかもしれないけれど、笑顔を作って。
せつ菜「はいっ!!」真っ赤なまま、嬉しそうに。太陽のように笑って。
38: 名無しで叶える物語 2022/10/05(水) 00:14:20.78 ID:gq976FSD.net
そして、翡翠の指輪を受け取って。
せつ菜さんの左手の薬指に、ゆっくりと嵌める。
いつでも一緒にいると、想いを込めて。
せつ菜「……これで、栞子さんが、いつも傍にいてくれますっ!」
たまらず、せつ菜さんを、ぎゅっと抱きしめた。
栞子「嬉しい……嬉しいです……!! 最高の、誕生日プレゼントです!!」
せつ菜「うん……うん……ふふっ、よかった……」強く強く抱きしめ返して
栞子「大好き、大好きです、せつ菜さん!!」
せつ菜「私もっ!!大好きで、大好きで、大好きですっっ!!!」
そっと、唇を重ねて―――
39: 名無しで叶える物語 2022/10/05(水) 00:17:17.72 ID:gq976FSD.net
ベンチに座って、海に沈む夕日を、二人で寄り添い、ずっと眺めて。
指に嵌ったせつ菜さんの炎の指輪を、じっくり眺める。
栞子「……ふふっ」
思わず、笑顔がこぼれてしまう。
せつ菜「よかったです、喜んでもらえて……」
栞子「こんなに素敵な物を頂いて、喜ばないわけがないです」
大切な左手を、胸に当てて。
せつ菜「ふふっ」ニコニコ
栞子「……」
アルバイトしていたことを言うのは、無粋な気がした。
その結実が、この小さくて、何よりも大切な、宝石なのだから。
栞子「せつ菜さん」
せつ菜「なんですか、栞子さん」
栞子「……大好きです!!」
だからキスに、精一杯想いをこめた。
おしまい。
40: 名無しで叶える物語 2022/10/05(水) 00:19:20.65 ID:gq976FSD.net
日付切替のタイミングも上手くいって一安心です。
栞子ちゃん、お誕生日おめでとうございます!
そしてたくさんのご支援、本当にありがとうございました!!
せつ菜「栞子さんへのお誕生日プレゼント、どうしましょうっっ!!」