堀裕子「年齢を変えるさいきっくですか」【モバマス】
ほたる「白菊ほたるは男の子」【モバマス】3月中旬 事務所
莉嘉「おはようございまーすっ☆」
杏「おはよー」
美波「おはよう、莉嘉ちゃん。何か楽しそうだけどいいことでもあったの?」
莉嘉「今日から春休みになったんだー☆」
美波「そっか。もう3月だもんね」
莉嘉「美波ちゃんは春休みじゃないの?」
美波「私は2月から」
莉嘉「えぇー! ずるーい!」
杏「大学生はいいよね。夏休みも2ヶ月くらいあったでしょ?」
美波「そうね……でもレポートとかで忙しいからいいことばかりじゃないよ? ……あと杏ちゃんは毎日が春休みみたいなものでしょ」
杏「失礼な。杏だって留年しないようちゃんと登校してるし、課題も出してるんだぞー」
莉嘉「春休みはいいよねー! 宿題がないし、遊ぶ予定がいっぱいあるんだー☆」
美波「宿題がないからって遊んでばかりじゃダメよ。毎日少しでもいいから勉強しないと」
莉嘉「え~、美波ちゃんお姉ちゃんみたいなこと言う~」
美波「私も美嘉ちゃんも、莉嘉ちゃんを心配しているから言っているの」
杏「まあまあ、まだ中学1年生なんだから春休みくらいのんびりしててもいいんじゃない?」
美波「杏ちゃんはのんびりしすぎだと思うけど……」
裕子「た、助けてください~!」
莉嘉「あ、ユッコちゃんおはよーっ☆」
美波「どうしたの? 助けてって言ってたけど……」
裕子「実は……」
杏「実は?」
裕子「留年しそうなんです!」
2: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:12:02 ID:iuQS
莉嘉「留年?」
裕子「先日学年末テストの結果が返ってきまして……」
杏「あー、杏の学校でも返ってきたなあ。点数見てないや」
裕子「それがこのような結果でして……」
杏「どれどれ……」
美波「36、42、7、31、35……」
莉嘉「うわあ……」
杏「どれもひどいね……数学なんて赤点じゃん」
裕子「はい……。それで来週追試があるんですけど……」
美波「うんうん」
裕子「追試で60点以上取らないと留年って言われたんです!」
杏「……」
美波「……」
裕子「……」
杏「ユッコ」
美波「ユッコちゃん」
裕子「はい」
杏「もう一年、頑張ろうな」
美波「留年って何も悪いことじゃないと思うの。一年無駄にしたなんて思うんじゃなくて、むしろ一年多く学べるって前向きに捉えた方がいいんじゃないかな」
裕子「うわ~ん! 諦めないでください~!」
杏「でも本当にユッコが留年することは事務所にとってマイナスとは限らないと思うんだよね」
裕子「どういうことですか?」
杏「例えばユッコの留年を知った学生アイドル達がユッコみたいにならないよう勉強するようになって学力向上するとか……」
美波「反面教師系アイドル……」
莉嘉「留年アイドルって新しくない? アイドルにとって個性は武器だよ!」
杏「一応うちにはちとせのような留年してるアイドルはいるけどね。ただユッコの場合は学力的な問題だから差別化できると思うよ」
裕子「嫌ですよ! 私にはサイキックアイドルという最強の個性があります!」
杏「といっても実際問題あと一週間で60点っていうのはなあ」
裕子「サイキック一夜漬けとサイキック鉛筆転がし、追試問題の内容を予知するサイキックを鍛えて……」
杏「やる気ある?」
莉嘉「勉強しよ?」
裕子「お母さんに留年がバレたらアイドル辞めされられちゃうかもしれません……うぅ……ぐすん」
杏「ごめんて。泣かないで」
美波「……」
裕子「助けてください……なんでもしますから……」
美波「……ユッコちゃん、本当になんでもする?」
裕子「え?」
美波「本気で勉強する覚悟ある?」
裕子「は、はい! もちろんです!」
美波「それじゃあ私が勉強みてあげる」
裕子「本当ですか!? ありがとうございます!!」
美波「ただし! 一週間しか時間がない関係上、少し厳しくいくから覚悟しておくこと!」
裕子「はい!」
莉嘉「大丈夫かなあ?」
杏「うーん、ユッコしだいじゃない?」
杏(こうして美波ちゃんによる地獄の補修対策授業が始まった)
美波「じゃあ一年間のテストの問題用紙と学校の問題集を出して!」
裕子「はい! 美波先生!」
美波「まずはテストの振り返り! 問題集と照らし合わせてどこの問題がテストに出たのかチェックして!」
裕子「イエス! マム!」
美波「じゃあ特に酷かった三角関数の分野からやるね」
莉嘉「余弦、正弦、二倍角……? うへえ、難しそうな公式がいっぱい……ユッコちゃん意味分かる?」
裕子「さっぱりわかりません! 丸ごと暗記するしかありませんねっ! 逆に言えば、暗記してしまえば意味など問題ないですっ!」
美波「喝ッ!」
裕子「ぐへっ!」
美波「意味もわからず公式の丸暗記なんて言語道断! そんなことしてもいざというときに出てこないよ」
裕子「そ、そうですか……?」
美波「ただし! 今回は時間がないから丸暗記することを許可します!」
杏「許可するんかい」
美波「身体を動かしながら公式の復唱! いっち、に! さんっ、し!」
裕子「a^2 = b^2 + c^2 - 2bc cos α!」
美波「身体を動かすことで脳も活性化! 勉強と同時にダンスも覚えられる!」
裕子「一石二鳥ですね!」
杏「なんだこれ」
莉嘉「じゃあアタシみりあちゃんと遊びに行ってくるね! ユッコちゃん頑張ってっ☆」
裕子「ありがとうございます!」
テスト勉強3日目
美波「付箋貼った問題を解く! 問題を見たら解法が思い浮かぶようになるまで反復練習!」
裕子「えーっと、『ルートが自然数となる自然数を』……? 自然数ってなんですか? あ、自然の数……森?」
杏「嘘だろ……」
莉嘉「正の整数のことだよね! 中1で習ったよ!」
美波「やっぱりここで留年した方がユッコちゃんのためなんじゃ……?」
テスト勉強4日目
美波「今日の宿題! 明日までにやってきてね」
裕子「え、その、美波さん……ちょっと多いような……」
美波「留年、アイドル、活動停止」
裕子「が、がんばります!」
杏「スパルタだ……」
莉嘉「勝手にリップ使ったときのお姉ちゃんみたい……」
テスト勉強5日目
美波「小テスト作ったから解いてみて!」
裕子「わざわざありがとうございます! ……できました!」
美波「どれどれ……30点!」
莉嘉「何点満点?」
美波「……100点満点」
杏「…………まあ最初の7点と比べたらだいぶましになったんじゃない?」
杏(美波ちゃんの厳しい指導は一週間毎日続いたけど、ユッコが根を上げることはなかった)
杏(そして追試前日……)
裕子「ぜえ……はあ……で、できました……!」
美波「おつかれさま。どれどれ……」
莉嘉「どう?」
美波「95点!」
裕子「あぁ! 満点の自信がありましたのに!」
杏「いやでもすごいよ。問題みたけどテストと同じくらいの難易度だったし」
美波「これなら追試も問題ないはず。だから今日は夜更かしせずに早く寝ること。寝坊したら元も子もないからね」
裕子「はい! 本当にありがとうございました!」
次の日
裕子「いってきます!」
裕子(今日は追試の日! 無事に寝坊することもなく起きることができました! 勉強を見てくれた美波さんのためにも頑張りますよ~!)
裕子「わぎゃっ!」
おばあさん「あらまぁ、ごめんなさい。お嬢ちゃん大丈夫かい?」
裕子「だ、大丈夫です。私こそ急に飛び出してごめんなさい」
おばあさん「怪我がなくて何よりだわぁ」
裕子「いえいえ……。それにしてもすごい荷物ですね。運びましょうか?」
おばあさん「ありがとう。でもすぐそこでバスに乗るから大丈夫よぉ」
裕子「そうですか」
おばあさん「それじゃあバスも来たことだし私はこれで。さようならぁ」
裕子「さようなら~」
裕子「よし! 私も早く学校に……ってあれ?」
裕子「鍵? 誰のだろう……ってもしかしてあのおばあさんの!?」
裕子(バスは……あぁ、行っちゃいました!)
裕子(ど、どどどどうしましょう!?)
裕子(このままじゃおばあさんが……でもテストがあるし……)
裕子「……」
裕子「……サイキックテレポーテーション! うおおおおおおおおバス待てええええ!」
バス停
裕子「ぜえ……はあ……。やっと…………追いつきました……」
おばあさん「あれ? あなた……」
裕子「おばあさん……これ、落としましたよ……」
おばあさん「え……あ、家の鍵……。わざわざ走って届けに来てくれたのかい?」
裕子「はい……追いついて、よかったです……」
おばあさん「ありがとう。このままだとわたし、家に入れないところだったわぁ。何かお礼を……」
裕子「いえ、当然のことをしたまでです。それでは私は用事があるので。さらば!」
バス内
裕子(ふぅ、今の時間は……)
裕子(試験が終わるまでには間に合いそうですね。解く時間があるかは別として)
裕子(ごめんなさい、美波さん……)
学校
先生「………………」
先生(堀が来ない……)
先生(何故だ! 今日を逃したら留年なんだぞ!?)
先生(試験時間は残り15分……)
裕子「すみません! 遅れました!」
先生「!」
裕子「試験受けさせてもらえますか!?」
先生「……問題ない。ただみんなと同じ、チャイムが鳴ったら回収するぞ」
裕子「もちろんです!」
事務所
裕子「おはようございます……」
莉嘉「あ、ユッコちゃん!」
美波「おはよう、ユッコちゃん」
杏「テストどうだった?」
裕子「……」
美波「……ユッコちゃん?」
裕子「ぐすっ……うぅ……! 美波さん……!!」
裕子「ごべんなさい……ごめんなさい……!!!」
美波「そんなことがあったの……」
裕子「ぐすっ、私はおバカです……。美波さんにあんなにしてもらったのに……」
美波「謝らないでユッコちゃん」
裕子「でもぉ……」
美波「ユッコちゃんは自分の信念に従っておばあさんを助けたのでしょう? なら後悔しない。ユッコちゃんは悪くないって私たちは分かってる」
莉嘉「ユッコちゃんカッコいい!」
杏「回答用紙の六割は埋められたんでしょ? もしかしたら60点以上取れてるかもしれないじゃん」
裕子「みなさん……」
美波「終わったものは仕方ないし、気楽に結果を待ちましょう。とりあえず今日はゆっくり休んで」
裕子「はい……おつかれさまでした……」
莉嘉「行っちゃった」
杏「まったく、スプーンは曲げるくせに自分の信念は曲げないんだから……」
美波「でもそれがユッコちゃんのいいところでしょう?」
杏「まあね」
莉嘉「ユッコちゃんどうなっちゃうんだろう?」
とある家
先生「……」
先生(佐藤85点、田中70点……。簡単な問題にしたしみんな大丈夫そうだな)
先生(次は堀か……)
先生「…………」
先生(……55点)
先生(時間の関係で回答用紙の六割しか埋められてない。それを考慮するなら十分合格をあげても……)
先生(ただ足りないものは足りない。おまけしたいところだが特別扱いすると他の生徒の保護者の方から苦情がくるやも……)
『サイキックおいろけビーム!』
先生(っ! ……なんだテレビか)
おばあさん「おやおや、これはこれは……」
先生「母さん……どうしたの?」
おばあさん「このテレビに写ってる女の子……」
先生「知ってるの?」
おばあさん「今朝この子に助けてもらって……」
先生「え? この子に?」
おばあさん「ええ。わたしが道に鍵を落としたのを拾ってくれてねぇ。気づかずにバスに乗ったわたしを走って追いかけてくれたのよぉ」
おばあさん「お礼をしようと思ったんだけど、何やら急いでいたようででねぇ」
先生「そう、なんだ……」
おばあさん「かわいい子だとは思ってたけど、まさか芸能人だったとはねえ。ふぁんれたーとやらを送らないと」
先生「……母さん、ファンレター書くなら俺が渡しておくよ」
おばあさん「おやそうかい。ありがとうねぇ」
一週間後、事務所
美波「それじゃあユッコちゃんの進級を祝して、乾杯!」
裕子「乾杯!」
杏「乾杯!」
莉嘉「カンパーイ!」
莉嘉「プハー☆ ひと仕事終えたあとの一杯は最高だね☆」
杏「ただの缶ジュースだけどね」
美波「ユッコちゃん本当におめでとうね」
裕子「ありがとうございます! 美波さんには本当に感謝してもしきれません!」
莉嘉「それにしても一時はどうなるかと思ったよね~」
裕子「はい。点数は足りませんでしたけど、追加のレポート課題を出したらおまけしてくれました!」
杏「いわゆる救済措置ってやつだね」
裕子「何はともあれ一件落着……」prr
莉嘉「ユッコちゃん電話鳴ってるよ」
裕子「はいはい、皆さん失礼しますね……ハイもしもし、あ、お母さん?」
裕子「うんうん、そう! 無事に進級できたよー」
杏「タメ語のユッコなんか新鮮だな」
莉嘉「だねー」
裕子「うん……えっ、成績表届いた?」
杏「……」
美波「……」
莉嘉「……」
裕子「じゅ、塾!? い、嫌だ! 塾行きたくない!」
杏「なんか雲行きが……」
裕子「これからは真面目に勉強するから……」
美波「ユッコちゃん、電話変わってくれる?」
裕子「美波さん? は、はいどうぞ」
美波「ありがとう。……もしもし、すみません。お電話変わりました新田美波と申します……」
莉嘉「美波ちゃんどうするつもりだろう?」
美波「……はい、はい! ですので私が責任持って勉強を見ますので……」
美波「……はい! ありがとうございます! それでは裕子ちゃんに変わりますね。……ユッコちゃん」
裕子「あ、ありがとうございます……もしもし、お母さん?」
莉嘉「なに話してたの?」
美波「ユッコちゃんのお母様がユッコちゃんを塾に通わせようとしてたんだけど、私が勉強を見るから次のテストまで待っててほしいって頼んだの」
杏「それで了承は取れたの?」
美波「ええ。追試のときも私が教えたって言ったら喜んでオッケーしてくれたわ」
莉嘉「美波ちゃんすごーい!」
裕子「美波さんありがとうございました」
杏「あ、戻ってきた。お母さんなんて?」
裕子「美波さんに迷惑をかけないようにって言われました」
莉嘉「とりあえずは一件落着だね☆」
裕子「そうですね。……それじゃあ気を取り直してもう一度乾杯しましょう! 楽しい春休みが始まりますよー!」
美波「その前にユッコちゃん。はいこれ」
裕子「ん? なんですかこのプリント?」
美波「春休みの学習計画書。お母様に見せて大丈夫か確認しておいて」
杏「どれどれ……おぅふ」
莉嘉「春休みなのにこんなに勉強時間が……」
美波「次のテストまでに全科目の総復習をやるからね」
裕子「あ、あば、あばば……」
杏「ユッコが壊れた」
美波「適度にお休みの日を作ったと思うけど……これからもよろしくね、ユッコちゃん。追試のときよりも厳しく教えるから覚悟しておいてね」
裕子「そ、そぉんなぁ~!」
杏「……勉強しないとああなるよ」
莉嘉「……帰ったら勉強しようかな」
美波「とりあえず今日は追試の間違え直しを……ってあっ、逃げるなー!」
裕子「これからはまじめに勉強するので勘弁してください~っ!」
終わりです。ありがとうございました
少しでもユッコに投票してくださる人が増えますように
元スレ
莉嘉「留年?」
裕子「先日学年末テストの結果が返ってきまして……」
杏「あー、杏の学校でも返ってきたなあ。点数見てないや」
裕子「それがこのような結果でして……」
杏「どれどれ……」
美波「36、42、7、31、35……」
莉嘉「うわあ……」
杏「どれもひどいね……数学なんて赤点じゃん」
裕子「はい……。それで来週追試があるんですけど……」
美波「うんうん」
裕子「追試で60点以上取らないと留年って言われたんです!」
杏「……」
美波「……」
裕子「……」
杏「ユッコ」
美波「ユッコちゃん」
裕子「はい」
杏「もう一年、頑張ろうな」
美波「留年って何も悪いことじゃないと思うの。一年無駄にしたなんて思うんじゃなくて、むしろ一年多く学べるって前向きに捉えた方がいいんじゃないかな」
裕子「うわ~ん! 諦めないでください~!」
3: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:12:57 ID:iuQS
杏「でも本当にユッコが留年することは事務所にとってマイナスとは限らないと思うんだよね」
裕子「どういうことですか?」
杏「例えばユッコの留年を知った学生アイドル達がユッコみたいにならないよう勉強するようになって学力向上するとか……」
美波「反面教師系アイドル……」
莉嘉「留年アイドルって新しくない? アイドルにとって個性は武器だよ!」
杏「一応うちにはちとせのような留年してるアイドルはいるけどね。ただユッコの場合は学力的な問題だから差別化できると思うよ」
裕子「嫌ですよ! 私にはサイキックアイドルという最強の個性があります!」
杏「といっても実際問題あと一週間で60点っていうのはなあ」
裕子「サイキック一夜漬けとサイキック鉛筆転がし、追試問題の内容を予知するサイキックを鍛えて……」
杏「やる気ある?」
莉嘉「勉強しよ?」
裕子「お母さんに留年がバレたらアイドル辞めされられちゃうかもしれません……うぅ……ぐすん」
杏「ごめんて。泣かないで」
美波「……」
裕子「助けてください……なんでもしますから……」
美波「……ユッコちゃん、本当になんでもする?」
裕子「え?」
美波「本気で勉強する覚悟ある?」
裕子「は、はい! もちろんです!」
美波「それじゃあ私が勉強みてあげる」
裕子「本当ですか!? ありがとうございます!!」
美波「ただし! 一週間しか時間がない関係上、少し厳しくいくから覚悟しておくこと!」
裕子「はい!」
莉嘉「大丈夫かなあ?」
杏「うーん、ユッコしだいじゃない?」
4: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:13:56 ID:iuQS
杏(こうして美波ちゃんによる地獄の補修対策授業が始まった)
美波「じゃあ一年間のテストの問題用紙と学校の問題集を出して!」
裕子「はい! 美波先生!」
美波「まずはテストの振り返り! 問題集と照らし合わせてどこの問題がテストに出たのかチェックして!」
裕子「イエス! マム!」
美波「じゃあ特に酷かった三角関数の分野からやるね」
莉嘉「余弦、正弦、二倍角……? うへえ、難しそうな公式がいっぱい……ユッコちゃん意味分かる?」
裕子「さっぱりわかりません! 丸ごと暗記するしかありませんねっ! 逆に言えば、暗記してしまえば意味など問題ないですっ!」
美波「喝ッ!」
裕子「ぐへっ!」
美波「意味もわからず公式の丸暗記なんて言語道断! そんなことしてもいざというときに出てこないよ」
裕子「そ、そうですか……?」
美波「ただし! 今回は時間がないから丸暗記することを許可します!」
杏「許可するんかい」
美波「身体を動かしながら公式の復唱! いっち、に! さんっ、し!」
裕子「a^2 = b^2 + c^2 - 2bc cos α!」
美波「身体を動かすことで脳も活性化! 勉強と同時にダンスも覚えられる!」
裕子「一石二鳥ですね!」
杏「なんだこれ」
莉嘉「じゃあアタシみりあちゃんと遊びに行ってくるね! ユッコちゃん頑張ってっ☆」
裕子「ありがとうございます!」
5: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:14:15 ID:iuQS
テスト勉強3日目
美波「付箋貼った問題を解く! 問題を見たら解法が思い浮かぶようになるまで反復練習!」
裕子「えーっと、『ルートが自然数となる自然数を』……? 自然数ってなんですか? あ、自然の数……森?」
杏「嘘だろ……」
莉嘉「正の整数のことだよね! 中1で習ったよ!」
美波「やっぱりここで留年した方がユッコちゃんのためなんじゃ……?」
6: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:14:36 ID:iuQS
テスト勉強4日目
美波「今日の宿題! 明日までにやってきてね」
裕子「え、その、美波さん……ちょっと多いような……」
美波「留年、アイドル、活動停止」
裕子「が、がんばります!」
杏「スパルタだ……」
莉嘉「勝手にリップ使ったときのお姉ちゃんみたい……」
7: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:14:54 ID:iuQS
テスト勉強5日目
美波「小テスト作ったから解いてみて!」
裕子「わざわざありがとうございます! ……できました!」
美波「どれどれ……30点!」
莉嘉「何点満点?」
美波「……100点満点」
杏「…………まあ最初の7点と比べたらだいぶましになったんじゃない?」
8: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:15:20 ID:iuQS
杏(美波ちゃんの厳しい指導は一週間毎日続いたけど、ユッコが根を上げることはなかった)
杏(そして追試前日……)
裕子「ぜえ……はあ……で、できました……!」
美波「おつかれさま。どれどれ……」
莉嘉「どう?」
美波「95点!」
裕子「あぁ! 満点の自信がありましたのに!」
杏「いやでもすごいよ。問題みたけどテストと同じくらいの難易度だったし」
美波「これなら追試も問題ないはず。だから今日は夜更かしせずに早く寝ること。寝坊したら元も子もないからね」
裕子「はい! 本当にありがとうございました!」
9: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:16:04 ID:iuQS
次の日
裕子「いってきます!」
裕子(今日は追試の日! 無事に寝坊することもなく起きることができました! 勉強を見てくれた美波さんのためにも頑張りますよ~!)
裕子「わぎゃっ!」
おばあさん「あらまぁ、ごめんなさい。お嬢ちゃん大丈夫かい?」
裕子「だ、大丈夫です。私こそ急に飛び出してごめんなさい」
おばあさん「怪我がなくて何よりだわぁ」
裕子「いえいえ……。それにしてもすごい荷物ですね。運びましょうか?」
おばあさん「ありがとう。でもすぐそこでバスに乗るから大丈夫よぉ」
裕子「そうですか」
おばあさん「それじゃあバスも来たことだし私はこれで。さようならぁ」
裕子「さようなら~」
10: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:16:28 ID:iuQS
裕子「よし! 私も早く学校に……ってあれ?」
裕子「鍵? 誰のだろう……ってもしかしてあのおばあさんの!?」
裕子(バスは……あぁ、行っちゃいました!)
裕子(ど、どどどどうしましょう!?)
裕子(このままじゃおばあさんが……でもテストがあるし……)
裕子「……」
裕子「……サイキックテレポーテーション! うおおおおおおおおバス待てええええ!」
11: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:16:57 ID:iuQS
バス停
裕子「ぜえ……はあ……。やっと…………追いつきました……」
おばあさん「あれ? あなた……」
裕子「おばあさん……これ、落としましたよ……」
おばあさん「え……あ、家の鍵……。わざわざ走って届けに来てくれたのかい?」
裕子「はい……追いついて、よかったです……」
おばあさん「ありがとう。このままだとわたし、家に入れないところだったわぁ。何かお礼を……」
裕子「いえ、当然のことをしたまでです。それでは私は用事があるので。さらば!」
12: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:17:14 ID:iuQS
バス内
裕子(ふぅ、今の時間は……)
裕子(試験が終わるまでには間に合いそうですね。解く時間があるかは別として)
裕子(ごめんなさい、美波さん……)
13: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:17:38 ID:iuQS
学校
先生「………………」
先生(堀が来ない……)
先生(何故だ! 今日を逃したら留年なんだぞ!?)
先生(試験時間は残り15分……)
裕子「すみません! 遅れました!」
先生「!」
裕子「試験受けさせてもらえますか!?」
先生「……問題ない。ただみんなと同じ、チャイムが鳴ったら回収するぞ」
裕子「もちろんです!」
14: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:18:05 ID:iuQS
事務所
裕子「おはようございます……」
莉嘉「あ、ユッコちゃん!」
美波「おはよう、ユッコちゃん」
杏「テストどうだった?」
裕子「……」
美波「……ユッコちゃん?」
裕子「ぐすっ……うぅ……! 美波さん……!!」
裕子「ごべんなさい……ごめんなさい……!!!」
15: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:18:42 ID:iuQS
美波「そんなことがあったの……」
裕子「ぐすっ、私はおバカです……。美波さんにあんなにしてもらったのに……」
美波「謝らないでユッコちゃん」
裕子「でもぉ……」
美波「ユッコちゃんは自分の信念に従っておばあさんを助けたのでしょう? なら後悔しない。ユッコちゃんは悪くないって私たちは分かってる」
莉嘉「ユッコちゃんカッコいい!」
杏「回答用紙の六割は埋められたんでしょ? もしかしたら60点以上取れてるかもしれないじゃん」
裕子「みなさん……」
美波「終わったものは仕方ないし、気楽に結果を待ちましょう。とりあえず今日はゆっくり休んで」
裕子「はい……おつかれさまでした……」
16: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:19:05 ID:iuQS
莉嘉「行っちゃった」
杏「まったく、スプーンは曲げるくせに自分の信念は曲げないんだから……」
美波「でもそれがユッコちゃんのいいところでしょう?」
杏「まあね」
莉嘉「ユッコちゃんどうなっちゃうんだろう?」
17: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:19:42 ID:iuQS
とある家
先生「……」
先生(佐藤85点、田中70点……。簡単な問題にしたしみんな大丈夫そうだな)
先生(次は堀か……)
先生「…………」
先生(……55点)
先生(時間の関係で回答用紙の六割しか埋められてない。それを考慮するなら十分合格をあげても……)
先生(ただ足りないものは足りない。おまけしたいところだが特別扱いすると他の生徒の保護者の方から苦情がくるやも……)
18: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:20:22 ID:iuQS
『サイキックおいろけビーム!』
先生(っ! ……なんだテレビか)
おばあさん「おやおや、これはこれは……」
先生「母さん……どうしたの?」
おばあさん「このテレビに写ってる女の子……」
先生「知ってるの?」
おばあさん「今朝この子に助けてもらって……」
先生「え? この子に?」
おばあさん「ええ。わたしが道に鍵を落としたのを拾ってくれてねぇ。気づかずにバスに乗ったわたしを走って追いかけてくれたのよぉ」
おばあさん「お礼をしようと思ったんだけど、何やら急いでいたようででねぇ」
先生「そう、なんだ……」
おばあさん「かわいい子だとは思ってたけど、まさか芸能人だったとはねえ。ふぁんれたーとやらを送らないと」
先生「……母さん、ファンレター書くなら俺が渡しておくよ」
おばあさん「おやそうかい。ありがとうねぇ」
19: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/01(火) 21:20:57 ID:iuQS
一週間後、事務所
美波「それじゃあユッコちゃんの進級を祝して、乾杯!」
裕子「乾杯!」
杏「乾杯!」
莉嘉「カンパーイ!」
莉嘉「プハー☆ ひと仕事終えたあとの一杯は最高だね☆」
杏「ただの缶ジュースだけどね」
美波「ユッコちゃん本当におめでとうね」
裕子「ありがとうございます! 美波さんには本当に感謝してもしきれません!」
莉嘉「それにしても一時はどうなるかと思ったよね~」
裕子「はい。点数は足りませんでしたけど、追加のレポート課題を出したらおまけしてくれました!」
杏「いわゆる救済措置ってやつだね」
裕子「何はともあれ一件落着……」prr
21: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/02(水) 11:08:49 ID:a9Kx
莉嘉「ユッコちゃん電話鳴ってるよ」
裕子「はいはい、皆さん失礼しますね……ハイもしもし、あ、お母さん?」
裕子「うんうん、そう! 無事に進級できたよー」
杏「タメ語のユッコなんか新鮮だな」
莉嘉「だねー」
裕子「うん……えっ、成績表届いた?」
杏「……」
美波「……」
莉嘉「……」
裕子「じゅ、塾!? い、嫌だ! 塾行きたくない!」
22: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/02(水) 11:09:57 ID:a9Kx
杏「なんか雲行きが……」
裕子「これからは真面目に勉強するから……」
美波「ユッコちゃん、電話変わってくれる?」
裕子「美波さん? は、はいどうぞ」
美波「ありがとう。……もしもし、すみません。お電話変わりました新田美波と申します……」
莉嘉「美波ちゃんどうするつもりだろう?」
美波「……はい、はい! ですので私が責任持って勉強を見ますので……」
美波「……はい! ありがとうございます! それでは裕子ちゃんに変わりますね。……ユッコちゃん」
裕子「あ、ありがとうございます……もしもし、お母さん?」
23: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/02(水) 11:10:22 ID:a9Kx
莉嘉「なに話してたの?」
美波「ユッコちゃんのお母様がユッコちゃんを塾に通わせようとしてたんだけど、私が勉強を見るから次のテストまで待っててほしいって頼んだの」
杏「それで了承は取れたの?」
美波「ええ。追試のときも私が教えたって言ったら喜んでオッケーしてくれたわ」
莉嘉「美波ちゃんすごーい!」
24: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/02(水) 11:12:25 ID:a9Kx
裕子「美波さんありがとうございました」
杏「あ、戻ってきた。お母さんなんて?」
裕子「美波さんに迷惑をかけないようにって言われました」
莉嘉「とりあえずは一件落着だね☆」
裕子「そうですね。……それじゃあ気を取り直してもう一度乾杯しましょう! 楽しい春休みが始まりますよー!」
25: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/02(水) 11:12:56 ID:a9Kx
美波「その前にユッコちゃん。はいこれ」
裕子「ん? なんですかこのプリント?」
美波「春休みの学習計画書。お母様に見せて大丈夫か確認しておいて」
杏「どれどれ……おぅふ」
莉嘉「春休みなのにこんなに勉強時間が……」
美波「次のテストまでに全科目の総復習をやるからね」
26: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/02(水) 11:13:28 ID:a9Kx
裕子「あ、あば、あばば……」
杏「ユッコが壊れた」
美波「適度にお休みの日を作ったと思うけど……これからもよろしくね、ユッコちゃん。追試のときよりも厳しく教えるから覚悟しておいてね」
裕子「そ、そぉんなぁ~!」
杏「……勉強しないとああなるよ」
莉嘉「……帰ったら勉強しようかな」
美波「とりあえず今日は追試の間違え直しを……ってあっ、逃げるなー!」
裕子「これからはまじめに勉強するので勘弁してください~っ!」
27: ◆r5XXOuQGNQ 22/11/02(水) 11:29:46 ID:a9Kx
終わりです。ありがとうございました
少しでもユッコに投票してくださる人が増えますように
堀裕子「留年ですか」