1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 18:15:25.13 ID:avHV4rf30.net
――――
東郷「今日も来てくれたのね、友奈ちゃん」
友奈「うん……できるだけたくさん、二人の顔を見ておきたくて」
東郷「ありがとう……嬉しい」
友奈「具合はどう?」
東郷「相変わらず不便だけど……贅沢は言えないわ」
友奈「そっか……夏凜ちゃんはどこか変わった所とか、あった?」
東郷「……何も……」
友奈「…………そっか……」
ガチャ……
友奈「あ、看護婦さん……いえ、私が食べさせてあげますので……
はい、二人とも……大丈夫です」
2: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 18:28:41.68 ID:avHV4rf30.net
バタン……
友奈「東郷さん、ベッド起こすね」
東郷「私より先に夏凜ちゃんに……」
友奈「……東郷さんがそう言うなら……」
友奈ちゃんは隣のベッドに食事を運び
静かに横になっている夏凜ちゃんの頭に
そっと手を置きました。
夏凜「友奈? 今日も来てくれたのね……ありがと」
友奈ちゃんは、彼女とコミュニケーションを取るために
話かける合図として、まず頭を撫でてあげるのです。
そうすると、夏凜ちゃんはすぐに友奈ちゃんの名前を呼ぶのです。
私は最後にバーテックスと戦った時に、散華して両腕の機能を失いました。
私もまた、夏凜ちゃんと一緒に大赦の施設に祀られています。
四肢の機能を完全に失った私は、自力ではベッドから降りることさえできません。
そして盲ろうの夏凜ちゃんは、その肌に触れることでしか会話ができないのです。
同じ部屋で、隣同士のベッドにいるのに
私と夏凜ちゃんは意思の疎通が一切できませんでした。
友奈『ご は ん だ よ』
夏凜「あ、ありがと……だけど友奈、わざわざあんたが食べさせてくれなくったっていいのに」
友奈『き に し な い で』
夏凜ちゃんがあんな風になってしまったのは、すべて私のせい。
許してもらえるとは思っていないけれども、
こうして彼女の横で毎日、身動きも取れず生かされ続けているのは
その罪に合うだけの報い、拷問のような罰でもありました。
友奈『ま だ た べ る ?』
夏凜「わたしはもう十分よ。東郷はまだ食べてないんでしょ? 行ってやりなさい」
友奈「…………」
半分以上残ったお皿を脇に置いて、
友奈ちゃんは甲斐甲斐しく私の食事の準備をしはじめました。
友奈「はい、東郷さん。あーん」
東郷「あ、あーん……」パクッ
もぐもぐ
友奈「おいしい?」
東郷「……うん」
友奈「そっかぁ。本当は私も味見とかしたいんだけど……ね」アハハ
東郷「そっちの具合……風先輩の調子はどう?」
友奈「……まだ樹ちゃんから離れられないみたい」
東郷「そう……時間がかかりそうね」
友奈「樹ちゃんも、すごく辛そうで……で、でも!」
友奈「風先輩が元気になったら、またみんなで勇者部の活動しよう!ね?」
東郷「……うん、そうだね」
友奈ちゃんは、あの時私たちと一緒に満開し
散華しましたが、欠損の部位は軽度で済みました。
だからこうやって、大赦で祀られている私たちの世話をしに来れるのです。
……ただ、風先輩は、その時の散華で
あろうことか無事だった方の目の視力を持っていかれてしまいました。
樹ちゃんは、友奈ちゃんと同じように軽度で済んだけれど、
風先輩はもう妹の顔を見ることも、声を聞くことも出来なくなってしまったのです。
その事実が、風先輩の心を壊してしまいました。
友奈「今日もね、先輩の家に様子を見に行ったんだ」
友奈「玄関を開けると、薄暗くて、埃だらけで……」
友奈「先輩はその冷たい床の上にぺたんって座って、膝の上に樹ちゃんを抱いてじっとしてるの」
友奈「私が声をかけても、返事もしなくて」
友奈「樹ちゃんは反応してくれるけど、二人ともげっそり痩せ細ってて……」
友奈「風先輩を刺激すると、暴れちゃうから……ろくに食事も取ってないんだよ」
友奈「私にはどうすることもできなくて……」
友奈「どうしようも……なくて……」
東郷「友奈ちゃんは何も悪くない。悪いのは私……」
友奈「そんなことない!」
東郷「……ごめんなさい……何度謝っても済むことじゃない、けど……」
東郷「夏凜ちゃんにも、それから友奈ちゃんも……ごめんなさい……」
友奈「東郷さん……」
――友奈ちゃんは後片付けや掃除をしたあと、帰りました。
部屋には、私と、夏凜ちゃんだけが残されました。
この静寂にも、もう慣れてしまいましたが
ふと横にいる夏凜ちゃんの事を思うと
自責の念に押しつぶされそうになります。
彼女の意識の中には、どんな恐ろしい世界が広がっているのでしょう。
真っ暗で静かな空間に、自分という存在だけがぽつねんと漂っているのです。
それは一体どれほどの苦しみなのでしょう。
私は、その苦しみを理解することすらできない。
いっそ大声で泣き叫んで、彼女に謝ることができたら、どんなに良かっただろう。
その言葉すら、彼女には届かないのです。
夏凜「……ねえ、東郷」
東郷「!」
夏凜「そこにいるんでしょ?」
東郷「夏凜ちゃん……?」
夏凜ちゃんは時々、独り言をぶつぶつと呟くことがありました。
けれど私に向かって、私の名前を呼んだのはここに来て初めてでした。
東郷「い、居ます! 私ならここに!」
夏凜「…………」
東郷「っ……!」
私が声を張り上げても、彼女には聞こえない。
悔しさで涙が溢れそうでした。
夏凜「……私ね、あんたを恨んだりなんてしてないから」
夏凜「私たちのことを助けたいって思って、あんな事をしたのよね」
夏凜「その気持ち、私にも分かる……」
夏凜「どっちにしろ、あのままじゃ遅かれ早かれこうなることは確かだったし……」
夏凜「……むしろ感謝してるのよ」
夏凜「私が勇者部のみんなの役に立ったこと」
夏凜「私が勇者部のみんなを守れたこと」
夏凜「私に居場所をくれたこと」
夏凜「あんたたちのおかげで気付けたの」
夏凜「……ありがとうって」
夏凜「ただそれだけ」
次の日
友奈「……東郷さんから呼び出すなんて、珍しいね」
東郷「ごめんね友奈ちゃん。ちょっとお願いしたいことがあるの」
友奈「お願い? なに?」
東郷「…………」
――私は、彼女に謝らなくちゃいけない。
そのためなら、手段は選ばない――
東郷「……お願い、できるかしら」
友奈「……うん……分かったよ」
東郷「ありがとう……それから、ごめんなさい」
友奈「でも……東郷さんはそれでいいの?」
東郷「もう決めたことだから……」
友奈「……分かった。じゃあひとっ走り、行ってくるね!」
私には、まだやらなくちゃいけないことがある。
確かに身体はもう元にはもどりません。
けれど、そのために勇者部がバラバラになるなんて
そんなのは間違っている。
……バタン!
友奈「東郷さん! 持って来たよ! 急いで!」
東郷「友奈ちゃん!」
友奈「夏凜ちゃんの分も……!」
東郷「彼女は後よ。まずは私が……」
東郷「この祭壇を壊す!」
私は変身し、精霊の力を借りて壁を破壊しました。
夏凜「!?」
友奈「夏凜ちゃん! しっかり掴まってて!」
大赦の追っ手がこの部屋に到着する前に、
私は友奈ちゃんと夏凜ちゃんを抱いて
建物から飛び出しました。
友奈「あはは……またやっちゃったね、東郷さん」
夏凜「な、なにが起きたの?」
友奈『安 心 し て』
友奈『み ん な の と こ ろ』
友奈『勇 者 部 へ』
――1ヶ月後
樹【友奈さん、これ】
友奈「ありがとね、樹ちゃん」
樹【お姉ちゃんほど上手くできたかわからないけど】カキカキ
樹【東郷さんたち、美味しく食べてくれるかな】カキカキ
風「樹……! 樹はどこ…!?」フラフラ
樹「…………!」
友奈「あ、樹ちゃんは風先輩をお願い」
樹「……」コクコク
友奈「東郷さーん、お昼ご飯出来たよー」
東郷「はーい」
夏凜「…………」
東郷「夏凜ちゃん、お昼だって」サワ
夏凜「く、くすぐったい……」
東郷「あ、ご、ごめんなさい……友奈ちゃん、お願い」
友奈『お ひ る だ よ』
夏凜「はいはい……っていうか東郷、あんた髪の毛切ったら?
私に触るのはいいけど、くすぐったいのよ、それ」
東郷「それもそうね……」
夏凜「まあ切らなくても、東郷の場合後ろで束ねれば……んむっ?!」
東郷「んっ……ちゅ」
夏凜「……はぁ……もう、いくら他に方法がないからって
キスで会話するってどうなのよホント……」
友奈(なんかもう見てるこっちが恥ずかしい……)
……私たちは、大赦を抜け出したあと
勇者部の部室に逃げ込みました。
すぐに大赦の人たちに見つかってしまったけれど、
友奈ちゃんが抑えてくれているあいだに、
私はなんとか夏凜ちゃんに意思を伝えたくて
ある方法を試したのです。
夏凜ちゃんは、最初はすごくびっくりした様子でしたが、
事情が分かると、すぐに受け入れてくれました。
私は、その口の艶かしい動き、濡れた舌の感触を通して
やっと、彼女に自分の存在を伝えることができたのです。
大赦の人たちは、不思議と簡単に諦めてくれました。
私たちを捕まえることも、咎めることもしなかったのです。
さらに驚くべきことに、風先輩の家の近くに、私たちだけの部屋を用意してくれました。
後で聞いた話なのですが、どうやら乃木園子の計らいによるものらしいのです。
こうして私たちは、しばらくの間
勇者部のみんなと一緒にいることを許されました。
私と夏凜ちゃんは共通のベッドを使っています。
私から話しかける時は、上体を起こして
彼女のほっぺたに優しくキスをします。
そうすると彼女は私の名前を呼んで、こちらを向いてくれます。
彼女の言葉に返事をする場合は、キスの時の口の動きで伝えます。
……たまに、意味もなくキスを求めあうこともありました。
夏凜ちゃんが私の傍にいてくれることが、なんだかとても幸せに思えるのです。
夏凜「もう東郷のキスの味、覚えちゃったわね」
そんな事を言われると、私は、
彼女と繋がっていられる喜びのままにキスをして、
込み上げる愛おしさを一生懸命伝えるのでした。
おはり
元スレ
バタン……
友奈「東郷さん、ベッド起こすね」
東郷「私より先に夏凜ちゃんに……」
友奈「……東郷さんがそう言うなら……」
友奈ちゃんは隣のベッドに食事を運び
静かに横になっている夏凜ちゃんの頭に
そっと手を置きました。
夏凜「友奈? 今日も来てくれたのね……ありがと」
友奈ちゃんは、彼女とコミュニケーションを取るために
話かける合図として、まず頭を撫でてあげるのです。
そうすると、夏凜ちゃんはすぐに友奈ちゃんの名前を呼ぶのです。
私は最後にバーテックスと戦った時に、散華して両腕の機能を失いました。
私もまた、夏凜ちゃんと一緒に大赦の施設に祀られています。
4: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 18:40:22.85 ID:avHV4rf30.net
四肢の機能を完全に失った私は、自力ではベッドから降りることさえできません。
そして盲ろうの夏凜ちゃんは、その肌に触れることでしか会話ができないのです。
同じ部屋で、隣同士のベッドにいるのに
私と夏凜ちゃんは意思の疎通が一切できませんでした。
友奈『ご は ん だ よ』
夏凜「あ、ありがと……だけど友奈、わざわざあんたが食べさせてくれなくったっていいのに」
友奈『き に し な い で』
夏凜ちゃんがあんな風になってしまったのは、すべて私のせい。
許してもらえるとは思っていないけれども、
こうして彼女の横で毎日、身動きも取れず生かされ続けているのは
その罪に合うだけの報い、拷問のような罰でもありました。
5: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 18:50:55.85 ID:avHV4rf30.net
友奈『ま だ た べ る ?』
夏凜「わたしはもう十分よ。東郷はまだ食べてないんでしょ? 行ってやりなさい」
友奈「…………」
半分以上残ったお皿を脇に置いて、
友奈ちゃんは甲斐甲斐しく私の食事の準備をしはじめました。
友奈「はい、東郷さん。あーん」
東郷「あ、あーん……」パクッ
もぐもぐ
友奈「おいしい?」
東郷「……うん」
友奈「そっかぁ。本当は私も味見とかしたいんだけど……ね」アハハ
7: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 19:03:33.31 ID:avHV4rf30.net
東郷「そっちの具合……風先輩の調子はどう?」
友奈「……まだ樹ちゃんから離れられないみたい」
東郷「そう……時間がかかりそうね」
友奈「樹ちゃんも、すごく辛そうで……で、でも!」
友奈「風先輩が元気になったら、またみんなで勇者部の活動しよう!ね?」
東郷「……うん、そうだね」
友奈ちゃんは、あの時私たちと一緒に満開し
散華しましたが、欠損の部位は軽度で済みました。
だからこうやって、大赦で祀られている私たちの世話をしに来れるのです。
……ただ、風先輩は、その時の散華で
あろうことか無事だった方の目の視力を持っていかれてしまいました。
樹ちゃんは、友奈ちゃんと同じように軽度で済んだけれど、
風先輩はもう妹の顔を見ることも、声を聞くことも出来なくなってしまったのです。
その事実が、風先輩の心を壊してしまいました。
9: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 19:19:53.25 ID:avHV4rf30.net
友奈「今日もね、先輩の家に様子を見に行ったんだ」
友奈「玄関を開けると、薄暗くて、埃だらけで……」
友奈「先輩はその冷たい床の上にぺたんって座って、膝の上に樹ちゃんを抱いてじっとしてるの」
友奈「私が声をかけても、返事もしなくて」
友奈「樹ちゃんは反応してくれるけど、二人ともげっそり痩せ細ってて……」
友奈「風先輩を刺激すると、暴れちゃうから……ろくに食事も取ってないんだよ」
友奈「私にはどうすることもできなくて……」
友奈「どうしようも……なくて……」
東郷「友奈ちゃんは何も悪くない。悪いのは私……」
友奈「そんなことない!」
東郷「……ごめんなさい……何度謝っても済むことじゃない、けど……」
東郷「夏凜ちゃんにも、それから友奈ちゃんも……ごめんなさい……」
友奈「東郷さん……」
15: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 19:40:20.26 ID:avHV4rf30.net
――友奈ちゃんは後片付けや掃除をしたあと、帰りました。
部屋には、私と、夏凜ちゃんだけが残されました。
この静寂にも、もう慣れてしまいましたが
ふと横にいる夏凜ちゃんの事を思うと
自責の念に押しつぶされそうになります。
彼女の意識の中には、どんな恐ろしい世界が広がっているのでしょう。
真っ暗で静かな空間に、自分という存在だけがぽつねんと漂っているのです。
それは一体どれほどの苦しみなのでしょう。
私は、その苦しみを理解することすらできない。
いっそ大声で泣き叫んで、彼女に謝ることができたら、どんなに良かっただろう。
その言葉すら、彼女には届かないのです。
17: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 19:47:13.48 ID:avHV4rf30.net
夏凜「……ねえ、東郷」
東郷「!」
夏凜「そこにいるんでしょ?」
東郷「夏凜ちゃん……?」
夏凜ちゃんは時々、独り言をぶつぶつと呟くことがありました。
けれど私に向かって、私の名前を呼んだのはここに来て初めてでした。
東郷「い、居ます! 私ならここに!」
夏凜「…………」
東郷「っ……!」
私が声を張り上げても、彼女には聞こえない。
悔しさで涙が溢れそうでした。
19: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 20:01:23.34 ID:avHV4rf30.net
夏凜「……私ね、あんたを恨んだりなんてしてないから」
夏凜「私たちのことを助けたいって思って、あんな事をしたのよね」
夏凜「その気持ち、私にも分かる……」
夏凜「どっちにしろ、あのままじゃ遅かれ早かれこうなることは確かだったし……」
夏凜「……むしろ感謝してるのよ」
夏凜「私が勇者部のみんなの役に立ったこと」
夏凜「私が勇者部のみんなを守れたこと」
夏凜「私に居場所をくれたこと」
夏凜「あんたたちのおかげで気付けたの」
夏凜「……ありがとうって」
夏凜「ただそれだけ」
21: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 20:11:42.17 ID:avHV4rf30.net
次の日
友奈「……東郷さんから呼び出すなんて、珍しいね」
東郷「ごめんね友奈ちゃん。ちょっとお願いしたいことがあるの」
友奈「お願い? なに?」
東郷「…………」
――私は、彼女に謝らなくちゃいけない。
そのためなら、手段は選ばない――
東郷「……お願い、できるかしら」
友奈「……うん……分かったよ」
東郷「ありがとう……それから、ごめんなさい」
友奈「でも……東郷さんはそれでいいの?」
東郷「もう決めたことだから……」
友奈「……分かった。じゃあひとっ走り、行ってくるね!」
22: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 20:20:43.02 ID:avHV4rf30.net
私には、まだやらなくちゃいけないことがある。
確かに身体はもう元にはもどりません。
けれど、そのために勇者部がバラバラになるなんて
そんなのは間違っている。
……バタン!
友奈「東郷さん! 持って来たよ! 急いで!」
東郷「友奈ちゃん!」
友奈「夏凜ちゃんの分も……!」
東郷「彼女は後よ。まずは私が……」
東郷「この祭壇を壊す!」
23: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 20:27:16.15 ID:avHV4rf30.net
私は変身し、精霊の力を借りて壁を破壊しました。
夏凜「!?」
友奈「夏凜ちゃん! しっかり掴まってて!」
大赦の追っ手がこの部屋に到着する前に、
私は友奈ちゃんと夏凜ちゃんを抱いて
建物から飛び出しました。
友奈「あはは……またやっちゃったね、東郷さん」
夏凜「な、なにが起きたの?」
友奈『安 心 し て』
友奈『み ん な の と こ ろ』
友奈『勇 者 部 へ』
27: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 20:37:33.25 ID:avHV4rf30.net
――1ヶ月後
樹【友奈さん、これ】
友奈「ありがとね、樹ちゃん」
樹【お姉ちゃんほど上手くできたかわからないけど】カキカキ
樹【東郷さんたち、美味しく食べてくれるかな】カキカキ
風「樹……! 樹はどこ…!?」フラフラ
樹「…………!」
友奈「あ、樹ちゃんは風先輩をお願い」
樹「……」コクコク
友奈「東郷さーん、お昼ご飯出来たよー」
29: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 20:49:28.15 ID:avHV4rf30.net
東郷「はーい」
夏凜「…………」
東郷「夏凜ちゃん、お昼だって」サワ
夏凜「く、くすぐったい……」
東郷「あ、ご、ごめんなさい……友奈ちゃん、お願い」
友奈『お ひ る だ よ』
夏凜「はいはい……っていうか東郷、あんた髪の毛切ったら?
私に触るのはいいけど、くすぐったいのよ、それ」
東郷「それもそうね……」
夏凜「まあ切らなくても、東郷の場合後ろで束ねれば……んむっ?!」
東郷「んっ……ちゅ」
夏凜「……はぁ……もう、いくら他に方法がないからって
キスで会話するってどうなのよホント……」
友奈(なんかもう見てるこっちが恥ずかしい……)
31: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 21:02:39.94 ID:avHV4rf30.net
……私たちは、大赦を抜け出したあと
勇者部の部室に逃げ込みました。
すぐに大赦の人たちに見つかってしまったけれど、
友奈ちゃんが抑えてくれているあいだに、
私はなんとか夏凜ちゃんに意思を伝えたくて
ある方法を試したのです。
夏凜ちゃんは、最初はすごくびっくりした様子でしたが、
事情が分かると、すぐに受け入れてくれました。
私は、その口の艶かしい動き、濡れた舌の感触を通して
やっと、彼女に自分の存在を伝えることができたのです。
33: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 21:14:43.02 ID:avHV4rf30.net
大赦の人たちは、不思議と簡単に諦めてくれました。
私たちを捕まえることも、咎めることもしなかったのです。
さらに驚くべきことに、風先輩の家の近くに、私たちだけの部屋を用意してくれました。
後で聞いた話なのですが、どうやら乃木園子の計らいによるものらしいのです。
こうして私たちは、しばらくの間
勇者部のみんなと一緒にいることを許されました。
私と夏凜ちゃんは共通のベッドを使っています。
私から話しかける時は、上体を起こして
彼女のほっぺたに優しくキスをします。
そうすると彼女は私の名前を呼んで、こちらを向いてくれます。
彼女の言葉に返事をする場合は、キスの時の口の動きで伝えます。
34: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/23(火) 21:23:17.13 ID:avHV4rf30.net
……たまに、意味もなくキスを求めあうこともありました。
夏凜ちゃんが私の傍にいてくれることが、なんだかとても幸せに思えるのです。
夏凜「もう東郷のキスの味、覚えちゃったわね」
そんな事を言われると、私は、
彼女と繋がっていられる喜びのままにキスをして、
込み上げる愛おしさを一生懸命伝えるのでした。
おはり
東郷「夏凜ちゃん、友奈ちゃん……ごめんなさい」