1: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 17:59:34.81 ID:T5gnhzagNIKU.net

時系列的には最終回で友奈復活するまで
東郷×夏凜でちょっと長め

『後悔』

【決戦1週間後 勇者部部室】

夏凜「来たわよ――って、今日は東郷1人?」ガラッ

東郷「ええ。風先輩は野球部の応援。樹ちゃんは音楽室で声のリハビリをするって」

夏凜「そう……」

東郷「……」

夏凜「……友奈がいないと、なんだか部室も静かね」ボソッ

東郷「――え?」

夏凜「ねぇ東郷」

東郷「……何?夏凜ちゃん」

夏凜「友奈、まだ治らないのよね」

東郷「……そう、みたいね」



2: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:00:43.04 ID:T5gnhzagNIKU.net

夏凜「友奈の体調が治らない理由って、分かったの?」

東郷「それが、大赦も今回ばかりは何が起きたのかわからないみたいで……獅子座型の御霊と接触したのが原因らしいことはわかるのだけど……」

夏凜「……つまり、あの戦いさえなければ友奈は無事だった」

東郷「!」ビクッ

夏凜「東郷があの時壁を壊さなければ。東郷が獅子座を誘導していなければ。友奈は助かった。つまりこれは、全部東郷のせい……」

東郷「か、夏凜ちゃん……?」




夏凜「……なんて、思ってるんじゃないでしょうね」

東郷「え?」ポカ-ン

夏凜「やっぱり……馬鹿ね。本当に馬鹿」



4: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:01:47.38 ID:T5gnhzagNIKU.net

夏凜「東郷に外の真実を見せてもらったあと、私と友奈は乙女座に吹き飛ばされたじゃない?」

夏凜「そこで友奈、『友達失格だ』って言ったのよ」

東郷「友達失格……?」

夏凜「あいつらしくもなく、ボロボロ涙を流しながら。東郷が苦しんでいることにも、悩んでいることにも気付きながら、何もできなかった自分を悔やんでね」

東郷「友奈ちゃんが!?」

夏凜「……私はその後、一時的にとはいえ視力と聴力を失って、周りで何が起きてるのか全く把握出来なかった」

夏凜「それでも、友奈が何を考えて、何をしたのかははっきりと想像できる」

夏凜「あいつは、東郷を倒したいわけでも、ただ止めたかったわけでもない。東郷を、あんたを救いたかったのよ」

東郷「私を……救う?」

夏凜「そう。世界の真実を知って、そのショックを1人で抱え込んで、みんなを巻き込んで心中しようとするほど参っちゃってたあんたをね」



6: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:02:29.39 ID:T5gnhzagNIKU.net

東郷「友奈ちゃんが、私を救うために……でも、それでもやっぱり私のせいじゃない!友奈ちゃんが救う以前に、私が、私があんなことしなければ――」ポロポロ

夏凜「そこが馬鹿だって言ってんのよ!」ダンッ

東郷「――ッ!」ビクッ

夏凜「もしここに友奈が居たとして、あんたのことを責めると思う?友奈はあんたを責めるためじゃなく、救うために戦ったのよ!?」

夏凜「それなのに、当のあんたが後悔しまくって、そんな悲しそうな顔してちゃ、意味ないじゃない!」

東郷「で、でも……」

夏凜「でもじゃない!少しでも友奈のことを想ってるなら、黙って救われなさいよ!」



7: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:03:16.92 ID:T5gnhzagNIKU.net

東郷「……いいの?夏凜ちゃん。私、救われちゃっても、許されちゃってもいいのかな……?」

夏凜「……あんたのしたことは、確に許されないことかもしれない。けど、少なくとも、友奈や私達は、みんなあんたのことなんてとっくに赦してるわよ」

東郷「夏凜ちゃん……」

夏凜「それでもまだ気になるなら、いつでも相談しなさい」

夏凜「『悩んだら相談』でしょ?」

東郷「……そうね。ありがとう夏凜ちゃん。少しすっきりした」

夏凜「分かればいいのよ」

『後悔』おわり



8: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:03:58.11 ID:T5gnhzagNIKU.net

『料理』

【数日後 某スーパーマーケット】

夏凜「あれ?東郷?」

東郷「あら、こんにちは夏凜ちゃん」

夏凜「こんなところで会うとは奇遇ね。夕食の買い出しか何か?」

東郷「ええ、脚のリハビリも兼ねて買い物に……って夏凜ちゃん、カゴに山盛りになったそれは何……?」

夏凜「? 何って、煮干しとサプリよ?」ゴチャゴチャ

東郷「まさかとは思うけど、もしかしてそれが今夜の夕食なんじゃ……」ジィー

夏凜「そ、そんなわけないでしょ!猫じゃあるまいし!ちゃんと他にも食べるわよ!///」カァァ



10: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:04:58.15 ID:T5gnhzagNIKU.net

東郷「よかった……てっきり夏凜ちゃんは煮干しだけで生きてるのかと思っちゃったわ」

夏凜「あんた、遠回しに私のこと馬鹿にしてない?――っと、あったあった」ガサガサ

東郷「ごめんごめん。そんなつもりなかったのよ夏凜ちゃ、ん……え」

東郷「夏凜ちゃん。今カゴに追加したそれって……」

夏凜「え?えーっと、お惣菜でしょ?弁当でしょ?それから冷凍食品と……」ゴソゴソ

東郷「夏凜ちゃん」ガシッ

夏凜「な、何よ(顔近っ!)」

東郷「今から夏凜ちゃんの家にご飯を作りに行きます」

夏凜「へ?え、ちょっと待って!?」

東郷「有無は言わせない」ズルズル

夏凜「わかった!わかったから引きずらないで!一旦離して!」ズルズル



9: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:04:53.76 ID:9UEh4hEPNIKU.net

短編集?



11: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:06:14.27 ID:T5gnhzagNIKU.net

>>9
一応繋がってるけど短編集かも

【夏凜自宅:キッチン】

東郷「というわけで、夏凜ちゃんの自宅にやってきました」ジャーン

夏凜「それ誰に向かって言ってるのよ」

東郷「細かいことは気にしたら負けよ。それより、今から肉じゃがと味噌汁を作ろうと思うの」

夏凜「おお、何だかそれっぽいわね。あれ?東郷って料理得意だっけ?」

東郷「昔から和食が好きでよく作ってたから、ね……それじゃ、早速始めるわよ。集中してね」

夏凜「は、はい!」

東郷(まあ、今まで料理をしなかったとはいえ、夏凜ちゃんはそこまで不器用でもないはずだし、心配しなくても大丈夫そうね)



12: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:07:11.11 ID:T5gnhzagNIKU.net

―――――――――――――――――

東郷「夏凜ちゃん」

夏凜「はい」

東郷「私は肉じゃがを作ると言いました」

夏凜「はい」

東郷「そして私は『ジャガイモを切って』と言いました」

夏凜「……はい」

東郷「それでなんで、こんなに小さく切っちゃうの?」ズーン

夏凜「ご、こめん。包丁持って切り始めたら気持ちよくなってきて、そのまま切ってたらこんなサイズに……」アセアセ

東郷「親指の爪より小さいじゃない……これじゃ煮崩れるとかそういう問題以前に、肉じゃがという料理が成立しないわ……」ドンヨリ

夏凜「し、仕方ないじゃない、まだ右手がうまく動かないんだから……」アセアセ

東郷「それなら普通『力が入らなくて全く切れない』とかでしょ?なんで左手だけでこんな精密な立方体が作れるのよ……」

夏凜「え、えーっと!そうよ味噌汁!あれなら失敗しないはず!あっちを仕上げちゃいましょう!」

東郷「夏凜ちゃん、『フラグ』って知ってる?」

夏凜「?何よそれ?」



13: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:08:23.10 ID:T5gnhzagNIKU.net

―――――――――――――――――――

夏凜「もぐもぐ♪」ボリボリ

東郷「――夏凜ちゃん?」ガチャ

夏凜「ふぇっ!?」ギクッ

東郷「私、足りない味噌を買いに行く前に『ちょうど煮干しもあるし、出汁をとっておいて』とお願いしたのだけど……」ジト-

東郷「私が買い物している間、何をしてたの?」ニッコリ

夏凜「え、えええと。私はね?煮干しがちゃんと使えるかどうか試そうと」

東郷「食べて?」

夏凜「いや、ほら、骨が喉につっかえないかテストを」

東郷「出汁に骨は関係ないわ」

夏凜「なんていうか、その、鮮度が落ちてるかもしれないし」

東郷「それ、さっき買ったばっかりよね?」

夏凜「くっ」

東郷「いや『くっ』じゃないでしょ『くっ』じゃ」



14: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:08:37.20 ID:M/E34NA6NIKU.net

百合ックスはありますか?



15: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:09:37.32 ID:T5gnhzagNIKU.net

>>14
それはない……

――――――――――――――――――――――

東郷「気を取直して、お味噌汁を作りましょう」

夏凜「はい……(´・ω・`)」ショボン←煮干しを没収された

東郷「まずさっきとるはずだった出汁だけど……そもそも出汁のとり方知ってた?」

夏凜「いや、それが全く……」プィー

東郷(今まであれだけ煮干しを買っておきながら、食べる以外の方法では一度も使ってないのね……)ズーン

東郷「まず、煮干しの袋を持って」←煮干しを手渡す

夏凜「煮干しを」ガサッ

東郷「適量水に入れてみて」

夏凜「水に」ドッバァ

東郷「ちょっと待って」



16: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:10:41.47 ID:T5gnhzagNIKU.net

夏凜「何よ!」←東郷さんに頭を叩かれた

東郷「あんなに入れてどうするつもりだったの?私たちが作るのは煮干し鍋じゃないのよ?」

夏凜「いや、煮干しは美味しいし完全食だし。入れるなら沢山入れた方がいいかと……」

東郷「"適量"入れればいいの。夏凜ちゃんは少し後ろで見ててくれる?」ヤレヤレ

夏凜「わかったわよ……」シュン

東郷「で、こうやって弱火で煮て……」コトコト

夏凜(あれ……なんか、東郷の後ろ姿、見てると安心する……)

東郷「沸騰させるとダメなの。だから火加減に気をつけて……」コトコト

夏凜(……そうか。これ、イメージの中のお母さんそのままなんだ)



17: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:11:25.24 ID:T5gnhzagNIKU.net

東郷「本当は、一晩水につけるといいんだけどね?」

夏凜(お母さん、か……)

東郷「夏凜ちゃん、聞いてる?」ズイッ

夏凜「わっ!聞いてる!聞いてるから離れて!///」

東郷「大丈夫?なんだか顔も赤いけど」

夏凜「な、なんでもないわ。続き、早く作りましょう!」

夏凜(……いちいち顔が近いのよ!)



18: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:12:03.22 ID:T5gnhzagNIKU.net

――――――――――――――――――――

東郷「完成!」

夏凜「よ、ようやく終わったのね……」

東郷「お疲れ様」

東郷「でもまさか、味噌汁を作るのに3回も作り直しすることになるとは思わなかったわ」

夏凜「わ、悪かったわね!不器用で!///」カァァ

東郷「味噌汁が紫色になるのは、不器用とかそういう問題じゃないと思うんだけど……」

夏凜「あーもう!いいから食べるわよ!」



19: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:12:54.57 ID:T5gnhzagNIKU.net

東郷「どう?夏凜ちゃん。お味は」

夏凜「美味しい……!」パァァ

東郷「それは良かった」クスクス

夏凜「味噌汁なんて、まともに飲んだのいつぶりかしら。ただご飯と味噌汁食べてるだけなのに、すごく美味しい……」モグモグ

東郷「毎日買った弁当ばかり食べてるからよ。めんどくさいのはわかるけど、ちゃんと栄養も考えなきゃダメよ?」

夏凜「栄養ならサプリで補ってるし……」

東郷「ちゃんとご飯で補いなさい」ビシッ

夏凜「わ、わかったわよ……」

東郷「わかればよろしい」



21: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:14:04.72 ID:T5gnhzagNIKU.net

東郷「夏凜ちゃん、おかわりはいる?まだご飯あるけど」

夏凜「……」ジィー

東郷「どうかしたの?」

夏凜「いや、旅館でも思ったけど、東郷って本当にお母さんよね」ジィー

東郷「えっ?」

夏凜「しっかりしてるし、料理も出来るし、マナーも守れるし……正直、見ていて劣等感が湧いてくるくらいよ」

東郷「そ、そうかしら……///」テレテレ

夏凜「うん……私、自分のお母さんの事ほとんど知らないけど、自分にもしお母さんがいたら、こんな感じなんだろうなーって」

東郷「夏凜ちゃん……」

夏凜「小さい頃から勇者の訓練ばかりさせられて、家族といえば大赦にいる兄くらいにしか会えなかったからね……ずっと1人暮らしで、家事の仕方も良くわからなくて……」

夏凜「だから味噌汁もほとんど飲んだことなくて。でもなんか、『おふくろの味』って、こういうものを指すのかなって思ってさ」



22: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:14:54.49 ID:T5gnhzagNIKU.net

夏凜「まあ、料理作れないあたしが他人の料理に偉そうなコメントするのもおかしいんだけどね?おこがましいっていうか」

東郷「夏凜ちゃん……でも、この味噌汁は一緒に作ったのよ?夏凜ちゃんは、もう十分料理できてるわ」

夏凜「何回も失敗して、ね。昔からそう。私は不器用で、何をしても上手くいかなくて、人より頑張ってようやくスタートラインに立てる。だから東郷を見てると、自分がダメに見えてきて――」

東郷「それは違うわ」

夏凜「えっ?」キョトン

東郷「何回失敗しても諦めないで、成功するまで頑張る。それのどこがダメだっていうの?」

夏凜「でも、勇者部の他のメンバーを見ると、歌とか、性格とか、料理とか、何かしら才能がある。なのに私には、なんの才能もない……」

東郷「努力し続けられることは、既に充分な才能だと思うけど?」

夏凜「!」ハッ



23: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:15:51.40 ID:T5gnhzagNIKU.net

東郷「初めからなんでも出来る人なんて、誰もいないわ」

東郷「自分ではできないことを見つけたとき、諦めずに努力できる。そして、その努力を実らせることができる。これはもう、ダメな人間とは言わないわよ」

夏凜「……ふふっ」

東郷「? わ、私何かおかしなこと言った?」

夏凜「いや……ただこの前とは逆に、今度はあたしが東郷に慰められちゃったなって思って」

夏凜「それに、『悩んだら相談』出来てなかったのは私も同じだったわね……」

東郷「夏凜ちゃん……」

夏凜「あと、叱ってる時の東郷は特にお母さんっぽいなと」

東郷「それ、どういう意味?」ギロ

夏凜「じょ、冗談よ……早く味噌汁飲んじゃいましょう。冷めたらもったいない」

東郷「それもそうね……」ズズ

『料理』おわり



24: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:16:37.15 ID:T5gnhzagNIKU.net

『ぼた餅』

【数週間後 病院】

風「言うな!」

東郷「――ッ!」ビクッ

風「言うな……」

風「誰も悪くない。みんなで話し合ったでしょ?」

……



25: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:17:16.46 ID:T5gnhzagNIKU.net

――――――――――――――――――――――

東郷「はぁ……」

夏凜「何ぼんやりしてんのよ」

東郷「夏凜ちゃん」

夏凜「ため息は幸せが逃げるのよ。やめときなさい」

東郷「……うん」

夏凜「ねぇ、東郷」

東郷「……」

夏凜「なんで、あんなこと言ったのよ」



27: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:18:10.81 ID:T5gnhzagNIKU.net

夏凜「あんたは悪くない。それであんたも納得してたじゃない」

東郷「……それは、そうだけど」

夏凜「だけど?」

東郷「それでも、友奈ちゃんを失った喪失感が消えるわけじゃない。この胸のモヤモヤが、消えるわけじゃない……」

東郷「何かに責任を押し付けて、それを責めていないと頭がおかしくなりそうなの!『誰も悪くない』ということは『誰も責められない』ということ。でもそれじゃ納得できない!」ポロポロ

東郷「友奈ちゃんがああなったのは、間違いなく私のせい。それならもう、私自身を責めるしか、このモヤモヤを晴らす方法はないの!」ポロポロ



28: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 18:19:03.18 ID:T5gnhzagNIKU.net

夏凜「……仕方、ないわね。――っていいわよ」ボソッ

東郷「え?」

夏凜「今日1日、私を友奈だと思っていいわよって言ってるの!友奈も話せなくてモヤモヤしてるなら、こんな真似事でも少しは気が楽になるでしょ!」

東郷「……ありがとう、夏凜ちゃん」

夏凜「お、お礼とかいいから。さっさと始めるわよ」

―――――――――――――――

【同日 河川敷】

夏凜「いつも友奈とは何してるの?」

東郷「そうね……まず、この河川敷を散歩したり……」

夏凜「なるほど。そうと決まれば早速散歩よ!」グイッ

東郷「え、ちょっと!夏凜ちゃん!」

夏凜「今の私は『友奈ちゃん』よ!」キリッ

東郷「う、うん。友奈ちゃん……」ドヨーン



31: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 20:24:34.58 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「……」

東郷「……」ニコニコ

夏凜(か、会話がない……というより)

夏凜「ねえ、東ご……東郷さん。何で私、東郷さんの真後ろにピッタリくっついて歩かないといけないの?」

東郷「え?だって。私が車椅子だった時は、いつも友奈ちゃんは真後ろにいたから……」キョトン

夏凜「それはわかるけど……車椅子もない今、これじゃストーカー通り越して背後霊かなにかよ。ほら、私達を見た自転車がUターンして逃げるくらいには怖がられてるじゃない」ズーン

東郷「そうね……確かによく考えれば、今友奈ちゃんと散歩するとしても、結局車椅子は無いものね」

夏凜「もういいわ。散歩はやめましょう。何か頭痛くなってきた……」ドヨーン



32: 1 2014/12/29(月) 20:25:39.27 ID:4Zx60O9I0.net

【同日 東郷自宅】

夏凜「というわけで、東郷の自宅到着よ」ジャーン

夏凜「……ツッコまないのね」

東郷「同じネタを繰り返すのは野暮ってものよ夏り……友奈ちゃん」ビシッ

夏凜「デスヨネー」プィー

夏凜「……じゃなくて。どうするの?というか、友奈って頻繁に東ご……東郷さんの家に来てたのね」

東郷「ええ。しょっちゅう遊びに来てたわ。私の方からも訪ねたりして」

夏凜「……いいな」ボソッ

東郷「? 何か言った?」

夏凜「な、なんでもないわよ!///」カァァ



33: 1 2014/12/29(月) 20:26:49.83 ID:4Zx60O9I0.net

【同日 東郷自宅 テレビ前】

東郷「そうそう。友奈ちゃんとは、最近一緒に映画を観ることにしていたの」ゴソゴソ

夏凜「映画?ああ、東郷の家のテレビは大きいしね」

東郷「ええ。あ、これなんかオススメよ」ゴソゴソ

夏凜「? どんなの?」

東郷「見てからのお楽しみ……ほら、始まる」

夏凜「……ゴクリ」ドキドキ

夏凜「って、え、これって……」



34: 1 2014/12/29(月) 20:27:40.28 ID:4Zx60O9I0.net

―我ガ国ノ歴史、大戦ト英霊―

東郷「そう。過去の英霊の立派な記録よ!」ジャーン

夏凜「そ、そう……」ドヨーン

東郷「いい?夏り……友奈ちゃん。過去を学ぶことで、私達は大和魂を知ることができるの」

夏凜(マ、マズイ。東郷が映画を見るって時点で、警戒しておくべきだった……)

夏凜「と、ところで、これ何時間あるの?」

東郷「4時間半よ」シレッ

夏凜「4時間半!?短めの映画なら2本見ても時間余るわよ!?」



35: 1 2014/12/29(月) 20:28:45.43 ID:4Zx60O9I0.net

【4時間半後】 

東郷「うう……よくぞ、よくぞ……」シクシク

夏凜「」グッタリ

東郷「さて、夏り……友奈ちゃん。ちゃんと見てた?」テカテカ

夏凜「み、見てたわよ」グッタリ

東郷「!」

夏凜「少し長すぎるけど、内容としてはちゃんとしてたわね。若干ナレーターの個人的見解が入ってた気もするけど、最後までダレることも無かったし」

夏凜「今まで紙の資料ばかり使って歴史を学んでたから、参考になったわ」

東郷「そ、そう……」

夏凜「え、何かおかしなこと言った?」ビクビク

東郷「いえ、ただ友奈ちゃんはいつも途中で寝ちゃって、後から内容を説明してあげるのも楽しみの1つだったから」

夏凜「なんじゃそりゃ……」



37: 1 2014/12/29(月) 20:29:53.12 ID:4Zx60O9I0.net

【同日 東郷自宅】

夏凜「もう随分遅いけど、どうする?もうやめる?」

東郷「うーん、ちょっと待ってて」ヨタヨタ

夏凜「?」



東郷「おまたせ」コトッ

夏凜「これって……」

東郷「うん。ぼた餅」

東郷「友奈ちゃんが味覚を失うまでは、いつも食べさせていたのだけど。最近じゃぼた餅を作ることすら少なくなって……」



38: 1 2014/12/29(月) 20:30:35.62 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「なんか、悪かったわね」ボソッ

東郷「え?」

夏凜「ほら、あたしはなんだかんだ言って、友奈とは違う人間だし。その行動だけ真似しようとしても何かが足りない」

夏凜「結局、あんたの寂しさは解消できてないんでしょ?」

東郷「……」

夏凜「……また、何かあったら言いなさいよね」

東郷「うん、ありがとう夏凜ちゃん」グスッ

夏凜「それはそれとして、まずはぼた餅よ。本当に、いつみても美味しそうね……」

東郷「でも、腕が落ちてないかな」

夏凜「食べてみればわかるでしょ――うっ!」モグモグ

東郷「夏凜ちゃん!?」



39: 1 2014/12/29(月) 20:31:32.85 ID:4Zx60O9I0.net

東郷「夏凜ちゃん!?どうしたの!?」オロオロ

夏凜「う」

東郷「う?」




夏凜「うっ――まい!何よこれ、全然腕落ちてないじゃない!」キラキラ

東郷「ほ、本当に?」

夏凜「当たり前よ!こんな美味しいぼた餅、毎日食べたいくらいだわ!」

東郷「!」ビクッ

夏凜「どうかした?」

東郷「な、何でもないわ。大丈夫///」



40: 1 2014/12/29(月) 20:32:48.26 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「じゃ、あたしは帰るけど、何でも1人で抱え込んじゃダメよ」

東郷「うん。本当にありがとう」

夏凜「それと、この先寂しくなったら、また付き合ってあげてもいいわ……今回みたいに、失敗するかもしれないけど」ボソッ

東郷「えっ?」

夏凜「な、何でもない!明日、部活サボるんじゃないわよ!///」バタン

東郷「……夏凜ちゃん」

東郷(確かに、夏凜ちゃんは友奈ちゃんじゃないわ。でも――)

友奈『東郷さんのぼた餅毎日食べたい!』

東郷(――ぼた餅の褒め方だけは、同じなのね)

東郷「……///」

『ぼた餅』おわり



41: 1 2014/12/29(月) 20:33:56.39 ID:4Zx60O9I0.net

『会話』

【夕方 夏凜自宅】

夏凜「ただいまー」ガチャッ

夏凜「って、誰が返事するわけでもないんだけど」ガサガサ

 いつものように家に帰って、いつものように購入した商品を袋から取り出す
今までと違うのは、それが弁当ではなく食材だということ。
東郷に料理を勧められてから、私はなるべく自炊を心がけるようにしていた。
1度"手作り"で"出来立て"の美味しさを味わってしまうと、もう冷めきった弁当には戻れないのだ。

夏凜「……とりあえずいつも通りトレーニングしよ」

 いつものように、1人で静かに過ごす。
別に、いつもと同じ生活。それなのに、胸の奥が寂しくて、凍えていくように感じるのはなぜだろうか。

ピロリロリン♪ ピロリロリン♪

夏凜「!?」バッ

 携帯が鳴る音に、体が勝手に反応する。
急いで画面を除き込み、そこに赤い文字が現れないのを確認して、ホっと一息つく。
私達の戦いは終わった。それでも、戦いの恐怖は心に残り続けている。



43: 1 2014/12/29(月) 20:35:18.65 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「って、東郷から電話?珍しいわね……」ピッ

夏凜「もしもし?」

東郷『夏凜ちゃん。ごめんねこんな時間に。ご飯食べてた?』

夏凜「いや、まだだけど」

東郷『そう……ねえ、悩んだら相談していいって、夏凜ちゃん言ったよね』

夏凜「言ったわよ。どうかしたの?悩み事?」

東郷『うん……実は今、とんでもないことに気づいてしまったの!』

夏凜「とんでもないこと!?どうしたのよ東郷!」アワアワ






東郷『ぼた餅って、季節によって呼び方が変わるらしいの!』ウワーン

夏凜「(唖然)」



45: 1 2014/12/29(月) 20:37:06.31 ID:4Zx60O9I0.net

東郷『どうしましょう!私今までそれを知らずに、ただぼた餅ぼた餅と連呼して!』

夏凜「ちょ、ちょっと待って。"とんでもないこと"って、それ?」

東郷『うん』

夏凜「いやうんじゃないわよ。たったそれだけでそこまで取り乱してたの?」

東郷『それだけって……そういえば夏凜ちゃん』

夏凜「なによ」

東郷『煮干しって本当は"煮干され"が正しい名前だそうよ』









夏凜「私は今までなんてことをおおおおおおおおおおおお」ウワーン

東郷『嘘よ』



46: 1 2014/12/29(月) 20:38:09.94 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「なるほど……東郷がどれほどショックを受けたかは今身を持って知ったわ」←落ち着いた

東郷『でしょう?』ドヤ

夏凜「威張れることではないけどね……」ドヨーン

夏凜「というか、それなら今の季節はなんて呼べばいいのよ」

東郷『今はまだギリギリ夏だから……"夜船"かしら』

夏凜(なんか知らないけど超かっこいい……!?)



47: 1 2014/12/29(月) 20:39:59.68 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「まあ、どうしても気になるならそう呼べば?別に今から呼び方変えても遅くないでしょ」

東郷『それもそうなのだけどね。ただ皆が覚えにくいと思うから、"ぼた餅"のままでいくつもり』

夏凜「? なによ。相談するまでもなく結論出てるんじゃない」

東郷『結論は出てたのだけどね、それでも受けたショックが大きくて……』

夏凜「なんだか、全然役に立てなくて悪かったわね……」ショボン

東郷『そんなことないわ。こうやって話を聞いてもらえるだけで、会話をするだけで、私はいくらか楽になったわけだし』

東郷『今日は悩みを聞いてくれてありがとう、夏凜ちゃん』

夏凜「べ、別にあんたのために聞いてたわけじゃないわよ。そもそもそっちが一方的に悩みを語ってただけで――」カァァ

東郷『わかってるって』クスクス

夏凜「あんた、絶対わかってないでしょ!」ワナワナ

東郷『じゃあ、おやすみ夏凜ちゃん』ブツッ

夏凜「あ、ちょっと東郷!――もう!」



48: 1 2014/12/29(月) 20:41:09.30 ID:4Zx60O9I0.net

 いったい、何だったんだろう。
突然電話をかけてきて、意味のない会話をして、何がしたいのだろう。

夏凜「まったく……意味わからない」

 私には友達がいなかったから、この感覚がわからないんだろうか。

夏凜「もういいわ。明日部活で東郷に直接文句を言ってやる!」

 人の話は聞かないし、1人で勝手に解決しているし、言いたい文句はやまほどある。
それなのに――

夏凜「本当に、馬鹿」

 この顔が笑顔を作るのは何故だろう。胸の隙間が埋まっていくのはなぜだろう。
私にはまだ、これが何なのかがわからない。


『会話』おわり



49: 1 2014/12/29(月) 20:42:49.12 ID:4Zx60O9I0.net

『メガロポリス』

【日曜日 部活終了後 部室】

東郷「むー……」ポヨポヨ

夏凜「……」

東郷「うーん……」ポヨポヨ

夏凜「……」

東郷「どうして……」ポヨポヨ

夏凜「あんた何してんの?」

東郷「どええええええっ!?か、夏凜ちゃん!?いつからそこに!?」

夏凜「あんたが『胸が邪魔すぎる……』って呟いてパソコンに向かったあたりよ」

東郷「ほとんど最初からじゃない!びっくりさせないで!」

夏凜(個人的には東郷が『どええええええ』なんてリアクションしたことに驚きなんだけど……)



50: 1 2014/12/29(月) 20:43:29.09 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「で?今何してたのよ。見てる限りじゃわからなかったんだけど」

東郷「わからなかった?」

夏凜「ええ。パソコンに向かって、自分で、その、自分の胸を弄んでたようにしか……///」カァァ

東郷「ち、違うわ!誤解よ夏凜ちゃん!」

夏凜「いや、いいのよ。私は忘れ物を取りに来ただけだし。邪魔しちゃ悪いわね……」

東郷「お願い待って!話を聞いて!煮干しあげるから!」バタバタ



51: 1 2014/12/29(月) 20:44:15.39 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「なるほど、胸が邪魔すぎるから小さくしたかったと……」モグモグ←煮干しもらった

東郷「ええ。自分の足で歩くようになってわかったけど、このサイズだと少し急いだり走ったりするだけで揺れて邪魔なのよ」

夏凜「そう……」チラ

東郷「?」ドーン

東郷の胸「?」ドドーン

メガロポリス「?」ズド-ン

夏凜「東郷。この話、樹の前では絶対にしちゃ駄目よ」

東郷「なぜ?」

夏凜「血が流れるところは見たくないもの……」フッ

東郷「?」キョトン

夏凜(かくいうあたしも劣等感が……くっ)



53: 1 2014/12/29(月) 20:45:22.11 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「というか勿体無いわね。折角そんなにでかいのに、わざわざ小さくしようなんて」

東郷「だって本当に邪魔なんだもの。ようやく足が治ったのに、迂闊に走れやしないわ」

夏凜「それはそうだけど……なんか残念」

東郷「それは自分の胸がそこまで大きくないから言えるのよ」

夏凜「あんたやっぱあたしに喧嘩売ってるわよね?」イラ

東郷「いやそんなことは……」

夏凜「というか、実際問題どうやって小さくするのよ」

東郷「それが、胸のサイズで検索しても『胸を大きくする方法』の類しか出てこなくて……」

夏凜「東郷!」ガシッ

夏凜「今すぐそれを教えなさい。今すぐ!」



54: 1 2014/12/29(月) 20:46:13.52 ID:4Zx60O9I0.net

東郷「え、ちょっと……夏凜ちゃんそこまで小さくもないんじゃ」

夏凜「いいから!」グワッ

東郷「わ、わかった……(なんか夏凜ちゃん怖い)」オドオド

 その1・腕立て伏せをする

夏凜「腕立て伏せ?」

東郷「どうも、大胸筋を鍛えるといいみたいなんだけど」

夏凜「なるほど……ちょっとやって見るわ」



55: 1 2014/12/29(月) 20:47:46.68 ID:4Zx60O9I0.net

【15分後】

夏凜「よいしょ、よいしょ」フンフン

東郷「あの、夏凜ちゃん?」

夏凜「なによ」ピタッ

東郷「既にそれだけ出来るってことは、もう大胸筋は鍛え尽くされているってことじゃ……」

夏凜「!そ、そんな……」ガクッ

東郷「ま、まだ方法はあるわよ。頑張りましょう?(息1つ乱れてない……)」アセアセ



56: 1 2014/12/29(月) 20:48:34.30 ID:4Zx60O9I0.net

 その2・カルシウムをとる

夏凜「カルシウム?」

東郷「ええ。なんでも、カルシウムには骨を丈夫にするだけでなく、胸を大きくする力もあるらしいの」

夏凜「……ぼし」ボソッ

東郷「え?」

夏凜「煮干しは、カルシウムが豊富よ」

東郷「あっ……」

夏凜「何かを察して黙るのやめなさいよ!」ウガ-

東郷「ごめん……」

夏凜「謝らないで!悲しくなる!」



57: 1 2014/12/29(月) 20:49:31.46 ID:4Zx60O9I0.net

 その3・サプリを飲む

東郷「あっ、夏凜ちゃん。見てこれ」

夏凜「何これ……『バストアップサプリ』?これよ!」

東郷「でも、これ本当に安全なのかな」

夏凜「私の身体は煮干しとサプリでできているようなものだし。1つサプリが増えるくらい余裕よ」ドヤ

東郷「そう……ん?」

『サプリには摂取量が決まっています』
『摂取量を越えると副作用が』
『過剰摂取はがんになるおそれも』

東郷「……」ポワーン

夏凜『サプリもマシマシね』
夏凜『あんたもサプリキメとく?』

東郷「……夏凜ちゃん。このことは忘れましょう」ガタガタ

夏凜「えーっ!?なんでよ!」プンプン

東郷「夏凜ちゃんの身体を思ってのことよ。我慢して」



58: 1 2014/12/29(月) 20:50:26.11 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「もう!結局1つもまともなのが無いじゃない!」

東郷「一応、まだあるにはあるんだけど……」

夏凜「何をすればいいの!?」

東郷「それが……」

その4・揉まれる

夏凜「な、な、ななな……///」アタフタ

夏凜「む、無理よ、無理に決まってるじゃない!」

東郷「そういうと思って、伝えなかったのだけど……」

夏凜「ん?そういえば東郷もさっき自分の胸を揉んでたわね」

東郷「揉み方次第で小さくもできるって書いてあったから一応……」



59: 1 2014/12/29(月) 20:51:24.25 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「小さくもなるの!?怖っ」

東郷「揉み方によるらしくて。どうも、他人に揉まれた時にその、か、感じなきゃ大きくならないと……///」

夏凜「か、感じる……///」

東郷「これは、無理そうね。今部室には夏凜ちゃんと私しかいないし……えっ?」ガシッ

夏凜「だ、大丈夫」

東郷「夏凜ちゃん……?」

夏凜「東郷に揉まれれば、感じられる。そんな気が、するから……///」

東郷「夏凜ちゃん……///」



60: 1 2014/12/29(月) 20:52:23.42 ID:4Zx60O9I0.net

【1分後 部室】

風「いやー、まさか筆箱を忘れるとは。これじゃ学生失格ね……って、え?」ガチャッ

夏凜「ふぁっ?」←まさに胸を揉まれている

東郷「せ、先輩。これには事情が……」←胸を揉んでいる

風「え、えーっと。ここで見ないふりをするのも、女子力よね。うん。私は何も見なかった……」ガチャ

東郷「先輩待って、話を聞いてください!」バタバタ

夏凜「煮干し!煮干しあげるから!」バタバタ

風「あーダメだこれは。ウドンヲタベナケレバワスレラレナイー」

東郷「うどん、うどんですね!?」バタバタ

夏凜「肉うどんでいいのよね!?」アタフタ

『メガロポリス』おわり



61: 1 2014/12/29(月) 20:53:20.82 ID:4Zx60O9I0.net

『精霊』

【部室】

夏凜「暇ね……」

東郷「そうね……」カタカタ

夏凜「私はまだ手足が動かしにくいから部活の手伝いできないし、東郷はもとより屋内作業が多かったし。何だかんだで二人きりになるのね」

東郷「まあ私はもう車椅子じゃないし、やろうと思えば屋外活動もできるけど……」

夏凜「わ、私を一人でおいていくつもり!?」ガタッ

東郷「だ、大丈夫よ夏凜ちゃん。どうせまだ仕事は残ってるからしばらく屋内だし……」

夏凜「そう?……」



62: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 20:54:04.48 ID:k+KwQsPS0.net

流石に風先輩は混じらなかったか



63: 1 2014/12/29(月) 20:55:13.18 ID:4Zx60O9I0.net

>>62
いろいろ理由をつけて二人以外の人間をどかしてるのでこれ以降はあんまり出てこない……

―――――――――――――――


東郷「……」カタカタ

夏凜「……」ボケーッ

東郷「……ショギョ-ムジョ-」ボソッ

夏凜「義輝!?」ガタッ

東郷「……プクク」プルプル

夏凜「……東郷。こっちを向きなさい。何よその今にも笑い出しそうな顔は」カァァ

東郷「ごめんなさい、からかうつもりはなかったの。ただふと精霊達のことを思い出しちゃって……」プクク

夏凜「なら笑うのやめなさいよ!」ウガー



64: 1 2014/12/29(月) 20:56:09.41 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「でも本当に、精霊が居なくなるとなんか寂しいわね(´・ω・`)」ショボン

東郷「私は一度『死なせずに勇者の役に縛り付ける装置』とか言っちゃったので罪悪感も……(´;ω;`)」シクシク

夏凜「何家に義輝の発言気に入ってたのよねー……」

東郷「発言とはいっても3つしか話せなかったけれど」

夏凜「『ショギョ-ムジョ-』『ゲドーメ』『シュツジン』か。満開する時『ショギョ-ムジョ-』言われたのは驚いたけど、なんか憎めないのよね」ポワーン

東郷「風先輩の犬神もかわいかったわ」

夏凜「なんか普通にドッグフードあげてたらしいしね」



65: 1 2014/12/29(月) 20:57:12.34 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「食事をするといえば、友奈の牛鬼は大食いだったわね」

東郷「一瞬でお菓子とか食い尽くされてたものね」

夏凜「そもそもなぜあいつは義輝を食べようとしてきたのかしら」

東郷「美味しそうだったとか?」

夏凜「鎧着た人形よ!?どこに美味しそうな要素があるのよ」ギョッ

東郷「もしくは、彼なりのスキンシップだったのかも」

夏凜「スキンシップねぇ……というか、精霊に性別ってあるの?」

東郷「さぁ……なんとなくイメージで。義輝はほぼ男で確定だと思ったけれど」



66: 1 2014/12/29(月) 20:57:51.18 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「樹の木霊とかは、なんか女の子っぽい気がするわ」

東郷「何となくかわいらしいから確かに」

東郷「まあ、戦う女の子につく妖精とかは男が多いらしいけれどね」

夏凜「それどこ情報?」

東郷「ネットで調べて……」

夏凜「ああ」



68: 1 2014/12/29(月) 20:58:17.83 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「そういえばあんた、自殺未遂10回もしたって本当?」

東郷「ぐっ……忘れようとしていた記憶が蘇る……」ガタガタ

夏凜「死ねないって言葉を信じるのはわかるけど、最初に切腹試すって普通の女子ならありえないわよ」

夏凜「もう絶対精霊も焦ってたでしょ。『やばいよご主人様が自殺しようとしてるよ』『早く止めなきゃ!』とか言って」クスクス

東郷「……かわいい」

夏凜「えっ」キョトン

東郷「今の、もしかして精霊のモノマネ?裏声で話してたあれ、もしかして青坊主のマネなの?」

夏凜「えっ、えーっと……」カァァ←冷静になって恥ずかしくなってきた



69: 1 2014/12/29(月) 20:59:32.78 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「あーもう!さっきのなし!なんか変だった!取り消しよ取り消し!」ブンブン

東郷「え、いやいいじゃない。変じゃないわ。もう1回やってみて?」

夏凜「いいから!忘れなさい!」

東郷「忘れたくないよ(笑)」クスクス

夏凜「もう東郷!」ウガ-


『精霊』おわり



71: 1 2014/12/29(月) 21:00:36.99 ID:4Zx60O9I0.net

『満開』

【翌日 部室】

夏凜「ねえ」

東郷「どうしたの?」

夏凜「文化祭の劇って、準備しなくてもいいのかしら」

東郷「……劇までに友奈ちゃんが治るかもしれないし、ギリギリまで待った方がいいって風先輩が……」

夏凜「そう……」

東郷「……」



73: 1 2014/12/29(月) 21:01:39.81 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「……満開って、あったじゃない?」

東郷「あったわね」

夏凜「あれのデザインについての話なんだけど」


夏凜「東郷のだけ、ラスボス感が半端なくない?」

東郷「」ショギョ-ムジョ-

東郷「いや、ほら、私歩けないし。遠距離攻撃しかできないし、多少大きくてもおかしくはないわ」

夏凜「いやいやいや。それにしても1人だけ規模が違いすぎるでしょ」



74: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 21:02:28.37 ID:k+KwQsPS0.net

これ全何話なんだ?



75: 以下、\(^o^)/でVIPがお送りします 2014/12/29(月) 21:02:54.71 ID:mHA3VURP0.net

『死なせずに勇者の役に縛り付ける装置』
これ間違ってなかったわけだが



76: 1 2014/12/29(月) 21:04:34.37 ID:4Zx60O9I0.net

>>74
これ入れて後4つ

>>75
一応精霊可愛かったって話なんで事実とはいえ言い過ぎて少し後悔してます

―――――――――――――――

夏凜「そもそもみんなまだ巨大な腕が生えたり服装が変わったりするだけなのに、あれ既に戦艦に乗ってるようなものじゃない」

東郷「それは確かに」

夏凜「まあ腕四本生やしたあたしが言えた義理じゃないけど」

東郷「あれ、夏凜ちゃんの満開って腕四本なの?」

夏凜「そうよ、あんたも見たでしょ……って、獅子座を食い止める時しか見れなかったし覚えてなくても仕方がないか」

東郷「腕四本か……攻撃力特化な感じね」ポワーン

夏凜「うん。まあそこなんだけどね、あたしが言いたいのは」

東郷「?」




夏凜「火力特化なはずのあたしより、東郷の攻撃力の方が高くない?」

東郷「あっ」



78: 1 2014/12/29(月) 21:05:56.63 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「それに何だかやけに定着が浅くてすぐに解けるし……目と耳が逝ったといは本気で死ぬかと思ったわ」ガタガタ

東郷「定着が浅い?」

夏凜「なんでも私の勇者システムはお下がりらしくて、それが原因なんじゃないかって大赦には説明されたけど……なんだったのかしら」

東郷「!……そう、お下がりなの……」

夏凜「?」

夏凜「それより、話をデザインに戻しましょう。腕の数の話とか定着の話とかはもう良いから」

東郷「デザイン……友奈ちゃんの満開はわかりやすかったわ」

夏凜「殴る能力を巨大なアームで強化。清々しいほど肉弾戦特化ね」



79: 1 2014/12/29(月) 21:07:10.95 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「樹のもわかりやすかった気がするわ」

東郷「性能はそのままにワイヤーの数が増えてたものね」

夏凜「で、問題は風なんだけど」

東郷「あー」

夏凜「風の満開って、クラスターの元気っぽい玉を防ぐ時と獅子座を防ぐ時。つまりほとんど防御でしか使ったことないのよ」

東郷「武器がどう変化したかもいまいちわからないわね、そういえば」

夏凜「部長なのに、なんか不遇よね」

東郷「でも、もしかしたら防御力特化という可能性も」

夏凜「その発想はなかった」



81: 1 2014/12/29(月) 21:08:37.63 ID:4Zx60O9I0.net

東郷「……もう、供物はいらなくなったのよね」

夏凜「『神樹様が供物を求めなくなった』って認識になってるけど、少し心配でもあるわね」

東郷「それでも、私達はもう勇者ではないのだから」

夏凜「後輩たちに任せるしかないってわけね」

東郷「……後輩勇者が満開したらどんなデザインになるのかしら」ポワーン

夏凜「次は腕8本とか来そうで怖いわね」

東郷「結局腕の数の話に戻るの!?」


『満開』おわり



82: 1 2014/12/29(月) 21:09:34.70 ID:4Zx60O9I0.net

『勇者』

【秋 文化祭前 部室】

東郷「もう秋。季節が流れるのは早いものね」

夏凜「……ねえ」

東郷「どうかしたの?」

夏凜「友奈の役をそのまま残すのはいいけど……どうするの?」

東郷「どうするって……友奈ちゃんはきっと文化祭までには治るわ。だから大丈夫」

夏凜「私も最初はそう思ってた。だから今日劇の話になった時、あんたの意見に賛成したのよ」

夏凜「でもあいつ、全然目を覚まさないじゃない……」

東郷「……」



83: 1 2014/12/29(月) 21:10:23.80 ID:4Zx60O9I0.net

東郷「なるべく諦めない」ボソッ

夏凜「え?」

東郷「『なるべく諦めない』よ、夏凜ちゃん。勇者部5か条」

東郷「友奈ちゃんはいつも諦めなかった。だから、私達もあきらめちゃだめよ」

夏凜「……それもそうね。もう少し明るい話をしましょう」

―――――――――――――

夏凜「そういえば、旧世紀からRPGって文化が今も残ってるじゃない?」

東郷「ドラ○ンク○ストとか?」

夏凜「それ」



85: 1 2014/12/29(月) 21:11:39.34 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「なんかあれやってると、私達ってあの勇者のイメージとは別の位置にいる気がしてくるのよね」

東郷「まあそれは確かに」

夏凜「そもそも私達って『魔王』とかそういう明確なラスボスがいないじゃない?」

東郷「私は自分の中で神樹様をラスボスに仕立て上げちゃったけどね……(´・ω・`)ハンセイシテマス」ドヨーン

夏凜「バーテックスを魔物として考えてもなんか違うし、どうもゲームの勇者っぽくないというか……」

東郷「まあ、どちらかというと魔法少女に近いところはあるかもね」



87: 1 2014/12/29(月) 21:14:25.61 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「一番勇者っぽいのは風かしら」

東郷「何となく武器が剣だから?」

夏凜「東郷は……魔法使いか」ポワーン

東郷「機動力が低くて遠距離攻撃しかできない……まあ妥当なポジションね」

東郷「友奈ちゃんはどのポジション?」

夏凜「友奈はやっぱり武闘家とか」

東郷「でも信仰心が厚いし、良い心の持ち主だし、どちらかというとモンクかな」



89: 1 2014/12/29(月) 21:15:29.92 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「モンクと武闘家って違いあったの?」

東郷「ただの格闘家が武闘家で、拳を通して悟りを開くのがモンク……だったような」

夏凜「なるほど。樹は?ワイヤーだから……うーん」

東郷「武器と戦い方が独特すぎて思いつかない……(´・ω・`)」ショボン

夏凜「もうこの際占い師でいいんじゃない?」

東郷「戦闘はできないけど、それ以外には思いつかないしね……」



90: 1 2014/12/29(月) 21:16:41.39 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「じゃあ私は?」

東郷「剣士、狂戦士、侍……とか?」

夏凜「なにそのバーサーカーって。か、かっこいいわね……」ソワソワ

東郷「単純に二刀流ができるから選んだだけだけど……まあやっぱり侍が妥当かしら」

夏凜「そう?バーサーカーも気に入ったんだけど……」

東郷「あ!でも、夏凜ちゃんならもっとピッタリのジョブがあったわ」

夏凜「え?何よそれ」ワクワク



91: 1 2014/12/29(月) 21:17:44.62 ID:4Zx60O9I0.net

東郷「踊り子よ」


夏凜「踊り、子……?」ピタ

東郷「ほら、夏凜ちゃんいつも木刀2本持って、砂浜でクルクル踊ってるじゃない」

夏凜「な、何であんたがそんなこと知ってるのよ!///」カァァ

東郷「前に友奈ちゃんが『夏凜ちゃんかっこよかったよ』って言ってたの思い出して、見に行ったの」

夏凜(友奈ああああああああああ!)ウガ-

東郷「結構にあってると思うけど?踊り子」クスクス

夏凜「あんたね、いつもいつも遠まわしに馬鹿にするのやめなさいよ! それにあれは踊りじゃないのよ!」

東郷「ただ褒めてるだけなのに……本当、α波全開の素晴らしい踊りだったと思うわ」クスクス 

夏凜「もおおおおおお東郷!!いい加減にして!///」カァァ


『勇者』おわり



92: 1 2014/12/29(月) 21:20:34.15 ID:4Zx60O9I0.net

『不安』

 あれからも、私と東郷はよく部室ではち合わせては、無駄話に花を咲かせた。
なんてことない時間だけど、私にとってそれは大事な時間だった。

 でも。

 ここ最近、東郷が見るからに疲れてきている。
友奈のことを諦めない。そうは言っても、流石に限界が近いのだろう。

夏凜「ねぇ、東郷」

 東郷に声をかける。返事は返ってこない。
東郷はパソコンに向かってはいるけど、手が全く動いていない。
友奈のことが心の負担になって、何も手につかなくなっている。



93: 1 2014/12/29(月) 21:21:37.70 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「東郷ってば!」ガシッ

 そんな東郷を見ていると、なんだかあたしの心まで不安定になってきて。
つい、肩を強く掴んでしまった。

東郷「え、ああ。ごめん夏凜ちゃん。ボーっとしちゃったね……」

 こっちを向いて、力なく笑う東郷。
目が赤く腫れているのがわかって、それが何を意味しているのかもわかっていて。
そんな東郷になんて声をかければいいのかわからなかった。



109: 1 2014/12/29(月) 21:56:17.90 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「東郷、あんた友奈のことで、その……」

東郷「大丈夫」

夏凜「!」ハッ

東郷「大丈夫。絶対に大丈夫。友奈ちゃんは、絶対に助かるんだから……」フルフル

 何か言いかけたあたしを制する様に。震えながら、何度も『大丈夫』と繰り返す。
それはもう、あたしに対する言葉ではなく、自分に言い聞かせるためだけの言葉で。
そんなことをしないと、心を保っていられない東郷を、あたしは見てられなかった。

東郷「……今日は、早く帰るね。友奈ちゃんに台本を読み聞かせないといけないから」

 よろよろと、立ち上がる。
もう脚は治っている。なら、なんでこいつは、今にも倒れそうなんだろう。
なんでこんなに、頼りなく立っているんだろう。



112: 1 2014/12/29(月) 21:59:33.57 ID:4Zx60O9I0.net

東郷「風先輩に謝っておいて。ごめんね、じゃあ私はここで――」

夏凜「東郷!」ダンッ

 自然と声が出た。何を言うかなんて、考えてもなかった。
それでも、何かを言わなきゃいけない気がしたから。

夏凜「泣きたいなら、泣いてもいい。叫びたいなら、叫べばいい!」

 そんなことを言いながら、泣いているあたし。
みっともなく、叫んでいるのはあたしの方だった。

夏凜「もういい加減、1人で抱え込むのは、やめなさいよ!」

 それは何度も、何度も言ってきた言葉で。
東郷には届いていなかったのかと思うと、少し傷ついた。



113: 1 2014/12/29(月) 22:02:22.07 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「悲しいときに泣かなくて、いつ泣くのよ!強がってたって、友奈は戻ってこないのよ!?」

 あたし、何言ってるんだろう。
泣いたって、友奈は戻らない。いつ治るかなんて、誰にもわからない。
なら、東郷みたいに我慢していた方が、まだ大人だったかもしれない。
それでも、東郷がこんな風に壊れていくのを、黙ってみているわけにはいかなかった。

東郷「……夏凜、ちゃん」

夏凜「……」


東郷「ありがとう。ね」

 東郷は一言、小さな声でお礼を言うと、急いで部室から飛び出していった。
取り残されたあたし。部室の中には、1人だけ。

夏凜「本当に、何言ってるんだろう……」

 答えてくれる人は、いない。


『不安』おわり



115: 1 2014/12/29(月) 22:04:05.35 ID:4Zx60O9I0.net

『相談』

 その後、友奈が治ったと聞いた。
その知らせを受けたあたし達は、自分の後遺症が治った時以上に喜び、涙を流した。

 それからしばらくして、文化祭の劇の前。
役のある風と友奈は着替えに行き、樹は音響設備の確認へ行った。
久しぶりの、2人きり。

夏凜「……」

東郷「……」

 口を、開けない。



117: 1 2014/12/29(月) 22:05:17.21 ID:4Zx60O9I0.net

 もちろん、友奈が治ってよかったとは思う。
それなのに、どこか残念に思ってしまう、最低な自分が心に居座っている。

 あたし、前まで東郷とどんな風に話してたっけ。
そもそも、会話すらあまりしてなかったかもしれない。

 そんな中、友奈が起きなくなって、私は東郷と話すようになった。
でも、今はもう友奈がいる。東郷は、友奈と話すようになるんだろう。
私も友奈と話したい。でも、それと同じくらいに、東郷とも話したい自分がいる。
自分の心が、バラバラになっていく。



118: 1 2014/12/29(月) 22:07:04.99 ID:4Zx60O9I0.net

 もし、口を開いて、うまく話せなかったら。
もし、前と同じ関係に戻ってしまったら。あたしは、どうすればいいんだろう。

東郷「夏凜ちゃん」

夏凜「!」ビクッ

東郷「――なんか、悩んでない?」

夏凜「え?」キョトン

東郷「さっきから表情も暗いし、全く声も出さないし。心配になったんだけど……」

 東郷が、不安そうな顔をしてこちらを見てくる。
……あたしは、何を心配してたんだろう。



121: 1 2014/12/29(月) 22:09:35.72 ID:4Zx60O9I0.net

東郷「悩んだら相談、でしょ?」

 あんたが、それを言うか。思わず口から笑いが溢れる。
本当に、馬鹿なんだから。

 多分、こんな感情は異常で。相談しても、何も解決しやしなくて。
むしろ、前よりも関係がこじれてしまうかもしれなくて。
それでも、あたしは今、自分の口から相談をする。
『悩んだら相談』。人はそれだけで、少し救われるのだから。


夏凜「ねぇ、東郷」

東郷「何?夏凜ちゃん」


『相談』おわり

―――――――――――――

一応書いてた分は終わりです



127: 1 2014/12/29(月) 22:14:40.90 ID:4Zx60O9I0.net

ちょっとだけ後日談書くかもしれません



133: 1 2014/12/29(月) 22:30:42.21 ID:4Zx60O9I0.net

今投下する短め
のを含めて2つ後日談を投下しますが、蛇足かもしれません
1つ書きかけなので時間がかかります

―――――――――――

『友達』

東郷「なんだ……そんなことなら早く言ってくれればよかったのに」

夏凜「……」

 結局。
結局あたしは、適当にごまかして、中途半端な相談をしてしまった。



135: 1 2014/12/29(月) 22:33:27.45 ID:4Zx60O9I0.net

――――――――――――

夏凜『あの、東郷って友奈とすごく仲いいじゃない?』ソワソワ

東郷『そ、そんな……そこまで仲良しじゃないわ///』テレテレ

夏凜『――ッ、そ、それでね、その。友奈が治ったら、東郷は友奈と話すようになるでしょ』ソワソワ

東郷『?』

夏凜『だから、えーっと……もっと仲良くなりたいって言うか……なんていうか……』ゴニョゴニョ

東郷『どうしたの?』

夏凜『……あーもう!これからも、あたしと仲良くしてほしいって言ってるのよ!』ウガ-

――――――――――――――

 ……なんて、良く分からない相談。
実際のところ、自分の気持ちがわかっていないせいもあった。
この感情を表す言葉を、あたしはまだ持っていない。
東郷が友奈と仲良くする。その事実に、やけに反応してしまう自分。



136: 1 2014/12/29(月) 22:35:13.24 ID:4Zx60O9I0.net

東郷「折角夏凜ちゃんと仲良くなれたんだもの。これからもいい友達でいましょう、夏凜ちゃん」

夏凜「う、うん。よろしく……」

 違う。
そう言う事じゃない。
そう言う事じゃないんだけど、じゃあ何なのかと言われたら、答えられなくて。
『友達』という、かつて憧れていた単語が、胸に刺さる。

東郷「ほら、劇の準備しにいきましょう?」

 目の前に差出された手。
これは、別に自分だけに向けられたものじゃない。この手を取っても、私の位置は変わらない。
それでも、今だけは。

夏凜「……うん」

 今だけは、あたしのもの。

『友達』おわり



140: 1 2014/12/29(月) 22:43:17.93 ID:4Zx60O9I0.net

『友奈』

【数日後 金曜日 夏凜自宅】

夏凜「なんか、暇ね。休日も予定ないし……?」ピロリロリン♪

夏凜「東郷から電話?何かしら」ピッ

東郷『もしもし、夏凜ちゃん?』

夏凜「そうだけど……どうしたの?」

東郷『夏凜ちゃんは明日暇?』

夏凜「えっ!?暇って……そうね。ちょうど明日だけ暇よ。うん」アセアセ

東郷『よかった……なら、明日一緒に映画を見にいかない?』



141: 1 2014/12/29(月) 22:46:44.36 ID:4Zx60O9I0.net

 一瞬、耳を疑った。
友奈が戻った後も、あたしを気にかけてくれるなんて。でも、直後にそれは覚めた。

東郷『友奈ちゃんが勇者部で映画を見ようって言い出して。それで夏凜ちゃんに電話したの』

 『友奈』
その言葉を聞いた途端、心拍数が上がる。それは今までの心地よい感覚ではなく、じわりと汗をかくような嫌な感覚で。
自分の変化の気色悪さに、汗が止まらなかった。



143: 1 2014/12/29(月) 22:48:32.33 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「ふ、風と樹は誘わないの?」

東郷『あの2人は姉妹で旅行に行っちゃうらしくて……月曜の学校には来れる日程みたいだけど』

夏凜「そ、そうなの……」

 "何を期待していたの?"と自分が自分を嘲笑う。

夏凜「集合時間は?」

東郷『10時に始まるから、9時半くらいかしら……夏凜ちゃん、現地集合よ?』クスクス

夏凜「? ――っ、また人のことを馬鹿にして!」カァァ

東郷『ごめんなさい、つい。それじゃあ明日ね』ブツッ



144: 1 2014/12/29(月) 22:51:55.98 ID:4Zx60O9I0.net

夏凜「……電話、切れちゃった」

 訪れるのは静寂。
前ならなんともなかったこの静かさも、今では耐え難い。

夏凜「――寝よう」

 勇者をやめてからも惰性でトレーニングは続けていた。
でも、今日はなんとなくやる気にならなかった。

 あたしはなるべく後ろ向きなことを考えないようにしながら、静かに布団に潜り込んだ。



146: 1 2014/12/29(月) 23:00:15.11 ID:4Zx60O9I0.net

【翌日 映画館前】

 あたしが映画館に行くと、そこには既に友奈がいた。

友奈「あ、夏凜ちゃんだ!おーい、夏凜ちゃーん!」ブンブン

夏凜「そんなに手振らなくてもわかるっての!ってか、恥ずかしいから大声で名前呼ばないでよ!」

友奈「いやーうっかり……」テヘヘ

夏凜「まったく……」

 友奈はいつもと変わらず、元気にはしゃいでいる。
そんな友奈の調子に呑まれたのか、あたしも普段通りに接することができていた。

夏凜「あと何分で始まるんだっけ?」

友奈「うーん……確かあと20分くらいだよ。それにしても、東郷さん遅いねー」



149: 1 2014/12/29(月) 23:07:21.00 ID:4Zx60O9I0.net

東郷「ごめんなさい、準備に時間がかかって……」

友奈「大丈夫、そこまで待ってないよ!」

 遅れてきた東郷に、友奈が声を掛ける。
そこにあたしも加わろうとして――止まった。

東郷「でも、10分近く遅刻しちゃって……」オロオロ

友奈「私もさっき来たから大丈夫だよ。夏凜ちゃんも少し遅れてきたし」

 前までの自分のポジションは、ここだったっけ。
二人が楽しそうに話すのを、離れた位置で見ている役。

東郷「なら良かったのだけど。迷惑かけてないようで良かったわ」

友奈「もー、東郷さんは心配症だなー」

 ここに割って入るなんて、あたしに出来るだろうか。



151: 1 2014/12/29(月) 23:13:04.14 ID:4Zx60O9I0.net

東郷「――んちゃん。夏凜ちゃん!」

夏凜「!」ハッ

 気がつけば、東郷の顔が目の前にあった。

夏凜「え?えーっとごめん、何か言った?」アタフタ

東郷「うん。もうすぐ映画始まるけど、大丈夫?顔色悪いけど……」

夏凜「……大丈夫よ。気にしないで」

東郷「そう、でも――」

夏凜「ほら、早く行きましょう!友奈も早く!」

友奈「えっ?あっ、待ってよ夏凜ちゃん!」

 何やってるんだ、あたしは。
何があろうと、2人に心配をかけるわけにはいかない。



152: 1 2014/12/29(月) 23:19:10.81 ID:4Zx60O9I0.net

【映画館 座席】

友奈「いやー、いつ見てもスクリーン大きいね」

夏凜「……」

東郷「友奈ちゃん。映画館なんだから当たり前でしょ?」

 ……どうして、こんなことに。
まさか、あたしの座席が東郷と友奈に挟まれてるなんて。

 右を見ても、左も見ても緊張しっぱなしで。
頭がどうにかなりそうだった。

友奈「東郷さん、夏凜ちゃん。私ポップコーン買ってくるけど、ついでに2人の分も買ってこようか?」

東郷「いいの?じゃあお言葉に甘えて……夏凜ちゃんは?」

夏凜「……じゃあ、あたしにもポップコーン頼める?」

友奈「了解しました!結城友奈、任務を遂行します!」

 友奈は敬礼のようなポーズを取ると、小声でそう言いながら売店へと走っていった。



155: 1 2014/12/29(月) 23:29:01.99 ID:4Zx60O9I0.net

東郷「……夏凜ちゃん。また何か悩んでるでしょう?」

 2人きりになった途端、東郷が声をかけてきた。
私の心の悩みを察したのか、心配そうな声で。

夏凜「悩むって?別に何も悩んでないわよ」

東郷「嘘ね。絶対に何か悩んでる」

夏凜「悩んでないわよ」

 違うって言ってるんだから、放っておいてくれれば良いのに。

東郷「嘘よ。私にはわかる。夏凜ちゃんは何か悩んでる」

 そう断言した言葉には、迷いの1つもなくて。
思わず、それに甘えてしまいそうな自分がいて。
なんで、こいつは。

夏凜「――っ、うるさいわね!悩んでないったら悩んでないのよ!」

 まずい、と思った時にはもう遅かった。



159: 1 2014/12/29(月) 23:36:53.43 ID:4Zx60O9I0.net

 映画館の静寂に、あたしの声が飲み込まれる。
東郷はしばらく目を丸くしてあたしを見ていたけど、しばらくして寂しそうに目を逸らした。

 友奈「おまたせー!売店意外と空いてたよ。ラッキーだね!」

 3人分のポップコーンを持った友奈が、笑顔で戻ってきた。

 あーあ。
何してるんだろう。これなら、家でトレーニングをしていた方が良かったかもしれない。

東郷「……ありがとう、友奈ちゃん」

夏凜「……ありがと」

友奈「どういたしまして!ほら、もう映画始まるよ!」



160: 1 2014/12/29(月) 23:43:43.30 ID:4Zx60O9I0.net

 映画は、なんと熱血ロボット系だった。
映画を選ぶのは東郷だと聞いていたから、少し驚いた。

友奈「ォオオオオオ……」キラキラ

 左を見ると、友奈が目を輝かせてスクリーンを凝視している。

東郷「……わ」ドキドキ

 右を見ると、東郷が手で口を押さえながら映画の世界に入り込んでいる。

夏凜「……」

 あたしは、映画に集中することができなかった。
内容は頭に入ってくるけど、感動や興奮をしている暇が、もう心には残っていなかった。

 あたしは友奈も、東郷も、どちらも大好きで、それは変わらない。
でもそれは勇者部に対する感情だけじゃなくて、もっと特別な何かがあって。

 あたしは今。"それ"を、左右のどちらに抱いているんだろう。



163: 1 2014/12/29(月) 23:53:47.89 ID:4Zx60O9I0.net

【映画館前】


友奈「うーん、凄かったね映画!最後壊れたはずのロボが動いてビームがどーんと!」バタバタ

東郷「友奈ちゃんはしゃぎすぎ……」

 映画が終わって、あたし達は外に出てきた。
映画が終わってからも、あたしは何か気まずくて、東郷に声をかけることができなかった。

友奈「夏凜ちゃん、夏凜ちゃんはどうだった?」

夏凜「……」

友奈「夏凜ちゃん……?」

 あたし、邪魔だったかな。
来ても素直に楽しめなくて、東郷にあんなこと言って。



友奈「……夏凜ちゃん」



165: 1 2014/12/29(月) 23:55:40.80 ID:4Zx60O9I0.net

 と、その時友奈が一瞬真面目な顔になったかと思うと、突然東郷の手から荷物を取った。

友奈「……ごめん東郷さん。私今からお父さんに武術習わないといけないんだ!だから、先に帰ってるね!」

東郷「え?ちょっと、友奈ちゃん!?」

友奈「荷物はダッシュで家に届けておくよ!東郷さんと夏凜ちゃんは、焦らないでいいから!」

 戸惑う東郷を無視して、友奈は荷物を背負って猛スピードで居なくなってしまった。

東郷「え、えーと……」

夏凜「……帰る?」

東郷「……そうしましょうか」



167: 1 2014/12/30(火) 00:00:58.28 ID:2KZm47If0.net

 2人で歩く帰り道。
流石に黙ってもいられなくて、どちらともなく口を開いた。


夏凜「東郷が映画を選ぶっていうから、また歴史の映画かと思ったわ」

東郷「流石に、それはないわよ……それとも、4時間半座っていたかった?」

夏凜「それは勘弁したいわね」

――――――――――――

夏凜「そういえば、風達はどこに旅行に行ったの?」

東郷「確か……勇者部が合宿したところだったような」

夏凜「あ、あんないいところに!?」

東郷「宿のランクは下げたみたいだけど、先輩あの海気に入ってたから」



169: 1 2014/12/30(火) 00:06:15.28 ID:2KZm47If0.net

――――――――――――
夏凜「変身後の東郷って」

東郷「?」

夏凜「イカみたいだって思わない?」

東郷「……酷くない?(´・ω・)」

夏凜「ほら、頭から生える触手のあたりが」

東郷「それを言うなら、4本の腕って夏凜の満開はカニみたいね」ドヤ

夏凜「張り合ってんじゃないわよ!」

―――――――――――

 他愛もない会話。大したことない会話。
友奈が目覚めるまでの、一瞬の間に交わした言葉。

 それら全てを思い出すように、あたし達は話しまくった。
帰り道がわかれるまで、話し続けた。



172: 1 2014/12/30(火) 00:14:11.54 ID:2KZm47If0.net

東郷「あ、私の家こっちだから……」

夏凜「え、そう?私はこっちなんだけど……」

 道が、分かれる。
当然とはいえ、少し寂しい。

夏凜「……それじゃ」

 東郷に背を向けて、家に向けて歩き出す。
そういえば、東郷の家の隣は友奈の家だっけ。あの二人の道は、ずっと同じなんだ。
別に大したことじゃないのに、すごく悲しくなった。

夏凜「それと。その。今日はごめん。突然怒鳴っちゃって」

 背中を向けたまま、小さな声で呟く。
こんな声、聞こえるのかな。そもそも、もう東郷は反対側に歩き出してて、離れてしまっているかもしれない。



175: 1 2014/12/30(火) 00:25:58.60 ID:2KZm47If0.net

 でも、そこに後ろから返事が返ってきた。

東郷「気にしてないよ。私の方こそ、無理やり悩みを聞こうとしちゃって、ごめんなさい!」

 そんな、真っ直ぐな言葉で。
悪いのはあたしだ。『1人で抱え込むな』という、自分の言葉も忘れて、うじうじ悩んでるからいけないんだ。
なのに、なんであんたが。

東郷「私、夏凜ちゃんと仲良くなれて、嬉しかった。悩みを聞いてもらえて、嬉しかった。だから、夏凜ちゃんが悩んでるのがわかって、焦っちゃったの!」

 何よ、それ。



176: 1 2014/12/30(火) 00:28:00.09 ID:2KZm47If0.net

夏凜「……馬鹿みたい」

東郷「えっ?」

夏凜「馬鹿ね。馬鹿。馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿大バカよ!」

東郷「ど、どうしたの?」

 東郷が、慌ててこちらを振り向く。本気で心配そうな、真面目な顔。
――そういうところが、バカだっていうのに。

夏凜「悩みなんて、たった今吹き飛んだわよ」

東郷「?」



178: 1 2014/12/30(火) 00:35:27.23 ID:2KZm47If0.net

 別に、何が変わったわけじゃない。何かが進んだわけでもない。
それでも、もう迷わない。

 友奈がいて、東郷がいて、みんながいて。
そんな関係が、あたしは好きだから。

夏凜「それじゃあ東郷。また明日ね」

 いつまでも、『また明日』って、笑って分かれるような関係でいたい。
そう、静かに思った。



東郷「夏凜ちゃん、明日は日曜日よ?」クスクス

夏凜「あっ……」カァァ

 でもちょっと、ムカつくかも。



180: 1 2014/12/30(火) 00:36:54.19 ID:2KZm47If0.net

【月曜日 勇者部部室】

友奈「友奈と東郷、来ましたー!」ガラッ

 友奈と東郷が、揃って部室に入ってくる。
普段ならそのまま椅子に座る友奈だけど、今日は鞄もおかずにあたしの所まで歩いてきた。

友奈「夏凜ちゃん、一昨日大丈夫だった?」

夏凜「大丈夫って、体調の話?それならなんともないって一昨日も……!」

 そこで、友奈がいつにも増してニコニコと笑っていることに気がついた。
――そっか。友奈が先に帰ったのって。

夏凜「ええ。全く問題ないわ」

友奈「本当!?良かったー!心配してたんだよ?」パアァ



181: 1 2014/12/30(火) 00:39:45.40 ID:2KZm47If0.net

 それを聞いて、途端に顔を明るくする。
――本当に、こいつにはかなわないわね。
私はそう思いながら、東郷のところへと歩き出した。


 今日は何を話そうか。明日は何を話そうか。
話したいことは沢山あって、まとめるのが難しいくらいで。

 それでも、とりあえずまずは、この一言から。


夏凜「ねぇ、東郷」

東郷「何?夏凜ちゃん」


『友奈』おわり


――――――――――――――

これで完全に終わりです
ありがとうございました


元スレ
夏凜「ねぇ、東郷」東郷「何?夏凜ちゃん」