SS速報VIP:かがみ「鎖々美さんは超絶美少女なのです。わたしと結婚するのです!」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363174095/1: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 20:28:15.24 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「ふにゃあ……もう朝なのですか。学校に行く準備をしなくては……」
鎖々美「おや?」
鎖々美(ここは……わたしの家じゃない? どこなのでしょう。なんだか見覚えのあるぬいぐるみ群ですが……)
神臣「ささみさ~ん! 朝ですよ~!」
鎖々美「先生の声?」
鎖々美(となるとここは……月読家ですか)
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1363174095
2: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 20:31:11.94 ID:iQXrD8cY0
神臣「おはようございます。火曜日の早朝です、ささみさん! まずご飯にしますか(僕を)? シャワーにしますか(僕と)? それともぼ、く?」
鎖々美「やめてください先生、気持ち悪いのです。それにわたしは、鎖々美さんではなくかがみさんなのです。そのカバンの所為でちゃんと見えていないのではありませんか」
神臣「んも~う、ささみさんったらそうやってお兄ちゃんをからかって! あ、でも敬語ささみさんもお兄ちゃん的には全然オッケーですよ! むしろこれはこれで……普段の強気なささみさんとのギャップもあって、お兄ちゃんは今最高に興奮しています! さあささみさん、そのままベッドまで引き返してお兄ちゃんと一夜を過ごしましょうハァハァ!!」
鎖々美「一夜というか、もう朝なのです……。というかやめるのです、わたしの腕に絡みつくその手を今すぐに放すのです先生! それ以上触ったら撃ち殺しますよっ、全身穴だらけの蜂の巣にしますよ!」
神臣「なにもそんなに怒らなくても……、いつもの冗談ですよ、ささみさん。さあご
飯にしましょう。今日はフレンチトーストを作りましたよ!」
鎖々美「ありがとうございます。……おお、なかなかにおいしそうなのです」
神臣「さ、ささみさんが素直にお礼を言うなんて……もうツンデレキャラは卒業しち
ゃったんですか!」
鎖々美「はぁ?」
鎖々美(というかいくら先生が盲目だとしても、そろそろ気付かないとおかしいので
はないですか? わたしが鎖々美さんではないということに)
神臣「はい、あーん」
鎖々美「え、は、え?」
神臣「どうしたんですか、ささみさん? はい、あーん」
鎖々美「あ、あーん」
鎖々美(まさか本当に、普段から先生に食べさせてもらっていたとは……! ヒキニ
ートここに極まれりです)
神臣「はい、次はお着替えですね。万歳をしてください」
鎖々美「…………え?」
神臣「? どうしたのです? ほら、いつものように」
鎖々美「……いや、いやいやいやいや!」
神臣「へ?」
鎖々美「出てってください!」
バンッ
鎖々美(まさか着替えも自分でやらないとは……一応年頃の女の子なのですから、少
しは羞恥心を持ちましょうよ、鎖々美さん)
鎖々美(というか、当の本人はどうしているのでしょう? そして、どうしてわたし
が鎖々美さんの家に? ここに来るまでの過程が全然思い出せないのですが、『改変
』……?)
鎖々美「ともかく、今は着替えをしましょう。学校に遅刻してしまいます」
鎖々美「えっと、制服は……」チラッ
鎖々美「……おや、鎖々美さん、こんな場所にいたのです……か……」
姿見『』
鎖々美「」
鎖々美(これは、姿見、ですよね? 姿見に見せかけた巨大ディスプレイとかではな
いですよね?)ペタペタ
鎖々美「わわわわわわわわわわわわわ……」ガクガクガクガク
鎖々美「どうしてわたしが鎖々美さんになってるんですかーっ!?」
鎖々美「とりあえず学校にきてみましたけれど」
かがみ「すぴー……」Zzz
鎖々美(わたしの席でわたしが寝てますね)
鎖々美「あの……」
かがみ「……ふにゃあ」
鎖々美「なっ……(この声……まさかこっちの中身もわたし……!?)」
かがみ「わ、おはようございますかが……鎖々美さん。どうしたのです? そんな
に驚いたような顔をして」
鎖々美「……」
鎖々美「ダウトなのです、鎖々美さん」
かがみ「ふぇっ!?」
鎖々美「わたしのへたくそなモノマネをしないでください。わたし=低脳なイメージ
が広がったらどうするのですか」
かがみ「低脳ってひどい! わたしそんなにおばかじゃないよ!」
鎖々美「ふふ……素の自分を晒しましたね」
かがみ「あ……」
鎖々美「……で、これはどういうことなのですか?」
かがみ「わ、わたしに聞かないでよ。神様関係のことならかがみの方が詳しいでしょ
?」
鎖々美「わたしに分かればとっくに解決しています」
かがみ「そっか……」
鎖々美「最高神の力でなんとかならないのですか?」
かがみ「あ、ああ。あああれね。あれは今、ほら、生き返ったお母さんに預けてある
し」
鎖々美「だったらそのお母さんに使ってもらって……」
かがみ「そ、そうだね! じゃあ今日の放課後に連絡してみるよ!」
鎖々美「? はい、お願いします」
鎖々美(なんでしょう……少し慌てていたような……?)
鎖々美「ともあれ、今日は普通に過ごすしかありませんね……」
鎖々美「ふにゃあ」
かがみ「え、ね、寝ちゃうの?」
鎖々美「はい……それがなにか?」
かがみ「わたしの格好で寝たらわたしの内申悪くなっちゃうじゃん! 考えてよ!」
鎖々美「うるさいのです。内申なんてなくても、どうせあなたは一年生のほとんどを
不登校してたんですから、大して関係ないじゃないですか」
かがみ「それはそうだけど……それに! ただでさえあんまり話しかけられないわた
しがそうやって寝ちゃったら、周りの人からさらに敬遠されちゃうでしょ!」
鎖々美「コミュニケーションは自ら率先して動かなければ意味がないのですよ。ふに
ゃあ」
かがみ「だーかーら、寝ないでってば!」
鎖々美(面倒くさいのです……)
かがみ「かーがみ、お昼食べよっ」
鎖々美「ふにゃあ、もうお昼ですか」
かがみ「もうっ、結局寝てたじゃん!」
鎖々美「寝てなどおらんです。まぶたの裏の世界を探索していただけなのです」
かがみ「それを寝てるっていうんだよ!」
鎖々美「もういいじゃないですか。それよりご飯じゃないのですか?」
かがみ「そうだった! わたし、かがみと一緒に食べようと思って、今日多めにご飯
もってきたんだよ!」
鎖々美「どうせ先生に作ってもらったのでしょう……」
鎖々美「あれ?」
鎖々美「ちょっと待ってください。あなた今朝はわたしの部屋で起きたんですよね?」
かがみ「う、うん……。だけどそれが?」
鎖々美「そのお弁当……だ、だれが作ったのですか?」
かがみ「そりゃあもちろん、わたしの手作りだよ! 一緒に食べよう!」
鎖々美「結構です」
かがみ「一緒に」
鎖々美「結構です」
かがみ「いっ」
鎖々美「結構です」
かがみ「うえーん、……かがみがわたしのおべんと食べてくれない……」
鎖々美「わたしの顔でそんなみっともない表情を浮かべないで下さい。はい、あーん
してあげますから」
かがみ「口移しじゃないといや」
鎖々美「はい、あーん」ガシッ
かがみ「むぐ!」
ざわ…… ざわ……
鎖々美(おや、注目されてる……? 自意識過剰でしょうか)
かがみ「むぐぐぐぐぐー!」ジタバタ
鎖々美「暴れるなです!」
かがみ「いっぺんに詰め込むから!」
鎖々美「というか鎖々美さん。その顔でわたしのことを『かがみ』と呼んだり、その
口調で喋ったりすると、少なからぬ違和感が発生するのですが」
かがみ「む……まあそれもそうだね。じゃあなんて呼べばいいの?」
鎖々美「普通に『鎖々美さん』と」
かがみ「鎖々美さんは超絶美少女なのです。わたしと結婚するのです!」
鎖々美「はぁ、殴りますよ」
かがみ「うう……」ジンジン
鎖々美「というかやっぱり、わたしの物まねはしないでください。超苛つくのです」
かがみ「かがみの真似くらい上手にできるよ!」
鎖々美「うそつけなのです……」
かがみ「疲れたのです、かったるいのです、眠いのです、ああもう全てがどうでもい
いのです。みんな死ねばいいのに、ふにゃあ! ……どうっ?」
鎖々美「鎖々美さん、今すぐその口を閉じるのです。そして今後一生、わたしに話し
かけないでください」
かがみ「ご、ごめんねかがみ。バカにするつもりはなくて……」
鎖々美「その悪意のなさがさらにウザいのです……」
かがみ「はーっ、学校終わったー!」
鎖々美「そんな大声出すのはわたしのキャラじゃないのです」
かがみ「大丈夫だよ、改変してるんだし。みんな気付かないよ」
情雨「な、な、な、ななな……おかしいわ、あんな人格設定は為されていないはずな
のに……まさか『あの計画』がばれて向こうもなにか手段を……」ガクガクガクガク
鎖々美「約一名、気付いてるっぽい人がいるのですが……」
鎖々美(まあアレは厨二病っぽいですし、放っておきましょう)
鎖々美「ただいま帰りました……って、」
かがみ「ただいまー!」
つるぎ「邪魔するぜ!」
たま「パパりん!」
鎖々美「鎖々美さんはともかく、どうして姉さん達まで……」
つるぎ「だっておもしろそーじゃん! 入れ替わりってのは大抵そのままエロエロイ
ベントに突入するんだよ! お互いにハダカ見られるのが恥ずかしいからって一緒に
風呂に入って『目、つぶってなさいよ!』→『もう、開けていいわよ……な、なによ
、なんかいいなさいよ!』からのエロシーンって相場が決まってるんだよ!」
たま「たまはよく分かんないけど、ママりんがつるぎ姉で、つるぎ姉がママりんで…
…あわ、頭のなかがごちゃごちゃしてきちゃったお!」
鎖々美「あんたら少し黙っているのです」
神臣「そうでしたか~。今朝のささみさんは妙につれないと思ったら、中身がかがみ
さんだったんですか~」
鎖々美「はい。つまり今現在の鎖々美さんはあっちなのです」
神臣「なるほど……つまり今日は敬語クールキャラのささみさんが楽しみ放題という
わけですね! うひょひょーいっ!」ズショーン
鎖々美「ひえーこっちくるな! 逆に考えるのです! わたしの姿をした鎖々美さん
を楽しめると考えるのです!」
神臣「シスコンの矜持として、他人の妹は絶対に取ってはいけないんです!」
鎖々美「だからわたしが今、その『他人の妹』なのですよーっ!」
鎖々美「つ、疲れるのですよこの家は……」
かがみ「わたしだってつるぎ達に色々されたんだから疲れたよ……。かがみの家って
進んだ性教育をしているんだね……」
鎖々美「誤解しないで欲しいのですが、それは姉さんだけです。わたしとたまは純粋
無垢な乙女なのです」
かがみ「そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ……もっと恐ろしいものの片鱗を、
味わったぜ……」
鎖々美「本当に疲れてるみたいですね」
かがみ「ホントだよ。ささみがいつも『ふにゃあ』って眠そうにしているのが分かる
気がする」
鎖々美「で、」
鎖々美「どうしてわたし達は一緒にお風呂に入っているのでしょうかね?」
かがみ「そんな、恥ずかしがることなんてないじゃない」
鎖々美「ま、まあ、この身体は鎖々美さんのものですしね……。別に見られても……
うう……」
かがみ「な、泣かないでかがみ。わたしだってちっちゃい方なんだから」
鎖々美「それじゃあわたしはぺちゃんこだっていうんですか! あんたのこれが小さ
いっていうんなら!」
かがみ「う、うん……。そこは覆しようもない事実、というか……」
鎖々美「ちょっとくらいフォローしてくださいよ……ぐすっ……」
鎖々美「結局、ここで寝ることになるんですね。二人で」
かがみ「つるぎたちは勝手に帰っちゃったし、お兄ちゃんも『ささみさんがそういう
方面に進んでいくのだとしたら僕はとめません!』とかいって、泣きながら引きこも
っちゃったしね」
鎖々美「これでは姉さんの思う壺なのです……」
かがみ「ほら、ぬいぐるみどかして。あ、そこのサルのは貴重なのだから。棚の上ね」
鎖々美「は? はぁ……」
かがみ「はい、二人分のスペースができたね。これで一緒に寝られるねっ、かがみっ
!」
鎖々美「えっ?」
鎖々美「なに戯言をほざきやがるんですか、ささみさん。わたしはそこのソファーで
寝るのでいいですよ」
かがみ「えー、そんなつれないこといわないでよ」グイグイ
鎖々美「ええい、ひっぱるなです! パジャマが伸びるのです!」
かがみ「それわたしのパジャマだからべつにいいんだよね」
鎖々美「そ、そういえばそうでした……いえ、だからといってひっぱっていい理由に
はならないのです!」
かがみ「じゃあ一緒に寝ようよ」グイグイ
鎖々美「あーもうっ! 分かったのです! 寝てやるから跪いて感謝なさい!」
かがみ「わーい」
かがみ「じゃあ電気消すよー」
鎖々美「勝手にするのです」
カチッ
かがみ「ぐへへかがみちゃんスケベしようや……」
鎖々美「キショいのです! そんなことするなら寝てやりません」
かがみ「ごめんって」
鎖々美「まったく……」
かがみ「かーがみっ」
鎖々美「ふにゃあ……今日は疲れたので、もう眠いのです。要件なら手短にお願いす
るのです」
かがみ「かがみはいつも眠そうじゃん……。いや、大した用事じゃないんだけどね」
かがみ「かがみは今日一日さ、わたしの身体で過ごしてみて、どうだった?」
鎖々美「どうって……べつに」
かがみ「具体的には、そうだね……怪異が目に付かない生活ってどうだった? 街を
歩いていても、騒ぎが起こらない一日って」
鎖々美「……」
鎖々美「どうも怪異が見えなかったり、身体の中にいるはずの神霊が異常におとなし
かったりしたと思ったら……そういうことですか。わたしたちは身体だけでなく、霊
的なスペックまで入れ替わっていたと」
かがみ「う、うん。そうだよ。……それがわたしの――神々じゃない者の身体なんだ
よ。怪異とかいちいち気にしなくていいし、周りの動向もケアらなくていい。どう、
気楽で疲れない一日だったでしょ?」
鎖々美「……」
かがみ「かがみ、ずっとがんばってきたもんね。わたしが最高神の力を持っていたと
きも、わたしの身の安全を第一に考えて行動してくれたし、わたしが力を失ったあと
も、わたしの周りでいろいろなことをやっていてくれたでしょ? わたしはそんなか
がみが――」
鎖々美「鎖々美さん」
かがみ「……」
鎖々美「全部、あなたの企みでしたか」
かがみ「……そうだよ」
かがみ「最高神の力を手放す前に、一つだけちょっとした改変をしていたの。といっ
ても即効のものではなくてね――それはかがみの感情をトリガーに発動する」
鎖々美「わたしの、感情……」
かがみ「疲れたな、って思ったり、辛いな、って感じたり、こんなことやめたいな、
って望んだり。そういう感情。あなたが『がんばりたくない』って叫びたくなったと
きに発動する『改変』」
鎖々美「……」
かがみ「わたしはかがみが大好きなの。かがみはわたしにとって、世界で一番の友達
なの。だから、だからね。そうやってかがみがわたしのためにがんばって、消耗して
いくのを見たくなかったの。かがみには、がんばらないでいてもらいたかったんだよ
」
かがみ「神の力を失ったわたしの身体と精神を入れ替えてしまえば、かがみはもうが
んばらなくて済むでしょ。わたしの身体で、毎日楽しく、がんばらない日々を過ごせ
るでしょ? だから、こうやって……」
鎖々美「……」
かがみ「分かってるよ、かがみのいいたいことは。……結局はこれ、わたしのエゴな
んだよ。かがみががんばるのを見たくないのだって、わたしがかがみを自分の所有物
みたいに見ているからで――」
鎖々美「……なめてんじゃないですよ、鎖々美さんのくせに」
鎖々美「わたしがいつ、やめたいっていいました」
鎖々美「わたしがいつ、がんばりたくないなんて叫びましたか!」
鎖々美「鎖々美さん、あんたは! 一人じゃ朝も起きられないし、朝食も食べられな
い!」
鎖々美「着替えだってのろいしちょっと歩いただけですぐ疲れたって愚痴こいて。コ
ミュ障だから友達もできないくせに身内にはすぐでかい態度を取る」
鎖々美「ヒキコモリだったからって理由で言い訳して、それを悪いとも思わない。お
ばかでのろまで鈍くて、一人じゃ何にもできないくせに、いろんなことにすぐ首を突
っ込む!」
鎖々美「迷惑かけないようにって気を遣ってもすぐ空回り。何でも一人で抱え込もう
として、失敗して、一人で勝手に傷付いて」
鎖々美「そんなダメダメ人間なあんたが、そんな心配をする必要なんてないんです!」
鎖々美「ええ、確かに。疲れたなって思いましたよ。辛いって感じたり、もうやめた
いって望んだりも。『がんばりたくない!』と声を大にして主張したくなりもしまし
たよ」
鎖々美「今回に限ったことではありません――『アラハバキ』に作られてこのかた十
何年間、何度も何度も、もうがんばりたくないって思いました」
鎖々美「正直なところ、わたしは長い間この世界に絶望していました。姉さんに拾わ
れてからだって、がんばりたくないという気持ちに変わりはありませんでした」
鎖々美「だけどそこに、変革をもたらしてくれる存在が現れました」
鎖々美(わたしの前に、あなたが現れました)
鎖々美「そいつは鈍くさいやつです。何度も躓いて、転んで。それでも起き上がって、
がむしゃらに頑張り続ける、酷く愚かな人なんです」
鎖々美「最初は、こいつバカじゃないの? って思いました。こんな眠たくて退屈な
世の中に、そんなにがんばってまで守るものなんてないのに、って思いました」
鎖々美「けれど違ったのです。わたしのそれは、勘違いだったのです」
鎖々美「その人は――」
鎖々美(鎖々美さん、あなたは――)
鎖々美「なにかを守るために、がんばっていたわけではない」
鎖々美「守るものを見つけるために、がんばり続けていたのです」
かがみ「かがみのいってることは難しすぎて、よくわかんないよ……」
鎖々美(いいのですよ、鎖々美さんはわからなくても。あなたはわたしにそのことを
教えてくれたのです。それだけで、わたしはとても嬉しいのです)
鎖々美「――わたしのがんばりはもう、報われました。嫌々がんばり続けてきたわた
しは、もう守るべきものを見つけたのです」
鎖々美(わたしは、あなたを見つけたのです)
鎖々美「それは、わたしにとってこの世界より大切で、わたしにとって『わたし』よ
りも大切な存在」
鎖々美(あなたは黙って、わたしに守られていればいいのです。わたしにとっての幸
せは、あなたを守ることなのですから)
鎖々美「だから、疲れても負けないし、辛くても大丈夫。もうやめたいなんて心の声
も、簡単につぶせてしまう――もう、『がんばらない』なんていわないのです!」
鎖々美「だから鎖々美さん、わたしにがんばらせてください。わたしの身体にわたし
の心を戻してください」
鎖々美(あなたを守るための身体に、わたしの心を戻してください)
*
*
*
鎖々美「じゃあ電気消すね」
かがみ「勝手にするのです」
カチッ
鎖々美「うふふっ」
かがみ「なんですかきもちわるい。エロゲーをやってる最中の姉さんみたいな顔をし
て近づかないでください」
鎖々美「かーがみっ」
かがみ「……なんですか」
鎖々美「ぎゅっとしていいかなあ」
かがみ「…………勝手にするのです」
鎖々美「かがみ温かいね」
かがみ「さ、鎖々美さんの方が温かいのです」
鎖々美「おや、かがみ熱いね。主にほっぺたが」スリスリ
かがみ「むおお、ほおずりするな気色悪い! ……それに、熱いのは鎖々美さんのせ
いなのですよ」
鎖々美「ん? なんかいった? ほおずりに夢中で聞き逃しちゃったよ」
かがみ「はぁ……、なんでもないのです。というかもう寝ましょう。明日も早いので」
鎖々美「そうだね。じゃあおやすみ――わたしの大好きなかがみ」
かがみ「……」
かがみ「おやすみなさい。わたしの大好きな鎖々美さん」
おわり
かがみんマジ天使なのです
おやすみなさい。明日も早いので
元スレ
神臣「おはようございます。火曜日の早朝です、ささみさん! まずご飯にしますか(僕を)? シャワーにしますか(僕と)? それともぼ、く?」
鎖々美「やめてください先生、気持ち悪いのです。それにわたしは、鎖々美さんではなくかがみさんなのです。そのカバンの所為でちゃんと見えていないのではありませんか」
神臣「んも~う、ささみさんったらそうやってお兄ちゃんをからかって! あ、でも敬語ささみさんもお兄ちゃん的には全然オッケーですよ! むしろこれはこれで……普段の強気なささみさんとのギャップもあって、お兄ちゃんは今最高に興奮しています! さあささみさん、そのままベッドまで引き返してお兄ちゃんと一夜を過ごしましょうハァハァ!!」
鎖々美「一夜というか、もう朝なのです……。というかやめるのです、わたしの腕に絡みつくその手を今すぐに放すのです先生! それ以上触ったら撃ち殺しますよっ、全身穴だらけの蜂の巣にしますよ!」
4: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 20:33:03.89 ID:iQXrD8cY0
神臣「なにもそんなに怒らなくても……、いつもの冗談ですよ、ささみさん。さあご
飯にしましょう。今日はフレンチトーストを作りましたよ!」
鎖々美「ありがとうございます。……おお、なかなかにおいしそうなのです」
神臣「さ、ささみさんが素直にお礼を言うなんて……もうツンデレキャラは卒業しち
ゃったんですか!」
鎖々美「はぁ?」
鎖々美(というかいくら先生が盲目だとしても、そろそろ気付かないとおかしいので
はないですか? わたしが鎖々美さんではないということに)
6: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 20:35:44.90 ID:iQXrD8cY0
神臣「はい、あーん」
鎖々美「え、は、え?」
神臣「どうしたんですか、ささみさん? はい、あーん」
鎖々美「あ、あーん」
鎖々美(まさか本当に、普段から先生に食べさせてもらっていたとは……! ヒキニ
ートここに極まれりです)
神臣「はい、次はお着替えですね。万歳をしてください」
鎖々美「…………え?」
神臣「? どうしたのです? ほら、いつものように」
鎖々美「……いや、いやいやいやいや!」
神臣「へ?」
鎖々美「出てってください!」
バンッ
8: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 20:42:12.34 ID:iQXrD8cY0
鎖々美(まさか着替えも自分でやらないとは……一応年頃の女の子なのですから、少
しは羞恥心を持ちましょうよ、鎖々美さん)
鎖々美(というか、当の本人はどうしているのでしょう? そして、どうしてわたし
が鎖々美さんの家に? ここに来るまでの過程が全然思い出せないのですが、『改変
』……?)
鎖々美「ともかく、今は着替えをしましょう。学校に遅刻してしまいます」
鎖々美「えっと、制服は……」チラッ
鎖々美「……おや、鎖々美さん、こんな場所にいたのです……か……」
姿見『』
鎖々美「」
鎖々美(これは、姿見、ですよね? 姿見に見せかけた巨大ディスプレイとかではな
いですよね?)ペタペタ
鎖々美「わわわわわわわわわわわわわ……」ガクガクガクガク
鎖々美「どうしてわたしが鎖々美さんになってるんですかーっ!?」
9: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 21:05:39.19 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「とりあえず学校にきてみましたけれど」
かがみ「すぴー……」Zzz
鎖々美(わたしの席でわたしが寝てますね)
鎖々美「あの……」
かがみ「……ふにゃあ」
鎖々美「なっ……(この声……まさかこっちの中身もわたし……!?)」
かがみ「わ、おはようございますかが……鎖々美さん。どうしたのです? そんな
に驚いたような顔をして」
鎖々美「……」
10: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 21:09:24.75 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「ダウトなのです、鎖々美さん」
かがみ「ふぇっ!?」
鎖々美「わたしのへたくそなモノマネをしないでください。わたし=低脳なイメージ
が広がったらどうするのですか」
かがみ「低脳ってひどい! わたしそんなにおばかじゃないよ!」
鎖々美「ふふ……素の自分を晒しましたね」
かがみ「あ……」
11: ごはんつくんないといけないのでしばらく 2013/03/13(水) 21:15:56.71 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「……で、これはどういうことなのですか?」
かがみ「わ、わたしに聞かないでよ。神様関係のことならかがみの方が詳しいでしょ
?」
鎖々美「わたしに分かればとっくに解決しています」
かがみ「そっか……」
鎖々美「最高神の力でなんとかならないのですか?」
かがみ「あ、ああ。あああれね。あれは今、ほら、生き返ったお母さんに預けてある
し」
鎖々美「だったらそのお母さんに使ってもらって……」
かがみ「そ、そうだね! じゃあ今日の放課後に連絡してみるよ!」
鎖々美「? はい、お願いします」
鎖々美(なんでしょう……少し慌てていたような……?)
12: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 22:08:30.73 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「ともあれ、今日は普通に過ごすしかありませんね……」
鎖々美「ふにゃあ」
かがみ「え、ね、寝ちゃうの?」
鎖々美「はい……それがなにか?」
かがみ「わたしの格好で寝たらわたしの内申悪くなっちゃうじゃん! 考えてよ!」
鎖々美「うるさいのです。内申なんてなくても、どうせあなたは一年生のほとんどを
不登校してたんですから、大して関係ないじゃないですか」
かがみ「それはそうだけど……それに! ただでさえあんまり話しかけられないわた
しがそうやって寝ちゃったら、周りの人からさらに敬遠されちゃうでしょ!」
鎖々美「コミュニケーションは自ら率先して動かなければ意味がないのですよ。ふに
ゃあ」
かがみ「だーかーら、寝ないでってば!」
鎖々美(面倒くさいのです……)
13: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 22:10:52.20 ID:iQXrD8cY0
かがみ「かーがみ、お昼食べよっ」
鎖々美「ふにゃあ、もうお昼ですか」
かがみ「もうっ、結局寝てたじゃん!」
鎖々美「寝てなどおらんです。まぶたの裏の世界を探索していただけなのです」
かがみ「それを寝てるっていうんだよ!」
鎖々美「もういいじゃないですか。それよりご飯じゃないのですか?」
かがみ「そうだった! わたし、かがみと一緒に食べようと思って、今日多めにご飯
もってきたんだよ!」
鎖々美「どうせ先生に作ってもらったのでしょう……」
鎖々美「あれ?」
14: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 22:14:56.67 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「ちょっと待ってください。あなた今朝はわたしの部屋で起きたんですよね?」
かがみ「う、うん……。だけどそれが?」
鎖々美「そのお弁当……だ、だれが作ったのですか?」
かがみ「そりゃあもちろん、わたしの手作りだよ! 一緒に食べよう!」
鎖々美「結構です」
かがみ「一緒に」
鎖々美「結構です」
かがみ「いっ」
鎖々美「結構です」
15: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 22:24:30.60 ID:iQXrD8cY0
かがみ「うえーん、……かがみがわたしのおべんと食べてくれない……」
鎖々美「わたしの顔でそんなみっともない表情を浮かべないで下さい。はい、あーん
してあげますから」
かがみ「口移しじゃないといや」
鎖々美「はい、あーん」ガシッ
かがみ「むぐ!」
ざわ…… ざわ……
鎖々美(おや、注目されてる……? 自意識過剰でしょうか)
かがみ「むぐぐぐぐぐー!」ジタバタ
鎖々美「暴れるなです!」
かがみ「いっぺんに詰め込むから!」
16: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 22:31:36.50 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「というか鎖々美さん。その顔でわたしのことを『かがみ』と呼んだり、その
口調で喋ったりすると、少なからぬ違和感が発生するのですが」
かがみ「む……まあそれもそうだね。じゃあなんて呼べばいいの?」
鎖々美「普通に『鎖々美さん』と」
かがみ「鎖々美さんは超絶美少女なのです。わたしと結婚するのです!」
鎖々美「はぁ、殴りますよ」
17: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 22:35:00.34 ID:iQXrD8cY0
かがみ「うう……」ジンジン
鎖々美「というかやっぱり、わたしの物まねはしないでください。超苛つくのです」
かがみ「かがみの真似くらい上手にできるよ!」
鎖々美「うそつけなのです……」
かがみ「疲れたのです、かったるいのです、眠いのです、ああもう全てがどうでもい
いのです。みんな死ねばいいのに、ふにゃあ! ……どうっ?」
鎖々美「鎖々美さん、今すぐその口を閉じるのです。そして今後一生、わたしに話し
かけないでください」
かがみ「ご、ごめんねかがみ。バカにするつもりはなくて……」
鎖々美「その悪意のなさがさらにウザいのです……」
18: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 22:47:42.48 ID:iQXrD8cY0
かがみ「はーっ、学校終わったー!」
鎖々美「そんな大声出すのはわたしのキャラじゃないのです」
かがみ「大丈夫だよ、改変してるんだし。みんな気付かないよ」
情雨「な、な、な、ななな……おかしいわ、あんな人格設定は為されていないはずな
のに……まさか『あの計画』がばれて向こうもなにか手段を……」ガクガクガクガク
鎖々美「約一名、気付いてるっぽい人がいるのですが……」
鎖々美(まあアレは厨二病っぽいですし、放っておきましょう)
19: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 22:50:08.06 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「ただいま帰りました……って、」
かがみ「ただいまー!」
つるぎ「邪魔するぜ!」
たま「パパりん!」
鎖々美「鎖々美さんはともかく、どうして姉さん達まで……」
つるぎ「だっておもしろそーじゃん! 入れ替わりってのは大抵そのままエロエロイ
ベントに突入するんだよ! お互いにハダカ見られるのが恥ずかしいからって一緒に
風呂に入って『目、つぶってなさいよ!』→『もう、開けていいわよ……な、なによ
、なんかいいなさいよ!』からのエロシーンって相場が決まってるんだよ!」
たま「たまはよく分かんないけど、ママりんがつるぎ姉で、つるぎ姉がママりんで…
…あわ、頭のなかがごちゃごちゃしてきちゃったお!」
鎖々美「あんたら少し黙っているのです」
20: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 22:53:44.98 ID:iQXrD8cY0
神臣「そうでしたか~。今朝のささみさんは妙につれないと思ったら、中身がかがみ
さんだったんですか~」
鎖々美「はい。つまり今現在の鎖々美さんはあっちなのです」
神臣「なるほど……つまり今日は敬語クールキャラのささみさんが楽しみ放題という
わけですね! うひょひょーいっ!」ズショーン
鎖々美「ひえーこっちくるな! 逆に考えるのです! わたしの姿をした鎖々美さん
を楽しめると考えるのです!」
神臣「シスコンの矜持として、他人の妹は絶対に取ってはいけないんです!」
鎖々美「だからわたしが今、その『他人の妹』なのですよーっ!」
22: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:03:50.39 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「つ、疲れるのですよこの家は……」
かがみ「わたしだってつるぎ達に色々されたんだから疲れたよ……。かがみの家って
進んだ性教育をしているんだね……」
鎖々美「誤解しないで欲しいのですが、それは姉さんだけです。わたしとたまは純粋
無垢な乙女なのです」
かがみ「そんなチャチなもんじゃあ、断じてねえ……もっと恐ろしいものの片鱗を、
味わったぜ……」
鎖々美「本当に疲れてるみたいですね」
かがみ「ホントだよ。ささみがいつも『ふにゃあ』って眠そうにしているのが分かる
気がする」
鎖々美「で、」
鎖々美「どうしてわたし達は一緒にお風呂に入っているのでしょうかね?」
23: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:05:38.99 ID:iQXrD8cY0
かがみ「そんな、恥ずかしがることなんてないじゃない」
鎖々美「ま、まあ、この身体は鎖々美さんのものですしね……。別に見られても……
うう……」
かがみ「な、泣かないでかがみ。わたしだってちっちゃい方なんだから」
鎖々美「それじゃあわたしはぺちゃんこだっていうんですか! あんたのこれが小さ
いっていうんなら!」
かがみ「う、うん……。そこは覆しようもない事実、というか……」
鎖々美「ちょっとくらいフォローしてくださいよ……ぐすっ……」
24: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:07:41.95 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「結局、ここで寝ることになるんですね。二人で」
かがみ「つるぎたちは勝手に帰っちゃったし、お兄ちゃんも『ささみさんがそういう
方面に進んでいくのだとしたら僕はとめません!』とかいって、泣きながら引きこも
っちゃったしね」
鎖々美「これでは姉さんの思う壺なのです……」
かがみ「ほら、ぬいぐるみどかして。あ、そこのサルのは貴重なのだから。棚の上ね」
鎖々美「は? はぁ……」
かがみ「はい、二人分のスペースができたね。これで一緒に寝られるねっ、かがみっ
!」
鎖々美「えっ?」
25: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:08:45.28 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「なに戯言をほざきやがるんですか、ささみさん。わたしはそこのソファーで
寝るのでいいですよ」
かがみ「えー、そんなつれないこといわないでよ」グイグイ
鎖々美「ええい、ひっぱるなです! パジャマが伸びるのです!」
かがみ「それわたしのパジャマだからべつにいいんだよね」
鎖々美「そ、そういえばそうでした……いえ、だからといってひっぱっていい理由に
はならないのです!」
かがみ「じゃあ一緒に寝ようよ」グイグイ
鎖々美「あーもうっ! 分かったのです! 寝てやるから跪いて感謝なさい!」
かがみ「わーい」
26: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:10:01.36 ID:iQXrD8cY0
かがみ「じゃあ電気消すよー」
鎖々美「勝手にするのです」
カチッ
かがみ「ぐへへかがみちゃんスケベしようや……」
鎖々美「キショいのです! そんなことするなら寝てやりません」
かがみ「ごめんって」
鎖々美「まったく……」
27: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:12:45.46 ID:iQXrD8cY0
かがみ「かーがみっ」
鎖々美「ふにゃあ……今日は疲れたので、もう眠いのです。要件なら手短にお願いす
るのです」
かがみ「かがみはいつも眠そうじゃん……。いや、大した用事じゃないんだけどね」
かがみ「かがみは今日一日さ、わたしの身体で過ごしてみて、どうだった?」
鎖々美「どうって……べつに」
かがみ「具体的には、そうだね……怪異が目に付かない生活ってどうだった? 街を
歩いていても、騒ぎが起こらない一日って」
鎖々美「……」
28: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:21:25.83 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「どうも怪異が見えなかったり、身体の中にいるはずの神霊が異常におとなし
かったりしたと思ったら……そういうことですか。わたしたちは身体だけでなく、霊
的なスペックまで入れ替わっていたと」
かがみ「う、うん。そうだよ。……それがわたしの――神々じゃない者の身体なんだ
よ。怪異とかいちいち気にしなくていいし、周りの動向もケアらなくていい。どう、
気楽で疲れない一日だったでしょ?」
鎖々美「……」
かがみ「かがみ、ずっとがんばってきたもんね。わたしが最高神の力を持っていたと
きも、わたしの身の安全を第一に考えて行動してくれたし、わたしが力を失ったあと
も、わたしの周りでいろいろなことをやっていてくれたでしょ? わたしはそんなか
がみが――」
鎖々美「鎖々美さん」
かがみ「……」
鎖々美「全部、あなたの企みでしたか」
かがみ「……そうだよ」
29: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:23:23.64 ID:iQXrD8cY0
かがみ「最高神の力を手放す前に、一つだけちょっとした改変をしていたの。といっ
ても即効のものではなくてね――それはかがみの感情をトリガーに発動する」
鎖々美「わたしの、感情……」
かがみ「疲れたな、って思ったり、辛いな、って感じたり、こんなことやめたいな、
って望んだり。そういう感情。あなたが『がんばりたくない』って叫びたくなったと
きに発動する『改変』」
鎖々美「……」
かがみ「わたしはかがみが大好きなの。かがみはわたしにとって、世界で一番の友達
なの。だから、だからね。そうやってかがみがわたしのためにがんばって、消耗して
いくのを見たくなかったの。かがみには、がんばらないでいてもらいたかったんだよ
」
かがみ「神の力を失ったわたしの身体と精神を入れ替えてしまえば、かがみはもうが
んばらなくて済むでしょ。わたしの身体で、毎日楽しく、がんばらない日々を過ごせ
るでしょ? だから、こうやって……」
鎖々美「……」
かがみ「分かってるよ、かがみのいいたいことは。……結局はこれ、わたしのエゴな
んだよ。かがみががんばるのを見たくないのだって、わたしがかがみを自分の所有物
みたいに見ているからで――」
鎖々美「……なめてんじゃないですよ、鎖々美さんのくせに」
30: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:26:09.04 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「わたしがいつ、やめたいっていいました」
鎖々美「わたしがいつ、がんばりたくないなんて叫びましたか!」
鎖々美「鎖々美さん、あんたは! 一人じゃ朝も起きられないし、朝食も食べられな
い!」
鎖々美「着替えだってのろいしちょっと歩いただけですぐ疲れたって愚痴こいて。コ
ミュ障だから友達もできないくせに身内にはすぐでかい態度を取る」
鎖々美「ヒキコモリだったからって理由で言い訳して、それを悪いとも思わない。お
ばかでのろまで鈍くて、一人じゃ何にもできないくせに、いろんなことにすぐ首を突
っ込む!」
鎖々美「迷惑かけないようにって気を遣ってもすぐ空回り。何でも一人で抱え込もう
として、失敗して、一人で勝手に傷付いて」
鎖々美「そんなダメダメ人間なあんたが、そんな心配をする必要なんてないんです!」
31: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:38:12.29 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「ええ、確かに。疲れたなって思いましたよ。辛いって感じたり、もうやめた
いって望んだりも。『がんばりたくない!』と声を大にして主張したくなりもしまし
たよ」
鎖々美「今回に限ったことではありません――『アラハバキ』に作られてこのかた十
何年間、何度も何度も、もうがんばりたくないって思いました」
鎖々美「正直なところ、わたしは長い間この世界に絶望していました。姉さんに拾わ
れてからだって、がんばりたくないという気持ちに変わりはありませんでした」
鎖々美「だけどそこに、変革をもたらしてくれる存在が現れました」
鎖々美(わたしの前に、あなたが現れました)
32: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:38:50.75 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「そいつは鈍くさいやつです。何度も躓いて、転んで。それでも起き上がって、
がむしゃらに頑張り続ける、酷く愚かな人なんです」
鎖々美「最初は、こいつバカじゃないの? って思いました。こんな眠たくて退屈な
世の中に、そんなにがんばってまで守るものなんてないのに、って思いました」
鎖々美「けれど違ったのです。わたしのそれは、勘違いだったのです」
34: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:40:12.68 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「その人は――」
鎖々美(鎖々美さん、あなたは――)
鎖々美「なにかを守るために、がんばっていたわけではない」
鎖々美「守るものを見つけるために、がんばり続けていたのです」
かがみ「かがみのいってることは難しすぎて、よくわかんないよ……」
鎖々美(いいのですよ、鎖々美さんはわからなくても。あなたはわたしにそのことを
教えてくれたのです。それだけで、わたしはとても嬉しいのです)
35: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:40:58.08 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「――わたしのがんばりはもう、報われました。嫌々がんばり続けてきたわた
しは、もう守るべきものを見つけたのです」
鎖々美(わたしは、あなたを見つけたのです)
鎖々美「それは、わたしにとってこの世界より大切で、わたしにとって『わたし』よ
りも大切な存在」
鎖々美(あなたは黙って、わたしに守られていればいいのです。わたしにとっての幸
せは、あなたを守ることなのですから)
鎖々美「だから、疲れても負けないし、辛くても大丈夫。もうやめたいなんて心の声
も、簡単につぶせてしまう――もう、『がんばらない』なんていわないのです!」
鎖々美「だから鎖々美さん、わたしにがんばらせてください。わたしの身体にわたし
の心を戻してください」
鎖々美(あなたを守るための身体に、わたしの心を戻してください)
36: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:45:34.38 ID:iQXrD8cY0
*
*
*
鎖々美「じゃあ電気消すね」
かがみ「勝手にするのです」
カチッ
鎖々美「うふふっ」
かがみ「なんですかきもちわるい。エロゲーをやってる最中の姉さんみたいな顔をし
て近づかないでください」
鎖々美「かーがみっ」
かがみ「……なんですか」
鎖々美「ぎゅっとしていいかなあ」
かがみ「…………勝手にするのです」
37: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:50:07.31 ID:iQXrD8cY0
鎖々美「かがみ温かいね」
かがみ「さ、鎖々美さんの方が温かいのです」
鎖々美「おや、かがみ熱いね。主にほっぺたが」スリスリ
かがみ「むおお、ほおずりするな気色悪い! ……それに、熱いのは鎖々美さんのせ
いなのですよ」
鎖々美「ん? なんかいった? ほおずりに夢中で聞き逃しちゃったよ」
かがみ「はぁ……、なんでもないのです。というかもう寝ましょう。明日も早いので」
鎖々美「そうだね。じゃあおやすみ――わたしの大好きなかがみ」
かがみ「……」
かがみ「おやすみなさい。わたしの大好きな鎖々美さん」
おわり
38: VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/03/13(水) 23:51:29.08 ID:iQXrD8cY0
かがみんマジ天使なのです
おやすみなさい。明日も早いので
SS速報VIP:かがみ「鎖々美さんは超絶美少女なのです。わたしと結婚するのです!」