1: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 02:56:57.471 ID:alRl2NYT0.net
― 山 ―
女(たまには登山も楽しいな……)ザッザッザッ
クマ「……」ガサッ
女(ゲ!?)
女(ク、クマだわ! 死んだフリしなきゃ!)バタンッ
クマ「ん?」
クマ「大変だ! 人が倒れてる!」
5: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 02:59:01.593 ID:alRl2NYT0.net
クマ「もしもし!」
女「……」
クマ「大丈夫ですか!? 大丈夫ですかぁっ!?」
女(あ~もう、早くどこかに消えなさいよ!)
クマ「返事がない……! どうしよう……! どうすれば息を吹き返すんだ!?」
女(あんたが消えればすぐ息吹き返すっての!)
クマ「生きてるのかな……」サッ
女「……」ドクッドクッ
クマ「心臓は……動いてる。かなり鼓動が早いぞ!」
女「……」
クマ「呼吸は……してる! しかも鼻呼吸か、素晴らしい! 風邪をひきにくいぞ!」
女(うっさい!)
クマ「生きてると分かってホッとしたけど、これからどうしよう?」
クマ「とりあえず、救急車呼ぶか!」サッ
女(こいつ、なんでクマのくせにスマホ持ってんのよ!)
クマ「もしもし! ……救急です! はい、山に人が倒れてまして……」
クマ「えっ、救急車到着まで一時間もかかる!? こりゃくまったな」
女(うぜえ)
クマ「一時間か、どうしよう……」
女「……」
クマ「とりあえず、人工呼吸でもしようか」
女(熊工呼吸だろうが!)
クマ「ん~……」
女(ファーストキスがクマだなんていやぁぁぁぁぁ!!! 絶対くさいいいいいいい!!!)
ブチュッ
女(あっ……)
女(ブレスケアの匂い……クマのくせに……)ンッ…
ピーポー… ピーポー…
救急隊員「お待たせしました! 患者はどちらに!?」
クマ「あそこでまだ倒れてます!」
女(やっと来た……やっとこのクマから解放される……)
救急隊員「クマさん、あなたはどうしますか?」
クマ「もちろん、ついていきます!」
女(くんな!)
― 病院 ―
女「……」
医者「うーむ……」
ナース「この患者さん、どこも異常はありませんね、先生」
女「当然ですよ!」ガバッ
ナース「きゃっ!? 起き上がった!」
女「だって私、死んだフリしてただけですもん!」
ナース「なーんだ、だったらすぐ退院してもらわなきゃ!」
医者「いや、ちょっと待った」
医者「脳の手術をしよう、今すぐ!」
女「……ん」
医者「目が覚めたかね」
女「手術は……?」
医者「手術は成功だ」
医者「君の脳には悪性の腫瘍ができていてね」
医者「あれ以上小さいと検査機器では発見できないし、あれ以上大きいと取り除くのが難しくなるという」
医者「絶妙な大きさになっていた」
女「ってことは……」
医者「もし、このタイミングで病院に来てなければ、君の命は危なかったかもしれない」
女「……!」
医者「偶然とはいえ、あのクマに感謝することだ」
女「……はい」
クマ「あ、手術は成功だったみたいですね」
女「うん……」
クマ「これで、ボクも安心して山に帰ることができます」
クマ「それじゃ……」
女「待ちなさいよ!」
女「命を助けられたのに何もしないってのは、なんだかスッキリしないわ」
女「お礼ぐらいさせてよ……」
クマ「というと?」
女「私の自宅に寄っていきなさいよ!」
クマ「いいんですか? ボクはクマですよ?」
女「クマだろうがなんだろうが、命の恩人に変わりないわよ」
クマ「女性の家にお呼ばれするなんて初めてで……こりゃくまったな」
女「それ、なんかイラッとくるからやめて!」
― 女の自宅 ―
女「これからお料理作るけど……なに食べる?」
クマ「お野菜を頂けたら、と」
女「あんた、ベジタリアンなんだ。他には?」
クマ「デザートにはできればハチミツを……」
女「結構ベタなところもあるのね」
クマ「おや、ヤングジャンプがありますね」
女「漫画が分かるんだ」
クマ「ヤングジャンプは山のふもとのコンビニで毎週買ってますよ」
女「私はキングダム目当てで買ってるけど、あんたの好きな漫画は?」
クマ「またベタだといわれそうですが、やっぱりあれですね」
女(ゴールデンカムイか。クマ出てくるもんね)
クマ「スナックバス江です」
女「よりによってそれかよォ!」
クマ「それにしても、あの山はかなり険しいというのに、よくあそこまで登れましたね」
女「私、建設現場で働いてるから、体力には自信あるのよ」
クマ「ほう、たくましい」
女「たくましくならなきゃ、やってられなかったのよ。私は一人ぼっちだから」
クマ「あの、ご両親は?」
女「お父さんは仕事人間でいつも家にいなくて、お母さんはそれを支えて死んじゃって」
女「私それに反発して、高校卒業と同時に家出しちゃったの」
クマ「そうだったんですか……苦労なされたんですね」
女「うん……」
クマ「……」
女「……」
女「ねえ、しばらくここにいたら?」
女「女の一人暮らしだし、ボディガードが欲しかったのよね」
クマ「クマでよろしければ……」
女「あ、そうだ! どうせならウチの現場で働いてみない?」
女「仕事がきつくてすぐ辞めちゃう人多いし、ちょうど人手が欲しかったのよ」
クマ「熊手でよろしければ……」
女「うっさい!」
― 現場 ―
女「というわけで、今日から彼をお手伝いさせて下さい!」
クマ「クマです。よろしくお願いします」
監督「よ、よろしく……」
同僚「こりゃすごい新人が入ってきたな……」
クマ「よいしょ」ヒョイッ
監督「おおっ、あのでかい鉄パイプを十本もいっぺんに……!」
同僚「すげー! こりゃこのクマがいたら、みんなリストラされちゃうかもな!」
クマ「……」
クマ「あ、あの、やっぱり一本に」ゴトッ
女「遠慮しなくていいから!」
監督「いやぁ、いい働きっぷりだよ、あんた!」
監督「どうだい、正式に入社しねえか!?」
クマ「いいんですか?」
監督「いやいっそ、俺の代わりに現場監督になってくれ!」
クマ「こりゃくまったな」
女「だから、それやめろって!」
女とクマの楽しい日々は続いた――
監督「今月分の給料だ!」
クマ「ありがとうございます!」
女「初給料で何買うの?」
クマ「貯金します」
子供「わ~い」キャッキャッ
幼女「クマさんだぁ~」キャッキャッ
クマ「わわっ!」
女「ふふっ、近所の子供からもすっかり人気者ね」
……
― 役所 ―
役人「ようこそ来てくれました」
マタギ「用件は……なんだ?」
役人「実は……近頃この町にクマが出没しているという情報があるのです」
役人「ろくに事件もないこの町で、クマ退治という大仕事を成し遂げれば、私の出世も間違いなし!」
役人「ぜひともあなたの手で、退治していただきたい!」
マタギ「いいだろう……」
マタギ「久しぶりに俺の猟銃が火を吹く時が来たようだ」ジャキッ
スタスタ…
女「今日も疲れたわねー。監督ってば、私達をこき使いすぎよね」
クマ「ですが、あと少しであのビルも完成……」
――ズドンッ!!!
シュゥゥゥゥゥ…
女「きゃあっ!?」
クマ「これは……銃弾!?」
マタギ「今のは宣戦布告の一発……」ジャキッ
マタギ「クマよ……。マタギとして、貴様を狩らせてもらう」
役人「フハハハハッ! 町の平和を脅かす侵略グマよ!」
役人「正義の鉄槌を受けるがいい! 我が出世の礎になるがいい!」
クマ「くっ……!」サッ
マタギ「無駄だ……俺は狙った獲物は絶対外さない」
マタギ「どんなに素早く動こうと、な」
クマ「どうやら……ここまでのようですね。抵抗はしません」
マタギ「なかなか潔いクマだな」
クマ「大暴れして、皆を巻き込む方が嫌ですので」
マタギ「なるほど……ならば一発で楽にしてやろう……」ジャキッ
女「やめてぇっ!!!」バッ
クマ「あっ!?」
マタギ「――む!?」
女「お願い、このクマを殺さないで!」
女「このクマはとても優しいし、働き者だし、子供にだって人気なの!」
女「なにより……私の命を救ってくれたの!」
役人「知るかボケェ! 山から下りてきたクマは例外なく射殺される運命なんだよォ!」
クマ「そうです。ボクはいつかこうなることを覚悟してきました」
クマ「危ないから、ボクの前からどいて下さい!」
女「嫌っ!」
マタギ「……」
マタギ「!?」
マタギ「お前は……まさか娘か?」
女「あっ、あなた……お父さん!?」
マタギ「家出したお前と……こんなところで会えるとはな」
女「お父さんも相変わらず……狩人として働いてたのね。お父さんらしいや」
マタギ「母さんとお前にはすまないことをした……」
女「ううん、もういいよ……。私も働くことの大変さを学んだし……」
クマ(この二人、父子だったのか……!)
女「だけど一つだけワガママ聞いてくれる?」
マタギ「なんだ?」
女「このクマは悪いクマじゃないの! お願い、見逃してあげて!」
マタギ「……」
役人「おい、何をやっている! 早くクマを殺せ!」
役人「クマを駆除すれば私は出世しまくりだし、クマの毛皮は高く売れる! クマ肉は珍味!」
役人「盾になってるその女ごと、害獣をブチ殺せぇぇぇぇぇ!!!」
マタギ「……了解した」スッ
女「お父さん!」
マタギ「……」ジャキッ
役人「!? ――な、なぜ私に銃口を!?」
マタギ「あのクマとアンタだと……アンタの方がよっぽど獣に見える」
役人「う、ぐっ……! 一理ある!」
役人「くそぉぉぉぉぉぉっ!!!」シュタタタタタッ
マタギ「それに……娘の恩人を撃つことなどできんさ」
女「お父さん……!」
クマ「ありがとうございます……」
クマ「それにしても、なんて危ないことを!」
クマ「ボクの盾になろうとするなんて、銃弾が発射されてたらどうするんです!」
女「だって私……」
女「あんたのこと、好きになっちゃったんだもの!」
クマ「え……」
女「命をかけて守りたくなるくらい、好きになっちゃったの!」
クマ「そりゃボクだってあなたのこと……しかし、ボクはクマですよ?」
女「クマでもいい!」
女「お願い……私とずっと一緒にして! 伴侶として一緒に暮らして!」
クマ「ボクでよろしければ……」
マタギ「フフッ……義理の息子がクマってのも面白いな。お前は立派なマタギにしてやろう!」
クマ「こりゃくまったな」
― END ―
元スレ
クマ「もしもし!」
女「……」
クマ「大丈夫ですか!? 大丈夫ですかぁっ!?」
女(あ~もう、早くどこかに消えなさいよ!)
クマ「返事がない……! どうしよう……! どうすれば息を吹き返すんだ!?」
女(あんたが消えればすぐ息吹き返すっての!)
10: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:00:48.691 ID:alRl2NYT0.net
クマ「生きてるのかな……」サッ
女「……」ドクッドクッ
クマ「心臓は……動いてる。かなり鼓動が早いぞ!」
女「……」
クマ「呼吸は……してる! しかも鼻呼吸か、素晴らしい! 風邪をひきにくいぞ!」
女(うっさい!)
12: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:02:48.123 ID:alRl2NYT0.net
クマ「生きてると分かってホッとしたけど、これからどうしよう?」
クマ「とりあえず、救急車呼ぶか!」サッ
女(こいつ、なんでクマのくせにスマホ持ってんのよ!)
クマ「もしもし! ……救急です! はい、山に人が倒れてまして……」
クマ「えっ、救急車到着まで一時間もかかる!? こりゃくまったな」
女(うぜえ)
15: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:05:01.435 ID:alRl2NYT0.net
クマ「一時間か、どうしよう……」
女「……」
クマ「とりあえず、人工呼吸でもしようか」
女(熊工呼吸だろうが!)
クマ「ん~……」
女(ファーストキスがクマだなんていやぁぁぁぁぁ!!! 絶対くさいいいいいいい!!!)
ブチュッ
女(あっ……)
女(ブレスケアの匂い……クマのくせに……)ンッ…
18: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:07:18.264 ID:alRl2NYT0.net
ピーポー… ピーポー…
救急隊員「お待たせしました! 患者はどちらに!?」
クマ「あそこでまだ倒れてます!」
女(やっと来た……やっとこのクマから解放される……)
救急隊員「クマさん、あなたはどうしますか?」
クマ「もちろん、ついていきます!」
女(くんな!)
20: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:10:33.383 ID:alRl2NYT0.net
― 病院 ―
女「……」
医者「うーむ……」
ナース「この患者さん、どこも異常はありませんね、先生」
女「当然ですよ!」ガバッ
ナース「きゃっ!? 起き上がった!」
女「だって私、死んだフリしてただけですもん!」
ナース「なーんだ、だったらすぐ退院してもらわなきゃ!」
医者「いや、ちょっと待った」
医者「脳の手術をしよう、今すぐ!」
21: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:13:06.124 ID:alRl2NYT0.net
女「……ん」
医者「目が覚めたかね」
女「手術は……?」
医者「手術は成功だ」
医者「君の脳には悪性の腫瘍ができていてね」
医者「あれ以上小さいと検査機器では発見できないし、あれ以上大きいと取り除くのが難しくなるという」
医者「絶妙な大きさになっていた」
女「ってことは……」
医者「もし、このタイミングで病院に来てなければ、君の命は危なかったかもしれない」
女「……!」
医者「偶然とはいえ、あのクマに感謝することだ」
女「……はい」
22: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:15:08.731 ID:alRl2NYT0.net
クマ「あ、手術は成功だったみたいですね」
女「うん……」
クマ「これで、ボクも安心して山に帰ることができます」
クマ「それじゃ……」
女「待ちなさいよ!」
23: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:18:41.197 ID:alRl2NYT0.net
女「命を助けられたのに何もしないってのは、なんだかスッキリしないわ」
女「お礼ぐらいさせてよ……」
クマ「というと?」
女「私の自宅に寄っていきなさいよ!」
クマ「いいんですか? ボクはクマですよ?」
女「クマだろうがなんだろうが、命の恩人に変わりないわよ」
クマ「女性の家にお呼ばれするなんて初めてで……こりゃくまったな」
女「それ、なんかイラッとくるからやめて!」
25: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:21:29.481 ID:alRl2NYT0.net
― 女の自宅 ―
女「これからお料理作るけど……なに食べる?」
クマ「お野菜を頂けたら、と」
女「あんた、ベジタリアンなんだ。他には?」
クマ「デザートにはできればハチミツを……」
女「結構ベタなところもあるのね」
27: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:22:31.307 ID:alRl2NYT0.net
クマ「おや、ヤングジャンプがありますね」
女「漫画が分かるんだ」
クマ「ヤングジャンプは山のふもとのコンビニで毎週買ってますよ」
女「私はキングダム目当てで買ってるけど、あんたの好きな漫画は?」
クマ「またベタだといわれそうですが、やっぱりあれですね」
女(ゴールデンカムイか。クマ出てくるもんね)
クマ「スナックバス江です」
女「よりによってそれかよォ!」
28: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:24:11.767 ID:alRl2NYT0.net
クマ「それにしても、あの山はかなり険しいというのに、よくあそこまで登れましたね」
女「私、建設現場で働いてるから、体力には自信あるのよ」
クマ「ほう、たくましい」
女「たくましくならなきゃ、やってられなかったのよ。私は一人ぼっちだから」
クマ「あの、ご両親は?」
女「お父さんは仕事人間でいつも家にいなくて、お母さんはそれを支えて死んじゃって」
女「私それに反発して、高校卒業と同時に家出しちゃったの」
クマ「そうだったんですか……苦労なされたんですね」
女「うん……」
クマ「……」
女「……」
31: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:27:06.381 ID:alRl2NYT0.net
女「ねえ、しばらくここにいたら?」
女「女の一人暮らしだし、ボディガードが欲しかったのよね」
クマ「クマでよろしければ……」
女「あ、そうだ! どうせならウチの現場で働いてみない?」
女「仕事がきつくてすぐ辞めちゃう人多いし、ちょうど人手が欲しかったのよ」
クマ「熊手でよろしければ……」
女「うっさい!」
32: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:28:59.288 ID:alRl2NYT0.net
― 現場 ―
女「というわけで、今日から彼をお手伝いさせて下さい!」
クマ「クマです。よろしくお願いします」
監督「よ、よろしく……」
同僚「こりゃすごい新人が入ってきたな……」
34: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:30:37.753 ID:alRl2NYT0.net
クマ「よいしょ」ヒョイッ
監督「おおっ、あのでかい鉄パイプを十本もいっぺんに……!」
同僚「すげー! こりゃこのクマがいたら、みんなリストラされちゃうかもな!」
クマ「……」
クマ「あ、あの、やっぱり一本に」ゴトッ
女「遠慮しなくていいから!」
36: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:32:49.506 ID:alRl2NYT0.net
監督「いやぁ、いい働きっぷりだよ、あんた!」
監督「どうだい、正式に入社しねえか!?」
クマ「いいんですか?」
監督「いやいっそ、俺の代わりに現場監督になってくれ!」
クマ「こりゃくまったな」
女「だから、それやめろって!」
38: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:35:59.306 ID:alRl2NYT0.net
女とクマの楽しい日々は続いた――
監督「今月分の給料だ!」
クマ「ありがとうございます!」
女「初給料で何買うの?」
クマ「貯金します」
子供「わ~い」キャッキャッ
幼女「クマさんだぁ~」キャッキャッ
クマ「わわっ!」
女「ふふっ、近所の子供からもすっかり人気者ね」
42: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:39:24.547 ID:alRl2NYT0.net
……
― 役所 ―
役人「ようこそ来てくれました」
マタギ「用件は……なんだ?」
役人「実は……近頃この町にクマが出没しているという情報があるのです」
役人「ろくに事件もないこの町で、クマ退治という大仕事を成し遂げれば、私の出世も間違いなし!」
役人「ぜひともあなたの手で、退治していただきたい!」
マタギ「いいだろう……」
マタギ「久しぶりに俺の猟銃が火を吹く時が来たようだ」ジャキッ
43: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:41:03.418 ID:alRl2NYT0.net
スタスタ…
女「今日も疲れたわねー。監督ってば、私達をこき使いすぎよね」
クマ「ですが、あと少しであのビルも完成……」
――ズドンッ!!!
46: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:43:15.552 ID:alRl2NYT0.net
シュゥゥゥゥゥ…
女「きゃあっ!?」
クマ「これは……銃弾!?」
マタギ「今のは宣戦布告の一発……」ジャキッ
マタギ「クマよ……。マタギとして、貴様を狩らせてもらう」
役人「フハハハハッ! 町の平和を脅かす侵略グマよ!」
役人「正義の鉄槌を受けるがいい! 我が出世の礎になるがいい!」
48: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:45:07.047 ID:alRl2NYT0.net
クマ「くっ……!」サッ
マタギ「無駄だ……俺は狙った獲物は絶対外さない」
マタギ「どんなに素早く動こうと、な」
クマ「どうやら……ここまでのようですね。抵抗はしません」
マタギ「なかなか潔いクマだな」
クマ「大暴れして、皆を巻き込む方が嫌ですので」
マタギ「なるほど……ならば一発で楽にしてやろう……」ジャキッ
49: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:46:25.126 ID:alRl2NYT0.net
女「やめてぇっ!!!」バッ
クマ「あっ!?」
マタギ「――む!?」
51: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:48:20.710 ID:alRl2NYT0.net
女「お願い、このクマを殺さないで!」
女「このクマはとても優しいし、働き者だし、子供にだって人気なの!」
女「なにより……私の命を救ってくれたの!」
役人「知るかボケェ! 山から下りてきたクマは例外なく射殺される運命なんだよォ!」
クマ「そうです。ボクはいつかこうなることを覚悟してきました」
クマ「危ないから、ボクの前からどいて下さい!」
女「嫌っ!」
マタギ「……」
マタギ「!?」
52: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:50:28.586 ID:alRl2NYT0.net
マタギ「お前は……まさか娘か?」
女「あっ、あなた……お父さん!?」
マタギ「家出したお前と……こんなところで会えるとはな」
女「お父さんも相変わらず……狩人として働いてたのね。お父さんらしいや」
マタギ「母さんとお前にはすまないことをした……」
女「ううん、もういいよ……。私も働くことの大変さを学んだし……」
クマ(この二人、父子だったのか……!)
55: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:52:29.347 ID:alRl2NYT0.net
女「だけど一つだけワガママ聞いてくれる?」
マタギ「なんだ?」
女「このクマは悪いクマじゃないの! お願い、見逃してあげて!」
マタギ「……」
役人「おい、何をやっている! 早くクマを殺せ!」
役人「クマを駆除すれば私は出世しまくりだし、クマの毛皮は高く売れる! クマ肉は珍味!」
役人「盾になってるその女ごと、害獣をブチ殺せぇぇぇぇぇ!!!」
マタギ「……了解した」スッ
女「お父さん!」
57: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:55:24.888 ID:alRl2NYT0.net
マタギ「……」ジャキッ
役人「!? ――な、なぜ私に銃口を!?」
マタギ「あのクマとアンタだと……アンタの方がよっぽど獣に見える」
役人「う、ぐっ……! 一理ある!」
役人「くそぉぉぉぉぉぉっ!!!」シュタタタタタッ
マタギ「それに……娘の恩人を撃つことなどできんさ」
女「お父さん……!」
クマ「ありがとうございます……」
60: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 03:58:05.811 ID:alRl2NYT0.net
クマ「それにしても、なんて危ないことを!」
クマ「ボクの盾になろうとするなんて、銃弾が発射されてたらどうするんです!」
女「だって私……」
女「あんたのこと、好きになっちゃったんだもの!」
クマ「え……」
女「命をかけて守りたくなるくらい、好きになっちゃったの!」
クマ「そりゃボクだってあなたのこと……しかし、ボクはクマですよ?」
女「クマでもいい!」
63: 以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします 2018/05/03(木) 04:00:18.144 ID:alRl2NYT0.net
女「お願い……私とずっと一緒にして! 伴侶として一緒に暮らして!」
クマ「ボクでよろしければ……」
マタギ「フフッ……義理の息子がクマってのも面白いな。お前は立派なマタギにしてやろう!」
クマ「こりゃくまったな」
― END ―
女「クマだわ! 死んだフリしなきゃ!」クマ「大変だ! 人が倒れてる!」